そしてあっという間に体育委員会の日になってしまった。
半年と言っても半年の中に体育委員最大の活躍の場・スポーツ大会がある。
なんとも思い気持ちのまま委員会が行われる教室に到着。黒板にかかれた指定された席に座ると、同じクラスで一緒の体育委員になった東堂君がそんな私に声をかけてきた。
「おい瀬名、大丈夫か?顔色悪くないか?」
「だっ、大丈夫だよ・・・。」
「そうか?辛いならすぐ保健室行けよ。」
さすが東堂君。サッカー部エースでクラスの人気者。平凡な私にも優しい。
2年生は列で言うと真ん中の列なので、窓からの景色が遠い。始まるまでまだ時間があるらしく、周りに知っている友達もいなそうだ。
私は既に配られているプリントに視線を下げた。そこには今日の議題がかかれている。『2.スポーツ大会について。』ますます憂鬱になってきた。
ガタっ
その時私の前の席に誰かが座った。私はC組なので必然的に前に座るのはB組の子だ。知ってる子かな、と思い視線をプリントから前に移し・・・・・・・・たのをちょっと後悔した。
学ラン姿でウェーブのかかった赤みがかった髪。イスに座っているが、その長身で黒板が若干見えない。
まっ、まさか・・・・・・。
「ダビデ!!」
その時、他のクラスの男子と話していた東堂君がその後姿に声をかけた。
振り返った顔は彫が深くダビデ像のように整った顔立ちだった。
やっぱり、天根ヒカル君その人だった!!
振り返った事によってちょっと距離が近くなる。
「久しぶり。相変わらずテニスすげーらしいな。」
「まぁな。」
「折角の昼休みなんだから、お互い委員会なんてしてないで体動かしてーよな。」
「委員会やすんでいいんかい?・・・ぷっ。」
「お前・・・・相変わらず寒いな。」
「お前も相変わらず冷たい。」
東堂君はそう言って笑った。天根君もなんだか楽しそうだった。
そんな彼らをちらりと見ていた私にトントンと机を叩く音が聞こえた。
見れば斜め前の席・天根君の隣の席に見覚えのある女子が座って手を振っていた。
「瀬名さん。」
「えっと、星野さん?」
「よかった、覚えててくれてたんだ。」
彼女・星野さんは一年生の時の選択の授業で一緒になった子だった。
星野さんはほっとした様子で私を見て微笑んだ。
「知ってる子がいなかったらどうしようって思ってたの。」
「私も。」
「本当に?よかったぁ〜。」
星野さんはそう言って可愛らしく笑った。
彼女は可愛いタイプだ。羨ましい。
「私体育苦手なんだけど、ジャンケンで負けちゃって・・・。」
「あっ、私もそんな感じ・・・。」
「これからまた委員会一緒だし、よろしくね。」
「こちらこそ、よろしく。」
星野さんとそう言って笑い合うと、ドアから担当の先生が入って来た。生徒達はみんな指定された席に座り始める。
私も当然机に座りなおすと、前の席の天根君の座っているイスが私のいる机に当たった。
「悪い。」
「ううん、大丈夫。」
彼は小さく私に謝ると、黒板に向った。
私はちらりとその背中を見つめる。
あの時借りた傘は私が持ったままだ。今でも私の鞄の中にある。
委員会が一緒なのだ。あの傘をいつ返そう。
私は先生の話を聞きながらぼんやりとそんな事を考えた。
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