生かされた者達
審神者一行は無事審神者部屋へと帰還した。新たな刀である鶴丸国永を連れて。
もちろん審神者は般若顔の太郎太刀による強制的本格治療を施され、残りの二人はそんな主を可哀想な子を見るような顔で見守っている。


そうそう。何故審神者が顕現していないにも関わらず人の形へと姿を変え出てくることが出来たのかというと鶴丸曰く、「刀の姿で主がいつ顕現してくれるのか今か今かと待ちわびていたけど余りのぞんざいな放置プレイとびっくり危険察知能力(勘)が働いたから周りに漂う主の霊力借りて無理やり出てきたんだ」だそうだ。
じれったい思いを何度も抱かせてしまって本当に悪かったと思っているとこんのすけは謝り続けた。
ごめっ☆と茶目っ気たっぷりの平謝りだけした審神者の頭に大きなハリセンが降り下ろされたのは言うまでもない。
そんな鶴丸の【びっくり危険察知能力(ただの勘)】はとても優秀な能力(勘)であった。これから先もしかしたらこの能力(勘)は彼自身と同時にレベルアップしていくかもしれない。


「まぁ改めて、鶴これからよろしく頼むな」
「鶴丸殿よろしくお願いします」
「あぁ!すぐに強くなってあっと驚かせてやるさ」
「頼もしいお仲間でございますね!」


ようやく太郎による強制的本格治療が終わり私を開放してくれたのだが見事に腹から下が包帯でぐるぐる巻きにされてて下半身芋虫状態になっていた。腹…正確には鳩尾にしか怪我してないのに足や太ももにまで包帯巻き巻きのオプションがついてきた。歩けないし活きのいい魚みたいにビチビチとしか動けない。


「そうだ。お前たちに教えてやらねばならないことがあるぞ」
「?」
「なんですか藪から棒に」
「ふふん、まぁちょっと待ってなさいな」


足を動かすことも歩くことも出来ないから寝転んで縁側まで回転し、縁側の下に隠していた木の棒を3本程度引っ付かんでまた回転しなから元の場所へと戻る。
勿論その際に木の棒がバレないように気を付けながら。


「……そんな回転なんかして腹の傷大丈夫なのか?」
「鶴丸殿の言うとおり。そんな痛々しい行動をしないでください」
「ん?いや別に痛くないけど」
「「………」」


何でそっちが痛そうな顔するのだろうか。こんのすけに至っては頭抱えて唸ってるし。


「まぁそんなことはいい。君達3本の矢の話は知ってるかい?なに?知らない?なんてこったい仕方ないなぁー」
「昨日ご自分が教科書でその話を勉強したからって偉そうにしないでください審神者様。」
「ここに1本の木の棒があるじゃろ?」
「聞けよ!つか矢じゃなくて木の棒かよ!」
「1本だと簡単にペキッでポキッじゃろ?」
「何でじゃろじゃろ言ってんの!?擬音語混じってるし!それに簡単に折ってるけどその1本の木の棒の太さどのくらいあると思ってんの!?そんな簡単にペキッて折れないから!てか女性の腕で折れるような細さじゃないから!」
「1本だとすぐ折れる。でも3本集まれば………あ」
「私のこと無視し…………ぇ」
「折れましたね」
「簡単に折れたなぁ」
「……………」
「……………」


違う違うんだ何かの間違いだ。私のイメージトレーニングの結果だと3本揃ったら折れないはずだったんだ。
3本集まったら折れにくい、どんなものや敵が来ても乗り越えていけるのさ!どう凄くない?ドヤァをやりたかったんだ。
おかしいなぁ、もしかしたら意外と細っこい棒だったのかな……いやでも私の腕ぐらいの太さだしなぁ(1本が)
いやマジでどうしようこの空気。やっちまった感はんぱねぇ!!


「……………て、てへ☆(@∀@;)」
「いやいや!てへ☆じゃない!てへ☆じゃ!!顔文字も使わない!それ目ヤバイよどういう表現してんの!?いや審神者様もこの顔文字のような顔してる!ヤバいそっくりだ!!これだけ動揺してるの初めて見た!」
「主、星まーくをつけているのに何故冷や汗を掻いているのですか?」
「あぁ!今の審神者様に無粋なツッコミもどきは無しですー!」
「3本の木の棒折るなんざ主は馬鹿力だなぁ。もう少しか弱くたって俺は全然いいんだぜ?」
「なんなの!?鶴丸国永様は何の役なの!?何しょうがない困ったちゃんだな〜括弧ハート。みたいな顔して審神者様見てるの!?彼氏!?彼氏役なんですか!?リア充しちゃってるんですか!?」
「この私があんな嘘話に騙されるなんてな……こんなフィクションあって堪るか」
「あんたの存在がもうフィクションだよ!」
「狂ってやがるぜ」
「いやあんたがね!!」


