放課後、帰ろうと下駄箱から靴を取り出した時だった。
ひらり。



「何か落ちたよ?」

「ん?」



先に靴を履いていた剣太郎が、そんな光景を見ながらそう呟いた。
足元に何か落ちた。拾うために手を伸ばすと、それが封筒だという事が分かった。
面には“雨宮さん”と書いてある。裏も見るが差出人の名前は書いていない。
それを見て剣太郎が途端に目を輝かせる。



「もしかしてそれ、ラブレターじゃないの!?」

「ラブレター?」



私がそう言うと、下駄箱の影からひょっこり樹っちゃんが姿をあらわした。



「まだ残ってたのね。いい加減帰らないと閉まっちゃうのね。」

「あ、樹っちゃん!瑠璃さんがラブ、」

「わぁぁ、剣太郎!」



慌てて剣太郎の言葉を手で封じると、樹っちゃんは困ったように眉を下げた。



「聞こえてたのね、ラブレターでしょ。」

「そうと決まった訳じゃ・・・不幸の手紙かもしれないし。」

「絶対ラブレターだよ!早く読んでみなよ!」



剣太郎の目がいっそうキラキラし始める。私はその視線にうながされるように封を開ける。封筒と同じような便箋を取り出すと手紙に目を通す。



「・・・・・・・。」

「どう、ラブレターだった?ラブレターだったの!?」

「こらこら剣太郎、そういうのを聞くのは野暮ってやつなのねー。」



剣太郎をなだめるように樹っちゃんがそう言って剣太郎の襟首を掴んだ。
手紙は・・・・・ラブレターというやつだった。生まれて初めてだ。
『ずっと好きでした。明日の放課後、学校裏の砂浜で待ってます。』
名前が書かれてない所を見るともしかしたらイタズラかもしれない。でも・・・・・こういう時は一体どうしたらいいものか。サエとかに聞けば分かるだろうか?ん、何でサエ?今は全く関係ないじゃないか。



「サエに見つからないようにした方がいいのね。」



私の考えを読んでいたみたいに樹っちゃんがそう言った。



「何で?」

「剣太郎。」

「わ、分かったよ〜、野暮でした。」



剣太郎はそう言うとぴょんと昇降口を飛び出した。
樹っちゃんはそんな剣太郎を見つめていたが私の方に向いた。



「サエには俺も言わないでおくのね。」

「まぁ、うん、よろしく。」

「サエは瑠璃に関しては過保護ですから。」



樹っちゃんはそう言うと剣太郎の後を追って歩き出す。
私は手紙をもう一度見ると、封筒に戻して鞄にしまった。
とりあえず明日の放課後学校裏の砂浜、忘れないようにしなければ。サエには・・・・樹っちゃんが言うように黙っていよう。うん。
そんな事を考えながら靴を履いた。
  
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