暑い。日陰を歩いてても暑い。夏だから仕方がないんだけど、暑い暑すぎる。時々届く日差しは暑いを通り越して痛い。
そんな中プールに来ている私も私だけど。
「あ。」
荷物を置いているパラソルの下に向かうと、荷物番をしていたサエが1人かき氷を食べていた。
「あれ、もう戻ってきたの?」
「日焼け止めを塗り直そうと思って。ってか何でサエ1人で先にかき氷食べてるの。」
「だって暑いし。あ、君もいる?」
笑顔でかき氷(ブルーハワイ)ともう一つスプーンを差し出してきた。私はサエの隣に腰を下ろすとスプーンを受け取る。
海ではなくプールに行こう、と言い出した張本人がサエである。サエと私、そしてダビデと彼女ちゃんの4人。
ダブルデートだね、とか言っていたが何でプール?かき氷を頬張りながら水着姿のサエを見る。
「ダビデと彼女は?」
「流れるプールにいるよ。」
「今年は死に物狂いで宿題終わらせたらしいよ、ダビデ。」
「当たり前。ダビデと剣太郎に今年も去年みたいに宿題残したら練習メニュー5倍にするからね、って脅しておいたから。」
「厳しいね、うちのマネージャーは。」
そう言ってまたかき氷を頬張るサエ。
私はとりあえずスプーンを口にくわえると鞄の中から日焼け止めを取り出す。そして適量手の甲に乗せると、クリーム常のそれを腕に塗る。
「背中とか、俺塗ろうか?」
「いや、自分で塗るから大丈夫。」
「そっか、ちょっと残念・・・・いたたっ。」
いつものように言いかけたサエの眉間に皺がよる。頭を押さえている所を見るとアイスクリーム症候群。いわゆるかき氷を食べた時になるキーンというあのやつだ。
「大丈夫?」
「うん、でもこれも夏の風物詩だよね。」
「あぁ、そうですか。」
ちょっと心配して損した。一通り日焼けを塗り終えるとくわえていたスプーンをでサエの持っているかき氷にザクリと突き刺す。
そこでずっと気になっていた事を聞いてみる事にした。
「ねぇサエ。」
「何?」
「何で、海じゃなくてプールに行こうってなったの?」
スプーンでかき氷をすくって口に運ぶと、甘みよりも冷たさが先に届いた。
「うーん、特に理由はないかな。」
「ないのか。」
「しいて言うなら、海以外でありがとうと思い出作りたかったから、かな。」
そう言っていつものように笑ったサエ。まったくこいつは・・・・。
私はまたスプーンをかき氷に突き刺す。青いシロップをザクザクと氷につけてすくうと、そのままサエの口にかき氷を押し込んだ。
「まぁ、あの二人も楽しそうだからよしとしよう。」
「・・・・君は?」
「私?」
「そう、ありがとうは楽しい?」
「うん、それなりに楽しんでるよ。」
「良かっ、いたた・・・・。」
サエはそう言いながらまた頭を押さえた。めったに見れないサエの姿に思わず笑ってしまった。
「あははは、サエ可愛い!」
「そう言ってもらえたのは嬉しいけど、仕返しだ!」
「ん!」
サエはそう言うと私の口にもかき氷を押し込んだ。一気に押し寄せる頭痛に頭を押さえると、そんな私を見てサエも笑う。
「あははは!ありがとうも可愛いよ!」
「その笑顔ムカつく、いたた・・・。」
「照れてる?」
「照れてない。」
スプーンをまたかき氷に沈めると少なめにすくってまた口に運ぶ。
まぁ海毎日のように行ってるから、たまにはプールもいいかもね。サエの前では絶対に言わないけど。
冷たさを堪能していると、人ごみの中にダビデと彼女ちゃんを発見。二人でこっちに戻ってくる。その手にはアイス。ちゃっかりしてるな、ダビデも。
とりあえず二人が戻ってきたら荷物番を変わってもらって、サエと一緒にウォータースライダーにでも行こう。勿論これも今は絶対に言わないけど。