「お願い?」

「このままじゃお互いずっとこうなりそうだから、提案としてね。」



男性はそう言うと笑う。景ちゃんの笑顔とはまた違う笑顔だ。



「・・・・クリーニング代は、本当に大丈夫ですよ。」

「じゃあクリーニング代以外のお願いにするよ、どう?」

「・・・・。」



この提案は、もしかして、協力者をお願いする、チャンス?
あの言葉を覚えていないみたいだし、頼むなら今しかないかも・・・・・。
いや、でも会ってまもない人にそんな事をお願いしても大丈夫かな?でも、これを逃したらもうない気がするし・・・・・。
お願いしなくて後悔するんじゃなくて、お願いして後悔しよう。うん、それがいい!!
なんかふっきれた私は彼の前に手を突き出す。



「お、お願いします。」

「うん。」



優しく握り返された手は思ったよりも大きかった。
ゆっくり手を離すと、にこにことした表情のまま私を見つめる男性。



「で、お願いなんだけど・・・・。」

「あぁぁ、先にどうぞ!!」

「・・・・・俺のは、君に買い物に付き合ってほしいんだ。」

「買い物、ですか?」

「うん。」



そう言うと男性は胸ポケットから手帳を取り出して開いた。
ちらっと見えたスケジュール表にはびっしりと文字が連なっていた。



「実は今度の日曜に甥が誕生日でね。」

「あ、昨日の・・・・。」

「そう。」

「恥ずかしい話なんだけど、その、あれぐらいの子の欲しいものが分からなくて・・・・。」

「・・・私にプレゼント選びを手伝ってほしい、って事ですか?」

「うん、そうなんだ・・・。」



そう言ってちょっと恥ずかしそうにそう言った男性は手帳をまた胸ポケットに戻した。
そんな彼を見つめながら、これから頼もうとしている私のお願いがなんだか物凄く筋違いのような気がしてきたな・・・・・。なんだかいたたまれない気持ちになってくる。
 
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