そして次の日。
放課後、私がパソコン室に行くと既に星野さんが作業をしていた。そしてその隣には何故か東堂君の姿もあった。
「あっ、瀬名さん。」
「よぉ、瀬名。」
「ごめんね、遅れちゃった?」
「違う違う、私が早く来すぎたから先に進めて置こうと思って。」
「東堂君は?」
「俺は鬼ごっこで避難中。」
鬼ごっこって・・・・。(男子数人でやっているらしい)
星野さんはそんな私に優しく微笑んだ。
私は急いで荷物を足元に置くと、彼女の隣の席に腰掛けた。
「どこまでやった?」
「えっと、C組が終わったところ。」
「じゃぁD組からだね。」
「うん。東堂君が手伝ってくれて・・・。」
「あー俺ほとんどこれ読んだただけ。やるんだったらお前がこれ読んで星野が入力やった方が早いぜ?」
「分かった。」
私はパソコンの横にあったプリントを手にすると、捲りB組からデータを読み上げ始めた。
そして星野さんはそれをパソコンに入力していく。
東堂君は壁時計を見上げると「あっ」と呟いた。
「やっと30分になった。」
「30分?」
「あぁ、30から部活だから、鬼ごっこはそれまでって言ってあるんだ。」
「なるほど。」
「それじゃーな、二人とも。」
「うん。」
「あっ、ありがとう。東堂君。」
「いいって、いいって。じゃーな。」
東堂君はそう言って手を振りながらパソコン室を後にした。
私も振っていた手を止め、東堂君から受け取ったプリントを手にする。
そして星野さん、彼女はドアの方を見つめ続けている。見れば頬が少し赤い。
これは・・・・・。
「ねぇ、星野さん。」
「ん、何?」
私が名前を呼ぶと、星野さんはようやくこっちを向いた。
「もしかして星野さんって、東堂君の事好き?」
・・・・私はいきなり何を言ってるんだろう。
私がそう言ってとっさに口を押さえると、彼女は顔を真っ赤にした。そしてはにかむ様に笑う。
・・・・どうやら図星のようだ。星野さんとは一年の選択の授業の時は挨拶程度しか話さなかったけれど、彼女はこんな可愛く笑う人だったのか。
「・・・・まだ、片思いだけどね・・・。」
「・・・・・・・。」
星野さんの表情が恋というものなのだと思った。
絢ちゃんや女の子達が佐伯先輩を見つめる視線も恋なのだと思っていた。でもそうじゃないようだ。目の前できらきらと澄んでいるように輝く彼女のような事を言うのだろう。
「瀬名さん?」
「あぁ、ごめんね。変な事聞いちゃって・・・・。」
「ううん。」
「ほら、東堂君かっこいいしね。うん、お似合いだと思うよ。」
「・・・・ありがとう、瀬名さん。」
彼女は呟くようにそう言うと、柔らかく笑った。
私は自分でそう言いながら、何だか恥ずかしくなってきてしまった。
恋の話しが苦手といいながら、何で私は自分で話をしてしまったのんだろう。
プリントを揃えなおすと、星野さんが私の方を向いた。
「ねぇ、瀬名さん。」
「ん、何?」
私がそんな事を考えていると、星野さんが呟くように言った。
「瀬名さんは、ダビデ君の事好きなの?」
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