「ごめん、お待たせしました。」

「いや、そんなに待ってない。」



すっかり日がくれるのが早くなって、日に日に空気も冷たくなってきた11月。
昇降口で私を待つヒカル君はマフラーに顔を埋めながらやってきた私を見つめた。
授業の後片付けに手間どってしまい、ヒカル君と一緒に帰る約束をしていたのにこう暗いんじゃより道もできそうにないなぁ、と嘆く。



「片付け、終わったのか?」

「うん、終わりました。」

「・・・・言ってくれたら、手伝ったのに。」

「いや、クラス違うのにそれは悪いよ。




そう言いながら立ち上がったヒカル君は横に置いてあったバックを肩に担いだ。いつものテニスバックじゃないのは、今が試験期間中で部活がお休みだからだ。
だからちょっと早く帰れるこの時を使って間近に迫ったヒカル君の誕生日プレゼントのさぐりを入れようと考えていたりした。
私は上履きを脱ぐと自分の下駄箱を開けて靴を取り出す。
ひらり。
その時何かが落ちてヒカル君の足元に落ちた。ヒカル君は長い指でそれを拾う。どうやらそれは白い封筒のようだった。



「あ、ごめん。ありがとう。」

「・・・・・。」



下駄箱を閉めて靴を履きながらヒカル君に手を差し出すが、一向に白い封筒は私の元には戻ってこない。



「あの・・・。」

「ちょっと待って。」



それどころかヒカル君は封を開くと中から出てきた便箋を開き読み始めた。瞬きを数回したら、眉間に皺をよせたヒカル君が私にそれをようやく戻した。
ピンクのリボンで縁どれた便箋に丁寧な文字が書かれていた。



誕生日おめでとう先輩へ

いきなり手紙を送ってしまってすみません。
体育祭で先輩に手当をしてもらったあの日から忘れられません。
先輩の事が好きです。



・・・・これはもしかしなくてもラブレターというやつ?
封筒を見れば小さく鈴木司と書かれていた。先輩って書いてあるということは年下なのだろう。体育祭の時手当してあげた子・・・・覚えてないなぁ。
体育祭の時はヒカル君の事で頭いっぱいだったしなぁ・・・。
ヒカル君をちらっと見れば、眉間に皺をよせたまま私を見つめていた。
私は急いで封筒を鞄に押し込むとマフラーに顔を埋めたヒカル君を見上げた。



「多分人違いだと思う、これ・・・。」

「・・・人違いでラブレター出さないだろ。」

「それは・・・。」

「・・・暗くならないうちに帰ろう。」



そう言って歩き出すヒカル君。急いで背中を追うけど、分かれるまでずっと黙ったままだった。
もしかしたら、怒らせちゃったかな?
そりゃ、ヒカル君もラブレター時々貰ってるのはマネージャーさんとかから聞くけど、目の前で送られたラブレター見たら私も嫌かもしれない・・・。
夕飯を食べてヒカル君に「ごめんね」とメールしたら「何にだ?」と返ってきてベッドにダイブした。
電話してもよかったけど、言葉が出てこない。明日直接また謝ろう。
私は布団をかぶって目を閉じた。

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