「佐伯君と雨宮さんって付き合ってるの?」



サエと出会ってからこのセリフを少なくとも100回以上聞いている。
そして私はこのセリフに決まってこう返す。



「付き合ってないよ。ただの幼なじみ。」



そして手紙を渡して欲しいと言われる事も多々ある。誕生日やバレンタインなんかは「渡しておいて」と言われ押し付けられる事もしばしばだ。
そして今も。ハートのシールで封をしてあるシンプルな封筒。可愛らしい字で“佐伯君へ”と書かれている。これがラブレターであるという事ぐらい中身を見ないでも分かる。



「はい、サエ。」



そして私はそれを決まってこう言ってサエに渡す。サエもサエで「何?」とか「いらない」なんて言わずに受け取る。
今回もいつものようにサエに手紙を渡し、サエもいつものように受け取る。



「いつも悪いね。」

「悪いと思ってたんだ。」

「そりゃね。」



たわいもない事を言いながらサエが封筒を開けるのもいつもの事だった。
無駄に男前と言われているだけあってちゃんと一通一通目を通す所はまめだ。



「お友達からでもいいので付き合って下さい、だって。」

「そっ。」

「・・・・隣のクラスか、ならいいかな。」



サエはそう言うと封筒共々ビリビリと破き始めた。
もまだ昇降口であり一目もあるのに。サエのその行動に驚いていると、粉ごなにした元手紙だったそれをサエは近くのゴミ箱の中に入れた。紙切れの最後の一枚までゴミ箱に落ちたのを見届けるとようやく口を開く。



「な、何も破かなくたって・・・・。」

「読んだしもらった子の名前も覚えてるよ?」



そういう問題じゃない気がする。あの天下の佐伯虎次郎はこんな人物なのだ。これが素のサエで、彼女たちの知るサエが作ってるものなのか。幼なじみの私でも分からない事の方が多い。



「サエは残さない派なんだね、ラブレターとか手紙。」

「大方ね。でも残してるのもあるよ。例えば、小学生上がる前に剣太郎から貰った手紙とか。」

「・・・・私も残ってる。」



私達が小学生に上がる前、剣太郎が私達全員に手紙と似顔絵をくれた。覚えたてのひらがなとクレヨンで描かれた似顔絵。きっとまだ大切なものBOXの中に入っているはずだ。



「後、瑠璃から貰った手紙は全部取ってあるよ。」

「嘘だぁ。」

「本当だよ。何なら2年生の時の授業でやった手紙持ってこようか?」

「ま、まだ持ってたの!?いい、いいです!!」



小学校2年生の国語の授業。隣の席の子にお手紙を書こうというのがあった。その時隣だったのは確かサエで。何て書いたのかまでは覚えていないが、恥ずかしい事この上ない。



「俺のも残ってる?」

「うーん、どうだったかなぁ?」



曖昧に言葉を濁すと下駄箱から靴を取り出した。
その後ろでサエが微妙な顔をしていたなんて知るよしもない。
  
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