どう〇する者達
お互いの村の見せ合いが終わり個々で自分の村の修復や発展などしていて(一人は伸びていた)気づいたら日が沈みかけていた
どうやらいつの間にか雨が止んでいたらしい
そして審神者はもう一つ気づいたことがある
それは………トイレに行きたい


気が抜けるとトイレ行きたくなることとかないか?
ゲームという興奮材料により気分が高まりゲームをしている間は何ともないが、ふと気を抜いたり休憩しようと画面から目を離したりするとトイレに行きたいという忘れていた感覚が戻ってくる時はないだろうか
今まさに審神者はその状態である
良いところまで進めることが出来たから少し休憩しよう。そう思ったと同時に急にトイレに行きたくなったのだ


「便所行ってくる」
「あんたは男か!女子でしょ!ダメでしょ!!」
「厠と言いなさい。もう少し恥じらいを持つのです」


女の欠片も無いセリフを言い、2人の言葉を最後まで聞かず審神者は襖を開け厠を目指す
離れの厠は本丸と繋がる丁度境目にある
何故そんな所に厠を置いたのか。理由はないただ適当に置いたのだ
そんなことよりもトイレだ。すっきりしたいのだ
急ぎ足で厠へ行き、用を足す






「出た出た」


女を捨てている審神者はすっきりしたお腹を撫でつつ厠を出る
もう此処には用が無い為、部屋へと戻ろうと足を部屋の方へと向けると先程から気配を殺して影に紛れ隠れていた存在が動いたのに気付いた
審神者は足を止め、殺気でもない緊張でも怒りでも恐怖を感じている気配でも何でもない。
色々なものが混ざり合った気配を振り撒く存在の方を振り向く
日が落ちていく中、柱の影に隠れて瞬きもせず此方を見つめている存在
影から出て来なければ誰だかは分からない。分かるのは一週間前木々に紛れて此方を見つめていた気配、そして濁った赤い目


審神者は何も言わずじっとその濁った目を見つめ返していたら影が審神者の前へと出てきた
濁った赤い目の持ち主。それは加州清光であった
審神者もある程度の刀剣達の情報は持ち合わせている。初期刀の内の一つで愛されることを望む綺麗好きの刀
しかし目の前の加州清光はボロボロだ
肌もボロボロ、爪のマニキュアも殆ど剥がれかけている。何よりドロドロに濁った目が異常だ


「…じ。あ…るじ。主」
「……」


主と連呼しながら此方に一歩一歩と歩み寄ってくる加州清光を止めるでもなくただただ動かず見つめ返している審神者


「主」
「こそこそ隠れて見ているだけかと思っていたら、意外にも出てくる勇気はあったんだな」
「主」
「加州清光殿」
「主」
「私はお前の主になった覚えはないよ」
「主」


審神者の呼びかけに一切答えず主としか言わない加州清光は着々と審神者との距離を詰める
その目は審神者を見ているが審神者を見ていない。それは審神者もすぐに分かっていた
何も映していないその瞳は暗く淀んで気味が悪い


「主。俺を…………愛して」
「…っ」


愛してと呟いた加州清光はそのボロボロの姿から想像できないほど強く審神者を抱きしめた
抵抗しない審神者を良いことに更に力を込める加州清光


そして審神者が少し身動いだ瞬間ブツリという嫌な音が響いた
その音は自身の真下から聞こえた。お腹の部分が熱く感じる
何かが腹に埋め込まれたかのような感覚がザシュッという音を立てその感覚が消えていく
感覚が消えたと同時に目の前で赤が舞う
加州清光の目を見つめながら審神者はようやく自分の身に起こったことに気が付いた
少し目線を下げれば彼の手には赤が付着した刀が握られてある
どうやら抱きしめられたと同時に腹を刺されたらしい
埋め込まれたかのような感覚がしたのは刀が突き刺さったから、ね
刀に付いている赤、腹から零れ落ちて床を染める赤。これは多量出血とやらか


体から一気に力が抜けスローモーションのように傾いていく自分の体
彼の目を見つめ返しながらクスリッと思わず薄ら笑いを浮かべてしまえば、その笑みに気づいた加州清光の目に恐怖の色が浮かび上がった


そう怖がることもないだろうに


崩れ落ちる自らの体を何処か他人事のように感じつつ、重力に従うように床に倒れ込もうとしていた
しかしそれは寸前で何者かの白い腕によって阻止され抱き込まれる
私の体を抱き込む白い腕の男の着物が私の赤で少し染まっていた
あぁもったいない。折角綺麗な白い着物を着ているのに私を抱き込むから汚れてしまっている


審神者はため息を吐き男の顔を見るべく顔を上げると、その男はただ真っ直ぐ自分を貫いた加州清光を睨みつけている
その鋭く尖った金の目が綺麗過ぎて自分の状況を忘れ見惚れてしまった


「俺の主を傷つける奴は誰であろうと許さない」


その見惚れる程の綺麗な金の目は殺意を抱いていた
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