えげつない者
事件は初日の夜から始まります。
人は寝ている時が一番の隙が出来るので結界を張る訓練をしましょうと、言ったのですが「面倒くさい」の一言で片づけられました。
太郎太刀様も男の身をしています。3人が共に寝るという案も太郎太刀様に却下されました。太郎太刀様は審神者様のお部屋の隣の部屋で寝るそうです。
私は審神者様に何かあってはいけないので審神者様と一緒に寝ることにしました。
寝る時間になり審神者様は部屋の電気を消したはいいものの、敷かれているピンクの布団に入るのではなく何故か懐中電灯片手に襖の開きの真正面に静かに座っています。
真っ暗の部屋の中、彼女のしたいことがよくわかりませんでした。
まるで何かを待っているかのようです。
少しの時間も経たない内に、襖の前に人影が出来ました。
私は驚いたのです。気配も何も感じることが出来なかったからもありますが、審神者様は誰かが来るということを予想していたからです
きっと刀剣様は気づいていないのでしょう。それもそうです部屋は真っ暗だし、月の光に照らされたご自身の影で審神者様の影が覆われている形になっているのですから
刀剣様が刀を抜く音が静かに小さく鳴りました。
暗闇の中、審神者様の肩が小刻みに揺れているのが確認できました。そして同時に今からすることを理解しました。
可哀想に刀剣様。ご自身が狙っている獲物は貴方の行動を見破っていて尚且つ声は出さずに大笑いしてますよ
目の前に審神者様が居ることを知らない刀剣様が中腰で静かに襖を開け部屋に入ろうとしました、が


「許可なく女性の部屋に入ろうとする悪い子だーーーーーーれだぁ?」
「きゃああああああああああああああああああ!!!!」


入ろうとしてきたのは堀川国広様でした。
彼が襖を開けた瞬間、ご自身の目に映り込んできたのは懐中電灯で顔を照らし不気味な声で問いかける審神者様でした
その不気味さに驚いた堀川国広様はか弱い女性の様な声で叫びあげ、走って本丸の方へと帰っていきました
女子かよ


「闇討ちつまんなっ。在り来たり5点」


酷な点数を付けた精神面図太くて頼もしい審神者様はその後すぐに布団に潜られて3秒もしない間に寝てしまいました
3秒以内で眠りにつける人間を私は初めて見ました
貴女自分の命狙われてる自覚在るのか?って位のスヤスヤ度。


次の日からラッシュの連続です
学ばない刀剣様達にえげつない制裁を加える審神者様。
え…どんなことがあったのかって?
そうですね例えば…






庭の一角にある畑を掃除していた審神者様に向かって馬糞を投げてきた鯰尾藤四郎。ソレを一切見ないで審神者様はシャベルで鯰尾藤四郎様に、いえ彼の顔面に馬糞をキャッチ&リリースしました。


「目がぁ、目がぁ、あああああああーーーーー!!!」
「お前は馬糞だよな2点」


目を押さえて膝から崩れ落ちた鯰尾藤四郎様に2点を付け作業を開始する審神者様でした




また、お腹が空いたからお昼ご飯を食べようと言ってきた審神者様の手には鰻重があり、何故か縁側に出て食べることになりました
太郎太刀様と私にも一つずつ鰻重が配られました。パッと見ただけでわかる高級さ。
口に入れた瞬間鰻が解け、口一杯に甘くて香ばしいタレと共に鰻が広がっていきます。頬が落ちそうなほどの贅沢な味。幸せに浸っていました
審神者様は急に鰻重を食べるのを止め、どこからか取り出した団扇片手に何かを待っているご様子。
すると先程から此方の行動を殺気も隠さず至る所から偵察していた短刀様達がいきなり飛び出し審神者様に向かって斬りかかってきました
審神者様はこれを狙っていたのか…斬りかかってきた短刀様達に向かって鰻重の香ばしい匂いを団扇で扇ぎ、ワザと匂いを嗅がせました。
短刀様達は皆一斉に腹の虫を鳴らせ苦しそうな表情でその場に倒れました
そうです。食べ物などいつの間にか与えてもらえなくなった刀剣様達は常にお腹を空かせています。そんな彼らに極上の鰻重の匂いを嗅がせたのです。
【短刀達は戦闘不能になった】