折れにくいって書いてあったし、実際折れるわけないだろうと思ってたのに折れたんだ。この話を信じてたのにこんな結果になるとは……ばっさりと裏切られた気分だ。
私のこのピュアなガラスハートが砕け散りそう………………おい、おい誰だお前のハートはガラスじゃなくて鋼鉄だろって言った奴。お前そんなピュアじゃないだろゲスだろって言った奴出てこいよ。
いいか私はこの末恐ろしいブラック本丸で常々命を狙われ日々泣きながら怯えて過ごしてる小鹿ちゃんのような可哀想な存在だ。そんなプリティー小鹿ちゃんのハートは透き通ったガラスで出来てるんだぞ。ちょっとつつかれただけ………おい待てツッコミ入れられたり文句言うのならまだ分かるが今「(苦笑)」した奴マジで出てこいよ!それだけは許さん!断じて許さん!!恥ずかしいだろうが!!出てこいやぁぁ!!!










「新たな仲間ゲットだぜピッピカチュー」
「流すんですね?今までの大半をなかったことにするんですね?」
「家族が増えますよ」
「やったねさにちゃん」
「おいやめろ!馬鹿やめろぉぉぉぉぉ!!!!」
「ん?なんだよ変なことは言ってないぞ」
「おいぃぃぃ!その言葉知ってる人にはヤバいんだよ!それは冗談でも使ったらいけないんだよ!」
「説明しよう。今の会話で出てきたのは元ネタである「はいピーピーピーピー!!!」で、「ピピピーピーピーピーピー」なんだ。おい邪魔すんな」


私が説明してるのにこの狐邪魔しに来やがった。お陰でほぼ全ての説明が狐のせいで聞こえなくなってピー音しか伝わってないじゃないか。


「責任取りませんからね!何それ知らないって人もこの世にはごまんといるんですからね!」
「この優しい私が親切丁寧に教えてあげてるんだ」
「これを読んだ読者がぐぐって気分を害しても私たちは責任取れませんよ」
「そう!そうです太郎太刀様の言うとおり!責任取れないんですからね」
「そこは察しろ調べるなだ」
「わかるか!」


【知らない方は察してくださいお願いします】










「あー、下らんことばっか話過ぎたな。」
「主から始まったんだけどな」
「るさい。雨もやんだことだしちょっくら出陣すっかね」


大きく背伸びをすればバキバキと鈍い音が響く。ここ最近雨続きで動けなかったからどうやら体の方が鈍ってきているみたいだ。
包帯巻かれてるし歩けないけど腕動かせるからなんとかなる。
武器を持って転がりながら外に出ようとしたら何故か皆横一列に並んで襖の前に立ち、外に出ようとした私を逆方向に転がし部屋へと押し戻された。


「何してんの」
「主こそ何を考えてるのですか」
「出陣」
「ついさっき何があったか忘れたのか」
「3本の木の棒」
「審神者様その前です」
「え?便所?」
「「「怪我!!!!!」」」


3人揃えばなんとやら?よくわからんが3人ハモるだなんて仲がいいんだな。というより太郎がですます口調じゃないのが少し新鮮だ。顔は般若だけどな


「主、貴方は死ぬかもしれないぐらいの大きな怪我をしたばかりですよ」
「ピンピンでごじゃる」
「加州殿と何があったか忘れたのですか」
「痴話喧嘩?」
「は!?主と加州は想い合ってた仲だったのか!?そんな………」
「審神者様変な言葉使わない!鶴丸国永様も騙されないで!」


いつの間にか四次元ポケットからビックハリセンを取りだし、持ってない反対側の掌にスパンスパン…正確にはバシンバシン当てながら般若の顔してる太郎を誰か止めてくれないだろうか。というより何でそんなに怒ってんだ?痴話喧嘩は嘘だぞ本気にするな。まぁそんなこと本気にするわけないか。


「………認めません、私は絶対二人の関係を認めませんよ。」
「あ、本気にしてる」
「どうした太郎太刀様!?」
「お母さん認めておくれよー(流れに乗ることにした)」
「お、お母さんは私……」
「私は、お母さんではなくお父さんです!」
「ぎゃあ!パパン暴力反対!」
「父と母の違いだけでキレてる!」


お母さんって言ったらぶちギレてビックハリセン振り回してきたんだけどどゆこと恐い。
なんなの太郎のキレるポイントが分からないんだけど恐い。


「パパン」
「お父さんです」
「お父さん」
「良くできました」
「なら俺は旦那様だな」
「認めません」
「なんで!?」
「私を倒してからです」
「なんで!?!?」
「主よ、少し待っていて下さいね。大丈夫です、いなくなったりしませんから」
「主ー!!助けてくれー!!」
「あ、うん」


流れに乗って話してたら結局私はお留守番で二人は戦場ではしゃぐことになった。
私も鈍った体を戦場で解したかったんだがな


「「いってきます」」
「お気をつけて!いってらっしゃいませー!」
「いってらー」
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