しかしあれ以来ヒカル君と会わずに放課後になってしまった。
借りた教科書を返しにB組に行った時にも会わなかったし、移動教室に向かう途中でちらっと教室を覗いた時にもいなかった。
やっぱり怒ってるのかも・・・。
意を決してテニスコートに向かうが、やっぱりそこにもヒカル君の姿はなかった。
「あれ、誕生日さん?」
そんな私に声をかけてきたのは佐伯先輩だった。フェンス越しに見る佐伯先輩はいつものように私に微笑みかけた。
「どうしたの?ダビデに用事?」
「ダビデなら帰ったぞ。」
「えっ?!」
佐伯先輩の後ろからやってきた黒羽先輩が付け足すようにそう言った。黒羽先輩はユニフォームの裾で汗を拭いながら佐伯先輩よりも前に出てフェンスに近づいた。
「熱があるんだとよ。」
「そうだったの?」
「さっき剣太郎が言ってた。」
「そう、ですか・・・。」
道理で会わなかったはずだ、熱があって帰っていたんだから。でも熱って・・・大丈夫かな?
「そう言えばあいつ小4ぐらいまでこの時期ずっと風邪こじらせてたよな。」
「そうだな。誕生日に学校休むか休まないかいつもおばさんと喧嘩してたし。」
「まぁ明日学校はねぇし、おばちゃん自治会の旅行でいないって言ってたからそれはねぇだろ。」
そう言って笑う黒羽先輩をよそに佐伯先輩はどこかに行ってしまった。しかしすぐに戻ってくるとフェンス越しから紙切れを渡された。
「あの、これは?」
「ダビデの家の地図。」
「えっ?!」
「多分退屈してるからお見舞いに行ってあげたら喜ぶと思うよ。」
「明日はどうせ部活もできねぇだろうからな。」
「それに誕生日なのに1人なんて可哀想だろ?」
「・・・・・・。」
私は渋々それを受け取る。佐伯先輩と黒羽先輩はそれを見てまたコートに戻って行ってしまった。
そりゃヒカル君の容態は気になるけど・・・私は貰った地図を広げると丸が書かれたヒカル君の家を見つめた。
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