・・・でも考えたら、今ヒカル君に押し倒されてる感じ、なの、か?
途端に恥ずかしくなって手でヒカル君の胸を押し返そうとするが、びくともしなかった。代わりに服の袖をつまむ。その間にも彼は頬や瞼にキスを降らせる。髪を梳いていた手で頬をなぞって耳に唇が触れると背筋がゾクっとした。
「ひ、ヒカル君、」
「可愛い。」
「っ?!」
そのまま耳をなななな、舐められ、完全に思考が停止した。
そんな私を枕にするようにヒカル君が私を抱きしめた。体が熱い。
「・・・ヒカル君?」
「・・・。」
私の髪に顔を埋めるヒカル君。小さく荒い呼吸が聞こえてくる。こんなに体が熱いんだから、熱が上がってしまったのかもしれない。しかしヒカル君のや逞しい胸に挟まれ動けない。ど、ど、どうしよう・・・・。
「ただいま、ヒカルプリン買ってきてあげた・・・・。」
その時、ドアが開いたかと思うとヒカル君のお姉さんがビニール袋片手に帰ってきた。お姉さんはこの状況を見て目を丸くさせていたが、やがて目を細めた。
「やるわね、ヒカルも。お邪魔だった?」
「えっ?!あ、あの、ヒカル君が、」
「あははっ!分かってる、今助けるからちょっと待っててね。」
お姉さんはそう言うと、ヒカル君のスウェットの襟首を掴む。その隙に私が脱出すると、仰向けにヒカル君を転がらせて上に布団をかけた。
「大丈夫だった?」
「は、はい・・・。」
「全く、彼女ちゃん来てくれてテンション上がっちゃったみたいね。」
「上がってたんですか?」
「そりゃもう。熱上がるぐらいね。あ、そうそう貴女プリン食べられる?」
お姉さんは唐突にそう言うと、テーブルの前に座った。そして持っていたビニール袋からプリンを3つ取り出した。
「はい、好きです。」
「よかった、ならどうぞ食べて。買ってきたから。」
「あ、もしかしてこれを買いに?」
「そう、正解。」
お姉さんはプリンの蓋を開くと付属のスプーンで一口すくい、口にした。
私もお言葉に甘えてプリンの蓋を開ける。
「ヒカルが風邪ひいたらいつもプリン買ってきてあげるかな。」
「仲がいいんですね。」
「普通にはね、まぁダジャレはつまんないけど。」
「あはは・・・。」
そう言ってばしばしヒカル君を叩くお姉さん。
そんなに叩いたら起きちゃうんじゃ・・・。
「でも前はこの時期毎年風邪ひいててさ、何にも食べないくせに私が買ってきたプリンだけは食べるもんだから毎回なんやかんやで買ってきちゃうのよね。」
そう言ってお姉さんはまたプリンを一口口に運んだ。私もプリンを口に運ぶ。なめらかな甘さが口に広がる。
素敵なお姉さんだな、その一言でそれが分かる。
「私が言うのものんだけど、悪い奴じゃないからヒカルの事よろしくね。」
「は、はい。」
「まぁくだらないダジャレは聞き流して大丈夫だから。」
お姉さんはまた寝ているヒカル君をばしばし叩く。「うーん」と顔を歪めて苦しそうに息をするヒカル君に、お姉さんは机の上にあった熱覚ましシートをおでこに貼った。
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