10月4日は跡部の誕生日でした。そう、過去形。今年は完全に跡部の誕生日を忘れていた。その日学校自体今日はなんか賑やかだなぁ・・・ぐらいにしか思っていなかった。というかそもそもその日に跡部に会ってないし。
しかしどうも跡部はそれがお気に召さなかったらしい。



「キャンディ、自分の仮装はこっちやで。」



ハロウィンパーティーin跡部家。ドレスコードは仮装をする事。みんな思い思いの格好をする中、魔法使い姿の忍足に呼ばれた。



「え、私もう仮装してるんだけど?」

「せやけど、跡部からみたいやで?自分跡部の誕生日すっぽかしたんやろ?」



別にすっぽかした訳ではないんだけれど、従わないと後々面倒なので忍足から紙袋と紙切れを受け取る。
『これに着替えて俺の部屋まで来い』
紙切れには跡部の字でそう書かれていた。そして紙袋の中身を見る。忍足に「頑張りや」と肩をたたかれた。




跡部に従い、紙袋の中の衣装に着替えた。衣装はまさかの・・・・。



「メイド服・・・。」



忍足にからかわれているのかと思ったけれど、どうも違うらしい。跡部家の本物のメイドさんに跡部の部屋まで案内される。部屋に主の姿はなく、メイドさんにそのまま待つように言われ一人部屋に取り残された。
とりあえず無駄に広い部屋の中をうろうろしてみる。



「ハロウィンでまさかメイド服を着る事になるとは・・・まさか跡部って、こういう趣味が、」

「あーん?」



ぶつぶつ言っていると後ろから聞き慣れた声が。振り返れば跡部が部屋に戻ってきたようで、眉間に皺を寄せながらドアを閉める。



「あ、跡部・・・。」

「誰が何の趣味だって?」

「いや、何でもないです!!」



私がそう言うと跡部は部屋の真ん中にあるソファーに腰を下ろした。



「キャンディ、こっち来い。」

「・・・・やっぱり怒ってる?」

「何の事だ?」

「その・・・・誕生日忘れた事。」

「・・・いいから来い。」



そう言われて座ってる跡部の前まで行くと、手を取られてそのままソファーに座らされた。手が離れると私の膝に綺麗な模様のお皿を置いた。その上にはパンプキンパイが。しかも私が食べたがってたやつだ。



「もしかして・・・くれるの?」

「あーん?これは俺の分だ。」

「じゃあ何で私の膝に置いたの!?」

「置くところがそこしかねぇからだ。」



嘘つけ!!お前の隣に小さいテーブルあるだろ!!何も置いてないんだから置けるだろ!やっぱり怒ってるじゃないか!
しかし跡部はどこからかフォークを取り出した。



「でもまぁ、今日はハロウィンだからな。」



そう言った跡部はパンプキンパイを一口切ると、私の前に差し出した。
こ、これは・・・。



「と、トリックオアトリート・・・。」

「ふっ、上出来だ。」



そう言って微笑んだ跡部。パクリとフォークにかぶりつくと、程よい甘さが口に広がる。



「美味しい!」

「トリックオアトリート。」

「え?」

「トリックオアトリート。」

「私何も持ってないんだけど?」

「これがあるだろ?」



そう言った跡部は私に持っていたフォークを握らせると、パンプキンパイをまた一口切った。そしてそのまま自分の口にフォークを移動させる。端から見たら食べさせてあげてる光景だ。



「まぁ、そこそこだな。」

「・・・強引だなぁ跡部は・・・。」

「何だ、物足りねぇのか?」

「いや、もういいです。」



私がそう言うと跡部は声を上げて笑った。そしてパンプキンパイの乗ったお皿を隣にあるテーブルに今度は置いた。そして私からフォークを抜き取る。



「何か俺に言う事があるんじゃねーのか、キャンディ?」

「・・・・お誕生日おめでとうございました、跡部様。」

「遅ぇんだよ、お前は。」

「やっぱり、怒ってる?」

「そんな事で怒るわけがねーだろ。」



そう言って微笑む跡部はいつもの跡部だった。私は嬉しそうな跡部にちょっと近づく。



「跡部、これは何の格好?」

「魔王だ。」

「・・・・なんか楽しそうだね。」

「お前はそのメイドだ。」

「はぁ?」

「パーティーが終わるまで俺の隣にずっといろ。それで俺様の誕生日すっぽかしたのは帳消しにしてやる。」

「・・・やっぱり怒ってるじゃん。」

「何か言ったか?」

「いいえ、何も!」

「さぁ、キャンディ!パーティーに行くぞ!」



そう言って立ち上がった跡部にちょっと見とれしまった事は、本人には絶対に内緒だ。
きっと忍足あたりにからかわれそうだけど、跡部が楽しそうならいっか。いつになくノリノリの跡部の隣でハロウィンを満喫しようではないか。

\2013HALLOWEEN/

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