「ごっ、ごめんなさい・・・。」
「いや、別に謝らなくていい。」
あの後天根君にみつかり(私が一方的に隠れてたんだけど)、私はそのまま天根君と一緒にその空き教室に入った。
謝る私に天根君はそう言って視線をアーチに戻した。
「あっ、これ・・・・。何してたの?」
「まだ何もしてない。」
「えっと・・・・何をする予定?」
「補強。」
「補強?」
「うぃ。」
天根君はそう言ってしゃがむと、アーチの根元を自分の足で踏んだ。そしてそこに差し込んであったアーチの骨組みを少し揺らす。
「不安定そうだからな、一応。」
「・・・・・・・。」
天根君は少し揺らしては足を少しずらして、微妙な調整をしていた。そして転がっていた木材の切れ端にえんぴつで線を引く。
なるほど、だから木材の切れ端のようなものがこんなにあるのか。
私は鞄を近くの机の上に置くと、天根君の上辺りを支えた。
そんな私を見てか、天根君がえんぴつを落とした。
「手伝うよ。一人だと大変でしょ?」
「いや、そうでもない。」
「でも、けっこうぐらついてるし支えてないと危ないよ。」
「大丈夫だ、すぐ終わる。」
「でもでも、二人でやってほうが早く終わると思うし!」
「金槌とか鋸も使う。お前、使えるか?」
「えっ、そっ、それは・・・・。」
「俺は家でも結構やってるから使える。だから、大丈夫だ。」
「でっ、でもその資材切るのとかも支えが必要でしょ?」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
天根君はそんな私を見ると、少し眉間に皺をよせ諦めたように息を吐いた。そしてアーチをまた分解すると、私の手を離すように促した。
「・・・・分かった。」
「ありがとう。」
「本当に頑固だな、お前。」
「あっ、天根君だって・・・・。」
私がそう言うと天根君はふっと笑うと、立ち上がった。
私が髪を結びなおすと、その横で天根君も後ろの髪を束ねていた。
確かに少し長い髪だけど・・・・結べるんだ。
私が天根君を見ながらそう感心していると、小さくパチンという音がした。
「あ。」
そして天根君が小さく声をあげると、自分の手のひらを見つめた。
そこには切れた髪ゴムが。天根君はそれを見て少し眉が下がる。
「・・・・切れた。」
「えっと、それしかないの?」
「あぁ、今日はこれしか持ってなかった。」
今日は、という事はいつも何本か持ち歩いてるのかな?
ぼんやりとそう考えると、天根君がため息をついた。そして片手で髪を直す。
・・・そうだ!
私は鞄を置いた机に戻ると、鞄から小さい缶を取り出した。そこにはいつもピンと髪ゴムが入れてる。
私はそれを取り出し戻ると、天根君に見せた。
「あの、よかったら使う?」
「・・・・・いいのか?」
「うん、予備のやつだけど。」
「・・・・・・・。」
「あっ、まだ使ってない新品だから大丈夫!安心して!」
私がそういう言ってゴムを差し出すと、天根君がぷっ、と笑った。
そして差し出た手の上にゴムを落とす。
それを受け取ると天根君はまた髪を束ね始めた。
「買ってかえす。」
「大丈夫!まだ家にもあるし!!」
「そうか。」
「うん。」
私が頷くと、天根君の髪が縛り終わった。
「よし、」と私が声をだすと、天根君はまたしゃがみこんだ。その隣にいき私もしゃがんだ。
「まず何からしたらいいかな?」
「じゃぁ、これを・・・・・。」
こうして天根君の手伝いを始めた。
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