ピー!という笛の音で試合は終了。
私のスポーツ大会は一回戦であっけなく終わってしまった。
「おつかれ〜。」
体育館の外に出ると、絢ちゃんに声をかけられた。
クラスで作った鉢巻には優勝の二文字が。
「いやぁ、惜しかったね。」
「惨敗でしたけどね・・・・。」
「いやいや、がんばったって!!」
絢ちゃんはそう言うと私にタオルをくれた。
私はそれを受け取ると、ふぅと一息つく。
私はバレーボールに参加。しかし結果はご覧の通り一回戦負け。絢ちゃんの話によるとどうやらクラスで私達だけが早々と負けてしまったらしい。練習もしたんだけどな・・・。
「あっ、じゃぁもしかして負けたから次審判?」
「うん、でも他の子がやってくれてるって。ほら。」
「あっ、本当だ。」
試合で負けると次の試合の審判をするという決まりがある。
私のチームからも4人審判として残っていた。
絢ちゃんはそれを見ると、ほっと胸を撫で下ろしたように私を見た。
「よかったぁ〜。」
「ん、何が?」
「雪がフリーで。」
「私?」
「そう、あんたに用があったの。」
「何?」
「お願い!!」
絢ちゃんはそう言うと顔の前で手を合わせると頭を下げた。
私がタオルを肩にかけると、絢ちゃんが少し顔を上げた。
「これから佐伯先輩のクラスの試合なの!お願い、ちょっとだけでいいから救護係代わってくれない?」
・・・・・そういう事か。
絢ちゃんは救護係だと言っていた。交代で救護テントにいなくてはならないらしい。
「いいよ。」
「本当に!?流石雪、ありがとう!」
「応援頑張ってね。」
「勿論!後でなんか奢るから!」
絢ちゃんはそう言うと、手を振りながら去っていった。
私は首に掛けていたタオルを畳むと、救護テントに向かって歩き出した。
しばらく歩いていると見慣れた後ろ姿を発見した。
星野さんだ。
私は星野さんに近づくが、彼女は一点を見つめている。
「星野さん。」
「わぁ!!」
彼女の肩に手を置くと、肩がビクンとおおきく跳ねた。そして振り返った星野さんは少し目を丸くさせていた。
「あっ、瀬名さん。」
「ごっ、ごめん。まさかそこまで驚かれるとは思ってなくて。」
「ううん、こっちこそ。」
「何見てたの?」
「試合だよ、ほら。」
星野さんはそう言うとグラウンドを指差した。見ればサッカーの試合の真っ最中だった。
「もう当たっちゃったみたいなの、B組とC組。」
「えっ!?」
言われて見れば、そこに天根君と東堂君の姿があった。
二人ともボールを必死に追いかけている。
星野さんは東堂君を見ていたのか。
「どっちが勝ってるの?」
「1−2でC組が勝ってるよ。」
「わー、流石サッカー部。東堂君すごいね。」
「ダビ君も頑張ってるよ。ほら。」
星野さんがそう言うと、天根君がパスを受けてシュートを放った。しかしボールは惜しくもポールに当たって跳ね返された。
「あぁ、おしいな。」
「・・・・・・・。」
「・・・ねぇ、瀬名さん。」
「何?」
「間違ってたらごめんね。・・・・・好きって気づいた?」
私は星野さんの言葉に持っていたタオルを落としてしまった。慌ててタオルを拾うが、何故だが少し鼓動が早くなった。
「どっ、どうして?」
「えっ、あぁなんか、ダビ君見る目が変わってっていうか、雰囲気が変わったっていうか・・・・。」
「・・・・・・。」
タオルについた土を払うと、少し俯いた。
星野さんは可愛らしく微笑んでいた。」
「それに、ダビ君も瀬名さんの事・・・・。」
「あっ、そうだ私救護係!」
「えっ、救護係?」
「うん、救護係。ちょっと代わったから早く行かないと!ごめんね、星野さん!!」
「あっ、瀬名さん!」
私は早口でそう言うと踵を返してその場から走り出した。
後ろでホイッスルの音と歓声の音が聞こえた。
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