今日は私の彼氏、サエこと佐伯虎次郎の誕生日である。なのでデートをする予定なのだが、何故か今日はサエの家で待ち合わせ。いつもは駅前とか近くのコンビニとか集合なのに。
とりあえずサエの為の誕生日プレゼントも持ってサエの家に到着。ちなみにプレゼントは革のキーケースにした。(ウニにしようかと思ったのは内緒だ。)
インターホンを押したら、パタパタと足音が聞こえてきた。そして開いた扉からサエが現れた。



「いらっしゃい。」

「誕生日おめでとう、サエ。」

「いきなり?まぁ、ありがとう。さぁ、上がって。」



いつものようにお邪魔すると、何やらいい匂いがしていた。芳ばしい豆の匂い。これはコーヒーだ。



「コーヒー?いい匂い。」

「あぁ。丁度よかったよ、今淹れた所なんだ。」



サエはそう言って私にソファーに座るように促した。え、今から出かけるんじゃないの?
とりあえずソファーに座ると、サエが湯気の立つカップを2つ持ってやってきた。あ、そのカップは私がいつもサエの家で使ってる奴だ。サエはそのカップを机の私の前に置いた。ずっとしていたいい匂いが近くからする。
持っていたバックもソファーの上に置くと、サエが小さなトレイを持ってきた。
角砂糖とミルクだ。
サエは何も言わずに私用のカップに角砂糖二個と多めのミルクを入れた。いつも私がコーヒーを飲むときはこれだった。
サエはスプーンでゆっくりコーヒーをかき回すと、コーヒーの濃い色がゆったりとミルクの柔らかな色に変わっていく。ちょっとサエの髪の色みたいだ。



「さぁ、召し上がれ。」

「じゃあ折角だから・・・いただきます。」



私の隣にいつもの様に座ったサエはそう言うと自分のコーヒーに角砂糖を一つ入れた。サエのコーヒーはこれ。たまにミルク入れてたりするけど大抵これだった。
私はカップに口を付ける。熱く数回ふーふーしてからサエが淹れてくれたコーヒーを飲んだ。



「・・・美味しい。」

「よかった。君の為に淹れた甲斐があったな。」

「え、私の為に淹れてくれたの?」

「あぁ。」



そう言って甘く笑ってコーヒーを飲むサエは様になっていた。



「今日はコーヒーの日で、女性にコーヒーブレイクを贈る日だから。」

「そう、なんだ。」

「そっ。だから、いつもお世話になってる秋子に飲んでほしくて。豆から挽いてみたんだ。」

「へー。」

「いつも俺の事好きでいてくれてありがとう。」



サエはそう言って私のおでこにキスをした。あぁもう、幸せ者だ私は。
しかしコーヒーの日である前に今日はあなたの誕生日なんだけれど。緩む口を誤魔化すようにまたコーヒーを飲む。そしてバックからプレゼントが入った袋を取り出した。本当は後で渡そうと思ったけど、貰ってばっかりじゃ割に合わない気がする。



「サエ、コーヒーの日の前にあなたの誕生日でしょう。はい、プレゼント。」

「ありがとう。」

「むしろ贈るのはこっちでしょ?生まれてきてくれてありがとう。」



私はそう言って私用のカップを机に置くと、サエの唇にキスをした。不意だったのか、サエが目を丸くさせた。



「・・・幸せ者だなぁ、俺。」



そう言ってコーヒーを飲んだサエの顔がちょっと赤かったのは見間違いではないはずだ。
私はそんなサエに体を寄せると、またカップに手を伸ばした。
出かけるつもりだったけど、今日はこのまままったりお家デートでもいいかもしれない。

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