体育委員の最初の仕事。それはアンケートの配布からだった。
『スポーツ大会についてのアンケート』
クラスでそれを配り、回収し、おまけに集計までする。学年毎にそれを行い、先生に提出するのだ。


放課後、ようやくクラスの回答用紙が揃うと絢ちゃんがやってきた。教室に残っているのが私一人で、もう一人の体育委員・東堂君は部活中。私は帰宅部なのでアンケートの集計を軽く行っていた所だった。
そんな中、教室に袴姿の絢ちゃんがやってきた。(絢ちゃんは弓道部)



「あれ、どうしたの?」

「どうしたのじゃないよ!」



絢ちゃんはそう言うと私の席の前に座った。走ってきたのか息が乱れている。



「聞いたよ?ダビデと委員会一緒なんだって!?」

「えっ、あっ、うん・・・・。」

「・・・で?」

「え?」

「で、どうするの?」

「どうするっていうのは??」

「もー!告白するのか、しないのかってこと!!」

「えっ、えぇぇぇぇ!!!???」



絢ちゃんの言葉に私は思わず持っていたプリントを床に落としてしまった。
私は慌ててそれを拾うが、拾ってくれていた絢ちゃんの大真面目な表情とぶつかる。




「はっ、話が飛びすぎだよ。まともに話した事すらないんだよ?」

「だから、これがチャンスなんじゃない!!」



絢ちゃんは力説する。
確かに一緒の委員会で嬉しいと思ったのは嘘ではない。
だが、本当に、出会ったあの時以来話しすらまともにした事がないのだ。
絢ちゃんはそう言って握りこぶしを作った。



「好きな人と一緒の委員会なんて、私からしてみたら羨ましい限りだし。」

「すっ、好きな人なのかはまだ・・・・。」

「はぁー。」



絢ちゃんは私がそう言うと大きくため息をついた。
そしてとんとんと拾ったプリントを整えると私に差し出した。私は無言でをれを受け取る。



「もっと積極的に行かないと。」

「積極的に?」

「そっ。例えば、休憩中に声かけるとか。」

「むっ、無理だよ。第一、向こうが私の事知らないと思うし・・・・。」

「何言ってんの!何事もそこから始まるんだよ?私だって、日々佐伯先輩にエールを・・・・・。」



絢ちゃんが腕を組みながら力説に入ると、教室の後ろの扉を叩く音がした。そしてガラガラと戸が開くとそこには星野さんの姿が。



「あっ、よかった。瀬名さんちょっといいかな?」

「うん、勿論!じゃあ絢ちゃん、そういう事だから!!」

「あっ、ちょっと雪っ!!」



私はプリントと鞄を掴むと、立ち上がり星野さんに向った。
そんな私の姿を見てほかんとする彼女の腕をとると私は急いで教室を離れる。
後ろで「まだ話は終わってない!」という絢ちゃんの声を聞きながら私は近くの教室に逃げ込んだ。



「瀬名さん、よかったの?坂本さんとの話途中だったみたいだけど・・・・。」

「だっ、大丈夫。殆ど終わってたし・・・・。」



正直あの時星野さんが来てくれて助かった。正直恋愛話と言うのが私は苦手で、仲良しの絢ちゃんとすらまともに話をしたことがなかった。
私はほっと胸を撫で下ろしながら近くのイスに腰掛けた。



「あっ、そうだ、私に何か用事?」

「うん、委員会の事。」

星野さんはそう言って微笑んだ。
そして彼女の持っていた鞄から私と同じくアンケート用紙を取り出した。しかも塊を。



「どうしたの、これ?!」

「先生に渡されたの。私達の学年のアンケート用紙全部。集計してほしいって言われて。」

「星野さんに?」

「うん。帰宅部のやつと一緒にやれって言われて。」



星野さんはそう言うと私の持っていたプリントを取ると、置いてあるその上に重ねた。そしてプリントの上の方にCと書いた。



「だから瀬名さん、よかったら手伝ってくれない?」

「私?いいよ。」

「本当に?ありがとう!!」



星野さんはそう言うと嬉しそうに笑った。
私はそんな彼女の前に束を半分自分の方にとると、筆記用具を取り出した。



「じゃぁまずはクラス毎に集計しよっか。」

「そうだね。」



そして星野さんと私は他愛もない会話をしながら、アンケートの集計を始めた。
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