「思ったより面白くなかったなぁ、この映画。」

「そうか?」

「って、隣で寝てたじゃんか。」

「寝てたけどよ、途中から見たらちょっとは面白かったぞ。」



日曜日。見たかったあの映画は上映開始から期間がたっていて見ている人もまばらだった。
隣でそう言ったのはバネ。私が買った映画のパンフレットをパラパラ捲りながらコーラを飲んでいる。



「ほらここ、出てくる怪獣がすげぇリアル。」

「ストーリー関係ないじゃん。まぁ、王子様役の俳優さんはかっこよかったけどね。」

「瑠璃だってストーリー関係ないじゃねぇかよ。」


ファミレスに移動した私とバネはさっき見た映画の話をする。サエがくれたものだけど、何だか連絡を取るのも気まずかった。樹っちゃんはお店が忙しいと断られ、ダビデには彼女ちゃんがいるし、剣太郎には・・・まだ早いし。そして考えた結果バネを誘う事にした。
いざ誘ったら「そう言うのはサエと行けよ」と言われたが、私が口を濁すのを見ると「仕方ねぇなぁ」と渋々OKしてくれた。



「そう言えばお前、ラブレター貰ったんだって?」
突然話が切り替わった。
いつものことだが、今日は心臓に悪い。
ようやく来たアイスにスプーンを差す寸前だった。



「・・・誰から聞いたの?」

「剣太郎。」

「やっぱり・・・。」

「昨日の朝言ってたぞ、その後樹っちゃんに怒られてたけど。」



私はアイスをすくいながらそんなバネを見た。後で覚えてろよ、剣太郎・・・・。



「ってか、サエと何かあったのか?」



水に手を伸ばした私にバネがそう言った。思わずジュースを倒しそうになった。



「・・・何で?」

「瑠璃が俺を映画に誘うなんてどうせサエ絡みだろ。」

「・・・・。」

「何だ、喧嘩か?」



バネは天然の癖に時々鋭い所を突いてくる時がある。
私は水を一口飲むと、アイスを口に運んだ。



「・・・まぁ、そんな感じかな。」

「お前ら分かりやすいよな、喧嘩すると。サエも昨日そんな感じだったぜ。」



サエもそんな感じだった?絶対にありえない、そんなこと。
私はスプーンをアイスに突き刺すと、さっきよりも多めにアイスをすくった。



「で、ラブレターはどうしたんだ?」

「断った。」

「名前書いてなかったのにか?」

「・・・そこはつっこまないでよ。」



私はアイスを口に運ぶと、バネの手からパンフレットを奪い取った。



「まぁいいけどよ、さっさと仲直りしろよ。」

「・・・・。」

「瑠璃は知らねぇかもしれねぇけど、あぁいう感じの時のサエはかなり面倒くさいんだからな。」


バネはそう言うとコーラを一気に飲み干した。
私はパンフレットをぱらぱらと捲りながら、溶け始めたアイスをぼんやりと眺めた。
面白くなかったのはサエのせいだ、と勝手に考えた。


  
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