バックからスマホを取り出すと着信が。見れば景ちゃんからだった。どうしようか迷った挙げ句に通話を押す。
「・・・・はい。」
『遅い。』
電話に出るなり不機嫌そうな声の景ちゃん。
『何でいつも俺様の電話に出るのが遅せぇんだ、お前は。』
「い、いつもじゃないでしょ。」
『いつもだ。』
「私にだって用事があるの!!」
そもそもいつも変んなタイミングで電話してくるのはそっちじゃないか!!
・・・・とは勿論直接言えず。
そう言った私に景ちゃんはふんっ、と鼻で笑う。
『用事って、彼氏探しか。』
どき。
『ふんっ、まぁいい。』
「だ、だから、彼氏はいるって言ってるでしょ!」
『二週間以内だからな。』
「分かってます!」
私は言い終わらないうちに通話を切った。もう本当に何しに電話してきたんだ景ちゃんは。前に置かれた水を一気に飲み干す。
「もう、本当にタイミング悪いんだから景ちゃんは・・・・。」
「ごめんね、仕事の電話で・・・・。」
そう言って私の前の席に戻ってきたのは、あの男性・宍戸さん。
そう、今彼とお茶をしているのだ。
宍戸さんから電話があったのは昨日の夜。甥っ子さんの誕生日プレゼントを買いに行く事になり会おうという事になった。バイト帰りに会った宍戸さんはこの前よりもラフな格好をしていた。
「お仕事は大丈夫なんですか?」
「うん、大丈夫。今日休みが取れたものだから、急に連絡してごめんね。」
「いいえ。」
宍戸さんはふわっとした笑顔で笑うと私の前の席に腰掛けた。
景ちゃんにはない柔らかい笑顔だ。
「もしかして、その電話結婚相手から?」
「え、あ、はい・・・・。」
そうだった、今私は「借金の方に結婚させられそう」って事になってるんだった。
「何かあったら言ってね。これでも弁護士だから、お役にたてるかもしれない。」
「ありがとうございます・・・・。」
弁護士!?
そういえば初めてあった時にスーツにそんなバッチが付いていたような・・・・。
私はますます嘘を付いているのがいたたまれなくなってきた。
「それで、どんなプレゼントにしますか?」
「実は本当に何も浮かばなくて・・・・。」
無理矢理話を本題に戻すと、宍戸さんは腕を組んだ。
その間ウェイターさんがやってきて水を淹れてもらう。
「じゃあ、好きなキャラクターとかは?」
「特にこれといっては、いなかった気がする。」
「じゃあ好きな色は?」
「姉さんに聞いてみたけどこれも特にっていうのはないって・・・。」
宍戸さんの話を聞きながら私まで腕を組むと、彼は申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめんね、こんな感じで・・・・。」
「いいえ。」
「あ、そう言えば。」
宍戸さんはそう言うと組んでいた腕を解く。
何か思い出したようだ。
「赤ちゃんの頃から、俺のピアノだけは喜んで聞いてたな。」
ピアノ弾けるんだ。私も昔はやっていたけど今は弾けるかどうか危うい。
「じゃあ音楽系はどうですか?」
「CDとか?」
「おもちゃの楽器でもいいんじゃないですか?」
「楽器か・・・・。」
宍戸さんはそう言うと水の入ったグラスに口を付けた。それを見て私は立ち上がる。
「じゃあ、さっそく行きましょう!」
私はそう言って宍戸さんに笑いかけた。
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