約束してあった体育館に一番近い空き教室に行ってみると、そこには天根君の姿だけしかなかった。



「瀬名。」

「あれ?天根君一人?」

「うぃ。」



今日は飾り付けにつかう物を四人でいろいろと作ろうという事だったのだが、机に座る天根君の前に道具があるだけだった。
教室に足を踏み入れて端の机に荷物を置くと、制服姿の天根君が私の方を向いた。



「えっと、二人は?」

「東堂は部活、星野は先生に呼び出されていない。」

「そうなんだ。」



天根君の前には紙で作った花が。紙を折ってつくるお花だが、赤に白、黄色や青と他にもいろいろな色があった。
私は彼の一つ開けた右隣のイスに腰掛けた。




「お花、作ってるの?」

「とりあえずは。あいつらが来たらまたそうするか話せばいいと思って。」

「なるほど。」



私が天根君の言葉に納得していると、彼の手から新たにお花が出来上がった。
新たに出来上がったそれも含めて、彼の作ったお花はどれも本物の花のように綺麗。アーチを補強した時も思ったけど、天根君は手先がとっても器用のようだ。



「あっ、ごめん。私も作ります。」

「何色がいい?」

「じゃぁ・・・・・・黄色。」

「ほら。」



私がそう言うと天根君が黄色の紙の束を取って私の前に置いた。
束から五枚取り、段々に折って真ん中をホチキスで止めて、一枚一枚紙を・・・・・・。



「できた!」

「ん。」

「・・・・・・・・私のなんか変。」

「そんな事はない。なかなかだ。」

「うーん・・・天根君みたいにもっと綺麗なのを作りたいな。」

「・・・・・・・・。」



私が呟くと天根君はお花を作る手を止めて黙り込んでしまった。
私はそんな彼を見つめると、天根君はようやくまた手を動かしながら私の方を見た。



「気持ちを入れればいい。」

「気持ち?」

「そっ。愛情ならなおさらだ。」

「どうして?」

「愛情はあ〜、良ーじょう・・・・・・・ぷっ。」

「・・・・・・・・・ぷっ。」

「・・・・・・・・うけた?」

「うん。」



私はそう言うと出来上がった花を天根君の作ったお花の隣に置いた。
あっ、やっぱり出来栄えが違う・・・・。
そんな事を思いながらまた彼を見れば、少しだけど口元がほころんでいた。そして優しい瞳で黙々とお花を増やしている。



「・・・・器用だね、天根君。」

「まぁな。だが、お前も器用だろ?」

「えっ、そうかな?」

「ちょっと抜けてて、頑固だけど。」

「っ・・・・・が、頑固なのは天根君もでしょう?」

「俺も?」

「うん。」

「頑固頑固・・・・・頑固なミシガン湖。」

「・・・・ぷっ、あははは。」



私が笑うと天根君はまた新たに出来上がったお花をさっきできた私のお花の隣に置いた。





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