その光景を短刀達の後ろで見ていた一期一振様は極悪非道な審神者様により、自分の弟達がやられたことに怒りが爆発してしまい「弟達の仇―!!」と叫びながら審神者様の頭へと刀を振り下ろしました
しかし、極悪非道審神者。刀を振り下ろそうとしている一期一振様のお口元へ、一口で食べれるサイズにした鰻重を運びました。そうですあれです。あーんというヤツです。
ちゃんと審神者様もあーんと言いながら運びました。
極限状態まで陥ってる一期一振様のお腹は当に限界でした。彼は貰えるのだと思ったのでしょう。審神者様の頭パッカーンになる一歩手前で振り下ろしていた手を止め大きく口を開けました
いざ!いただきます!!
皆様お忘れなき様に。彼女はそんなお優しいお人ではありません
一期一振様のお口に運んでいた一口鰻重が乗った箸を瞬時に引き離し、審神者様の隣で一部始終観察していた太郎太刀様のお口の中へ入れました
おいちいおいちい。と無言で幸せそうに食べている太郎太刀様を見た一期一振様は真っ青な顔で倒れてしまいました
【一期一振は戦闘不能になった】


「なんで私が殺しにかかって来てる奴に高級鰻重一つ7000円するやつを食べさせてあげなきゃいけないんだよ」
「7000円…」
「よし次は焼き鳥にしてやろう。太郎炭火の用意」
「やめたげて」


一つ7000円もする鰻重を食べれて大満足でした。倒れている刀剣様達は…うん御愁傷様




またとある昼下がり、私と太郎太刀様が池の掃除をしている所にバッドと野球ボールを片手に持った審神者様が近づいてきました


「おーい太郎、野球しようぜ!」


どこぞの中島君のようなセリフをいう審神者様。彼女の後ろから審神者様目掛けて猪の様に突進してきている同田貫正国様
ボールを太郎太刀様に投げ渡してバッドを持ち、構える審神者様。その後ろの猪…いえ狸は着々と審神者様との距離を縮めていきます


「行きますよ主」
「来いや」
「必殺!【会心の一撃】我が一振りは暴風が如しボール!!」
「ださっ!!」
「おらぁ!君に見せてあげよう!ラ〇ュタの雷を!!」


ダサい名前に似合わないすっげぇ速度の遠慮ないボールが審神者様に向かって放たれました
身バレするから言っちゃいけないとある大佐のセリフを言った審神者様は思いっきり全力でバッドをフルスイングしました。審神者様との距離をゼロへと縮めれることに成功した狸は彼女の真後ろに立ち刀に手を掛けようとしていました。
はい、お察しの通りでございます。男には辛いものです
審神者様の真後ろに立っている為、当然の結果でございました
彼女がフルスイングしたバッドが同田貫正国様の股間に命中。精密な股間のみへの命中です。
キエェェェェェェアァァァッ!!!!!!っと雄たけびをあげ狸様の魂は肉体から離れていきました


「ホームラン。どうだこれがラ〇ュタの雷だ」
「ラ〇ュタの雷が股間に直撃…」
「主。ほーむらんはほーむらんでももうボールがどこに行ったのかわかりません」
「あぁそれなら大丈夫。きっと奴が受け取ってくれる」
「え゛…?ヤツ…?」


そう私は知らなかったのです。審神者様を狙っていたのが同田貫正国様だけではなく、本丸の屋根の上で審神者様に向かって槍を投げようとしていた御手杵様が居たことを。
投げようとしていた御手杵様の槍に目にも見えぬ速さで【会心の一撃&審神者様のお力による物理ラ〇ュタの雷ボール】が突き刺さったことを
一直線に自分の槍へと何かが飛んできて余りの威力に思わず槍から手を離し何事かと己の槍を見たら、槍の穂の部分にボールが刺さっていて、自分の存在に気付かれていたことと逆に殺しにかかってきている位の恐ろしい威力のボールに恐怖が最高潮まで上った御手杵様は現実逃避をするために屋根の上で気を失ったことなど私は知らなかったのです




ご立派な襖のある部屋に隠れ通りすがりの審神者様を襖ごと刺し殺そうとしていた厚藤四郎様の考えを先読みした審神者様は気配を消し襖一つ隔てて厚藤四郎様と対面していました。厚藤四郎様は審神者様の気配に気付かず、まだかまだかと焦っておられたのでしょうね。
対面することに飽きた審神者様は襖を思いっきりドンドンドンドンとリズミカルに叩き出し「フルコンボだドン!!!」、と最後に言い放ち手刀で襖を一刀両断しました。
そこには余りの恐怖に泡を吹き気絶していた厚藤四郎様が居たり…
隠れて待ち伏せしていた宗三左文字様の足の小指をピンピールで踏みつけたり…
機動力NO1のへし切長谷部様の斬りかかりを余裕で避けて前々から準備してた落とし穴に落としたり…
嵐みたいに暴れてくる次郎太刀様の目の前で沢山のお酒を見せつけながら飲んで精神攻撃したり…




キリが無いのでもうここで割愛させて頂きます。
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