「えっと、その後は一緒に帰りました。」
「家まで?!」
「いや、近所の公園まで・・・・。」
「やったじゃない!!」
絢ちゃんはそう言うと私の手を握り締めた。
何故こうなているかと言うと、何時もながら絢ちゃんにいろいろと聞かれているのだ。
あの後前に天根君にプリントを渡した公園まで送ってもらったのだった。
絢ちゃんは手を話すと、私の前の席に腰掛けた。
「なんだー、雪もやればできるじゃん!このまま告白しちゃえば?」
「だから、私は・・・・・・・。」
「・・・ん?どうしたの?」
前まで“そうじゃない”と言えていたのに、今日はその言葉が思うように出てこなかった。
「雪?」
「あぁ、ごめん。何でもない。」
「何時も反論してたのに、今日は何も言わないんだ。」
「なんか・・・・その辺がちょっと、曖昧になってきたかもしれない。」
理由は分かっていた。それ自体が、曖昧になっているという事。
どうしたらいいのか分からず机に顔を伏せると絢ちゃんが私の頭をポンポンとはたいた。
「ようやくあんたもここまで来たか。」
「ここまで?」
「まぁ考えてみてダメなら、もっと話せばいいじゃない。ダビデと。」
「話す?」
「そっ。話せば相手がどんどん見えてきて自分の気持ちもはっきりするって。」
「そう、なの?」
「多分ね。今日も作業あるんでしょ?」
「えっ、何で知って・・・。」
「東堂に聞いた。」
「あー・・・・。」
私はそう呟いて起き上がると、絢ちゃんが苦笑いをした。
そして「あ」と呟くと私に顔を近づける。
「そうだ、星野さん。」
「うん、星野さんがどうしたの?」
「彼女、告白するってさ。」
「こっ、告白っ!?」
「声が大きいよ。」
「ごっ、ごめん・・・・・。東堂君、にだよね?」
「そっ。スポーツ大会の日にするってさ。」
「スポーツ大会の日に・・・・。」
「星野さん、あんたの事も気にしてたよ?手伝える事あったら手伝うって言ってたし。」
「・・・・・・・。」
時計を見ていた絢ちゃんが立ち上がった。
そして私の肩に手を置いた。
「まっ、私もいつでも応援してるから。何かあったら相談にものるし。」
「あっ、ありがとう・・・・。」
「んじゃ、私これから部活だから。」
「頑張ってね。」
「あんたもね。」
絢ちゃんはそう言うと笑って教室を後にした。
私は机に肘をつくと、校庭の先のテニスコートを見つめた。
スポーツ大会が近いがコートで何人かが練習をしているようだ。天根君の姿がいるのかどうかは、ここからじゃよく分からない。
ため息をついて瞳を閉じれば、瞼の裏に彼の姿が映った。私は慌てて瞳を開くと、ぶんぶんと首を横に振った。
そして立ち上がると少し早くなった鼓動を抑えながら、教室を出た。
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