東堂君と別れて数分・・・・・・・やっぱり彼に手伝ってもらわなかった事を少し後悔した。



「つ、疲れる・・・・。」



言われた通り指定の場所に荷物を運ぶと、場所が違う事が判明。その場にいた子に聞いて、正しい場所にまた向う。
そしてようやく指定の場所に着いたと思ったら、



「あ、それ予備のやつか。ここは足りてるから・・・・・悪いけど倉庫に置いておいてくれる?」



と、先輩に言われた。
先輩が言った倉庫と言うのは私がこれを運び出した所。
・・・・・結局私の行動は完全に無駄足に終わったようだ。
倉庫に向かいながらため息をつくと、荷物をかかえなおす。
こんな事なら東堂君に手伝ってもらうんだったな・・・・。



「わっ!」

「おっと!」



その時、曲がり角から来た人とぶつかってしまった。私が持っていた荷物は綺麗に散らばり、私も前に倒れ・・・・・そうになったが、腰に回っている腕のお陰でそうならずに済んだようだった。



「大丈夫かい?」

「はい、ありがとうござ・・・・・・・。」



支えてくれている腕から視線を上げると、そこにいたのはなんとあの佐伯先輩だった。
私は心配そうに見つめる先輩の腕から離れると、急いで頭を下げた。



「すっ、すみません。ありがとうございます、佐伯先輩。」

「俺のほうこそ、ごめんね。怪我はない?」

「はい、私は大丈夫です・・・・・。」



私はそう言うと、見事に散らばってしまった小物たちに目を移した。
佐伯先輩は苦笑いを浮かべると、ゆっくり膝をついた。そして散らばった小物を拾い始めた。
私も急いで膝をつくと、近くにあったストップウォッチを拾う。



「本当にすみません・・・・。」

「いいって、気にしないで。俺にも責任はあるから。」

「ありがとうございます・・・・。」



佐伯先輩は綺麗な笑顔を浮かべながらそう言った。
・・・・・こんな所を絢ちゃんに見られたらきっと大変な事になるんだろうな・・・。



「瀬名さん。」

「はい?・・・って、どうして私の名前・・・。」

「瀬名雪さん。合ってる?」

「・・・・はい、そうです。」



佐伯先輩は私の名前を呼ぶと、拾った小物を箱に戻した。
そしてまた笑う。



「でも、どうして私の名前知ってるんですか?」

「あぁ、ごめんね。バネから聞いたんだ。」

「黒羽先輩?」

「犬友達、なんでしょう?バネの所の犬と。」

「あっ、はぁ・・・・・。」

「嬉しそうにバネが話してたから、それで。」



・・・・なるほど。
2・3回ぐらいしか遊んでないけど、犬友達なのか。



「後は、有名人だからね。」

「え?」

「ううん、何でもないよ。こっちの話。」



佐伯先輩はそう言うと、私に笑いかけた。




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