天根ヒカル君。
2年B組1番。さそり座。A型。
テニス部レギュラー。東京の氷帝学園との練習試合で100人斬りをなしとげる。
ダジャレ好き。
・・・・・・らしい。
らしい、というのはこれも友人・絢ちゃんから聞いたものだからだ。
実際、となりのC組の私には彼との接点があまりなく人から聞いたりするのがほとんどだった。
つまり何が言いたいかというと、私は彼の・・・・ファンなのだ、と思う。





そんな私の教室の席は窓際の一番後ろ。なんともいい席にあたったものだ。席替え万歳。
絢ちゃんと席は離れてしまったが、外を眺めたりできるのでこの席が気に入っていたりする。
今日もここからぼんやり外を眺めていると、校庭でサッカーの授業をしていた。しかも2年のA組とB組。なぜならそこに彼が・・・・天根君の姿があったからだ。
長身であの顔立ちの彼はどこにいてもとっても目立つ。今もまさにその状況で、彼は必死にサッカーボールを追いかけている。



(サッカーでも様になってるなー。)



パスでボールを受け取った天根君はそのまま反対のゴールを目指す。
一人、二人、三人・・・・とディフェンスをかわす。・・・すごい、うまい。
そしてそのままゴール前までボールを運ぶと、キーパーとの一気合になった。しかし彼は簡単にゴールキーパの横をすり抜け、ゴールネットを揺らした。
チームから歓声が起こる。そして素直に見入ってしまった私もおもわず拍手してしまった。
気づけば彼を目で追っていた。



『それさ、恋だよ。』

『はぁ、恋?』

『うん、恋。』



先日お昼を食べている時に絢ちゃんに言われた言葉が突然浮かんだ。



『気が付いたらその人の事を目で追ってる、ってのは恋だよ。完全に。』

『え、そうなの、かなぁ・・・?』

『だって、そうでしょう?アンタ、いつもダビデの事見てるし。』



そうだ、天根君と出会った時の事を話したら絢ちゃんにそう言われたんだ。
別にいつもってわけではない。と反論してみたが、あっさり却下される。
あれから何かと目立つ彼になんとなく視線が言ってしまうだけで、あんまりテニスの試合している所見たことないけどファンなんだよ。それだけなんだよ、多分。
そう言うとため息をつかれた。



『雪のそれは完全に恋だよ。案外自覚したほうが楽かもよ?』



絢ちゃんはそう言うと紙パックの紅茶を飲み干した。
恋・・・・・なのだろうか?自分でもよく分からない。
ただ・・・・・・今のような天根君の姿を見てなんだかドキドキするのは事実だったりする。
小さくため息をつくと、視線を感じた。我に返ると、校庭にいる天根君と目があっていた。いや、目が合っていると感じているだけかもしれない。こっちを見ていると言ったほうが正しいだろう。
あぁ、静まれ鼓動!視線をそらせ私!




「雪、大丈夫?」

「・・・・・え?」




そう言って肩を叩いたのは絢ちゃんだった。見れば授業が終わったらしく、教室の中がざわついていた。
ぽかんとした表情でそんな教室を見つめていると、横に立つ絢ちゃんが私のおでこに手をあてた。



「なっ、何?」

「熱はなさそう・・・。」

「ないよ!どうしたの?」

「・・・・はぁー。どうしたの、はこっちのセリフ。あれ、あれ。」



ハテナマークが浮かぶ私に絢ちゃんが小さくため息をつきながら黒板を指差した。
その指差された見れば、そこには私の名前が。・・・え?



「委員会決めしてたのは分かってたよね?」

「・・・うん。」

「じゃぁアンタの名前が書かれてる委員会は?」

「・・・・・・・たっ、」



体育委員!!??
HRを使って委員会を決めていたのは知ってたけど、何で?何でよりによって体育委員の所に私の名前がっ!?
動揺を隠し切れない私に、絢ちゃんが今度は大きくため息をついた。



「はぁー、やっぱりね。反論も何もしないからどうしたもんかと思ってたけど。」

「どっ、どうしよう・・・・。」

「まぁ、半年だし頑張れ。」



絢ちゃんはそう言うと私にガッツポーズをした。・・・人事だと思ってちょっと面白がってるな・・・。
校庭を見下ろせば既に授業を終わり、彼の姿もそこにはなかった。
私は盛大なため息を吐きながら机につっぷした。
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