「トリックオアトリート。」



この言葉をまさかそっちから言われるとは、予想外です。



「先輩、耳悪いんですか?」

「いや、いい方だと、自分では思ってるよ!」

「なら特別にもう一回だけ言いますわ。トリックオアトリート。」



目の前にいる財前はそう言うと私の前に左手を出してきた。
いや、確かに今日は10月の31日でハロウィンだけれども。去年のあれで財前はハロウィン嫌いだと確信したので今年はあえてスルーしようと思ってたのに。まさかの、まさかの・・・・・。



「か、仮装・・・・。」

「は?」

「仮装しないと貰えないんだよ!お菓子!」

「先輩はやっぱアホですわ、そんな決まりあるか。」

「だって、だって去年とか、私から言ったらめっちゃ嫌そうな顔してたじゃんか!それが何だよ、今年は何なんだよ財前!?ツンデレか?ツンデレのデレなのか?デレの歳なんで、」



言い終わる前に財前にほっぺをつねられた。地味に痛い。
財前はため息をついて眉間に皺を寄せると、ようやく私のほっぺから手を離した。



「・・・先輩がそないにコスプレフェチやなんて思っとらんかったです。」

「いや、別にそういうわけじゃないけど。」

「先輩がそれなら、しゃーないっすわ。」



財前はそう言うと来ていたパーカーのフードを被った。見ればそのフード、なんと猫耳が付いている。あっという間に(ちょっと目つきの悪い)黒猫に変身をしたわけだ。



「ざ、財前・・・・いつのまにそんなもの仕込んだの?」

「別に仕込んだんとちゃいます。アホな先輩らに無理やり付けられただけっすわ。」



正直言って、可愛いよ。うん。目つきが悪い感じがまた可愛いよ、うん。凝視をする私を他所に、財前は嫌そうな顔をするとフードを脱いだ。あっという間に黒猫はいなくなってしまった。残念。



「じゃ、改めて。トリックオアトリート。」

「・・・・・・・・。」



そいて最初にまた戻る。
私は急いで脳内検索を始めた。ポケットの中にあったのは金ちゃんと謙也にあげちゃったし、鞄の中に入れてあったのも白石と千歳にあげちゃったし・・・・・・・・・。



「ないなら悪戯でええですか?」

「ちょ、ちょっとまって!ある、多分、どっかにお菓子あるから!」



ポケットを急いであさり始める私に、財前が一歩、また一歩と近づいてきた。
あれ、これって去年と同じ展開?
鞄の内ポケットに手を入れると、奇跡的にチョコレートを発見!確かこれは小春ちゃんに貰ったやつ!ありがとう小春ちゃん!
私はそれを素早く財前の前に出すと、それを見た財前の眉間に皺が寄る。そして舌打ちをする。
私はそれの包みを取ると、チョコレートを財前の唇に近づけた。



「はい、お菓子。」

「・・・・・しゃーないっすわ。」


財前はそう言うとそのチョコレートを私の指ごとパクリと口にした。


\Halloween!/

2012/10/31
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