しまった。
鞄の中を見ても、机のなかを見ても歴史の教科書が見当たらない。きっと昨日宿題をやってそのまま机の上に置いてきてしまったんだ。
「どうしたのおめでとう?」
「歴史の教科書忘れたみたいで。」
「なら、ダビデから借りてきたら?」
「う、うん・・・。」
昨日の今日だし、朝からヒカル君には会えていなかった。もしかしたら本当に昨日の事で怒っているかもしれない。重い足を引きずって絢ちゃんに言われた通り隣のクラスのB組に向かう。
「あ、誕生日さん。」
「星野さん。」
教室の中から私の姿を見つけたのは星野さんだった。私の元に歩いてくると可愛らしい笑みを浮かべた。
「ダビ君?ダビ君なら今はいないよ?」
「そう、なんだ。」
「どうしたの?」
「歴史の教科書忘れちゃったから借りれたら借りようかと思って。」
「あ、じゃあ私の貸すよ。ちょっと待ってて。」
星野さんが机に戻る中、教室を見渡せば確にヒカル君の姿はなかった。
もしかして避けるほど怒ってるのかな?
そんな事を考えていたら、戻ってきた星野さんが私のに歴史の教科書を渡してくれた。
「ありがとう。終わったらすぐに返すから。」
「今日は歴史ないから、返すのはいつでもいいよ。」
教科書を受け取って星野さんに手を振るとB組を後にする。
予鈴が鳴って急いで踵を返したらやってきた誰かにぶつかってしまった。
「ごめんなさ、あっ。」
「おめでとう。」
「ヒカル君・・・。」
ぶつかったのはなんとヒカル君だった。彼も驚いたようで、目を丸くさせている。
「星野か?」
「え?」
「それ借りたのか?」
「うん。」
「そう。・・・ほら、授業始まるぞ。」
「あ、うん。」
ヒカル君はそう言うと私の頭を撫でた。そしてB組の教室に入っていってしまった。予鈴が鳴り終わり、私も急いで教室に入る。
・・・頭撫でられた。怒ってると思ってるのは私の思い込みなのかな?
優しい手の余韻を感じながら、席についた。
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