そしていよいよスポーツ大会も明日にせまった。今日はつまり前日。




「おい、瀬名!!」



名前を呼ばれ振り返ると東堂君がこちらに走ってきていた。
私の前にくると、私の姿に少し目を細める。



「・・・何やってんだ、お前?手伝い?」

「そう、D組の子が今日お休みでその子の係の準備頼まれたの。」

「へー、手伝うか?」

「ううん、大丈夫。コレ運ぶだけだし。」



東堂君は「そっか」とつぶやくと私の持っている荷物の中を物色し始めた。
休んでいるD組の子の係はいわゆる備品係で、その種目に使う小物を運んでいるところだった。
私は東堂君がストップウォッチを手にした所で、彼を見つめる。



「あっ、そうだ。東堂君も何か私に用だったんじゃないの。」

「あっ、いけね。そうだった。」



東堂君は持っていたストップウォッチを箱に戻しながら言った。



「あのアーチ、俺とダビデで指定の位置に運んでおいたから。」

「えっ、そうなの!?ありがとう・・・。むしろ、手伝えなくてごめんね。」

「いいって、どうせ飾りつけも済んでてそのまま運ぶだけだったし。」

「ありがとう。」



私がそう言うと東堂君は頭をかいた。
そして私の顔をじっと見つめる。




「なっ、何か付いてる?」

「・・・・・お前さ、ダビデとなんかあった?」

「えっ!?」



東堂君の言葉に思わず持っていた荷物を落としそうになった。
私は早くなった鼓動を抑えながら、荷物を持ち直す。



「なっ、何もないよ。どうして?」

「いや、なんか妙な感じだったし・・・・。」

「・・・・・・・。」



あの後私は教室に戻る途中に東堂君と星野さんと会い、一緒に戻って4人で作業をした。
それからの事はあまり覚えていないが、妙に天根君とぎこちなく過ごしてしまったのだ。
もしかしたら東堂君はそれに気づいているのかもしれないと思った。



「お前もなんか変だし、何かあったのかと思って。」

「何もない、よ。本当に!」

「・・・・ならいいけど。俺はてっきり・・・・。」

「てっきり?」

「・・・・・お前がダビデの寒いダジャレ聞きすぎて呆れかえったんだと思った。」

「・・・・・。」



東堂君はそう言うといつものように笑った。



「じゃがんばれよ。」

「東堂君は部活?」

「今日はない。でもクラスの連中と明日にむけてちょっとした特訓する予定。第二グラウンドなら大丈夫だと思うし。」

「そうなんだ、無理しないでね。」

「あぁ、じゃーな。」



東堂君はそう言うと私に手を振りながら去っていった。
私は荷物をもう一度持ち直すと、また歩き出す。


・・・呆れる事なんてない、と思う。でも好き、って気持ちに気づいて今までと何かが変わってしまった気がした。




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