「キャンディ先輩。」



名前を呼ばれ振り返れば魔女がいた。



「え、財前、君?」

「あんまりやないっすか、俺が可愛えぇからって。」

「いやそもそも、何でスカート履いてるの?」



財前君は黒いマントに黒いワンピースを着ている。魔女のとんがり帽子にはジャックオランタンの飾りがあるのが見える。



「部活のハロウィンアミダで。」

「え、その格好で試合するの?」

「昔からの恒例行事らしいっす。ホンマめんどい。あぁ、下にズボンは履いてます。」



そう言ってスカートの裾をたくしあげようとする彼を慌てて制した。
でもまぁ確かに、可愛い感じに仕上がっている。


「他にはどんなのがあったの?」

「狼男、ミイラ男、フランケン、吸血鬼・・・まぁそんな感じっすわ。魔女はハズレや。」

「そう?むしろアタリじゃない?」

「スカート履かされてアタリや思いますか?」

「・・・ごめんなさい。」



財前君は「まぁええわ」と続けると私の前に手を差し出した。



「トリックオアトリート。」

「あぁ、お菓子くれないと〜ってやつね。ちょっと待って。」



私は鞄の中からマシュマロを取り出すと、財前君の手の上にのせた。



「どうぞ。」

「・・・ちっ。」



お菓子あげたのに舌打ちされた!?やっぱり私財前君に嫌われてるんじゃ・・・・。白石君達は逆に気に入られてるって言ってくれたけど、やっぱり違うようだ。
そんな彼の言葉にしょんぼりすると、財前君はあげたマシュマロをポケットにしまった。



「悪戯も用意しとったのに、残念や。」

「え?」

「何でもないです。お菓子のお礼あげますわ。」



財前君はそう言うと私の手を取って何かを握らせると、そのまま手の甲にキスをした。
驚く私に彼は被っていた帽子を被せると、足早に去っていってしまった。
そんな背中を見ながら手を開けば、小さな袋に入ったお化けが。



「・・・クッキーだ。」



ずり落ちてきた帽子をかぶり直しながら小さくなる財前君の背中を見つめた。



/2014HALLOWEEN\


「珍しい事もあるもんやな、あの財前がノリノリでコスプレするなんて。」

「あ、あれやろ。キャンディに見せに行くつもりなん、痛っ!!」

「すいません謙也さん、俺ノーコんなんでレシーブが当たってもうたわ。」

「ノーコンちゃうやろ!?ワザとやろ今のお前!?」

「あれ、被っとった帽子は?」

「・・・悪戯で持ってかれましたわ。」
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