仕事の分担きめはなんともスムーズに進み、昼休みの終わり5分前をもって委員会は終わった。
「東堂、瀬名、星野。」
教室から出ようとしていた私達に先生から声がかかった。
そして手招きされ、私達は先生の元に向う。
「何ですか?」
「確かアーチの係りは君たちだったね。」
「そうですけど。」
「その事で伝え忘れてた事があって。」
先生はそう言うと、手書きのメモを私達に配った。
見ればそれは設計図のようだった。
「実は先生方の話し合いでアーチを新しいものにしようって話があがってね。」
「新しく?」
「まぁ今日は一人だけど男子は2人いるみたいだし、新しいのを製作してもらおうと思って。」
先生はそう言いながら東堂君の肩に手をポンポンと置いた。
「手書きで悪いが、それが大体の設計図だ。」
「はぁ。」
「基礎さえ組み立ててもらえば飾りつけは君たちに任せるよ。資材は明後日に届く予定だ。」
そして先生は「それじゃぁ」と言って教室を後にした。
そんな先生の後ろ姿を見ながら、東堂君が貰ったプリントを二つに折る。
「ったく、だから当日に仕事入ってなかったのかよ。なんか騙された気分。」
「まぁまぁ、東堂君。」
「まぁ、決まったもんはしゃーないから最後までやるけどさ。」
東堂君はそう言うと笑った。
あぁ、こういう所が人気の秘密なのか。少し分かった気がする。星野さんもこういう所を好きになったんだろうな。
「アーチって校門の所とかに立てるあれだろ?」
「そうだね。」
「新しくって、アーチは確か・・・・。」
「2つだよね。」
「2つか・・・・・。」
東堂君はそう言うと腕を組んだ。
一人一つというのは星野さんと私にはちょっと辛いな・・・・。ここで私はある事をひらめいた。
「だったら、二人で組んで作れば?」
「あぁ・・・・・なるほどな。」
「同じクラス同士組んでもつまらないから、東堂君は星野さんと一緒にやったらどうかな?」
ぺらぺらと言ってしまった。私の言葉に星野さんは少し驚いたように赤くなり、東堂君は私の言葉に納得したように腕をほどいた。
「まぁいいぜ、俺は。星野は?」
「私も、いいです。」
「んじゃ、それで決まりな。」
東堂君はそう言うと、他のクラスの子に呼ばれ先に教室から出て行ってしまった。
彼の背中を見つめる私に、星野さんが近づいてきた。
「瀬名さん、ありがとう。」
「え?」
「東堂君と一緒のペアにしてもらって・・・・。」
「いや、こちらこそなんか突然言っちゃってごめん・・・・。」
「ううん。同じ係りになっただけで、なんか力ぬけちゃって・・・・。」
星野さんはそう言って力なく笑った。
確かに一緒の係りに手を上げた時はすごいと思った。
「それに、私だけじゃなくて瀬名さんもそうだもんね。」
「・・・・え?」
星野さんが不思議そうに私を見つめた。
綺麗な瞳をぱちぱちとさせ、私をまた見つめる。
「東堂君と私がペアってことは、ダビ君と瀬名さんがペアって事。」
「・・・・・・・。」
・・・・そっ、そうだった!東堂君と星野さんが組むってことは、必然的に天根君と私がペアになるって事じゃないか!!
その事をすっかり忘れてそう言ってしまった自分が情けない・・・・。
「大丈夫、瀬名さん?」
「えっ、あっ、うん・・・・・。」
「・・・瀬名さんも頑張ってね。私、応援するから!!!」
「あっ、ありがとう・・・・・・。」
「それじゃぁ、また。」
星野さんは嬉しそうにそう言うと手を振って教室を後にした。
私はその背中を見つめながら、自分を呪った。
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