此処に居るよ
審神者となって早三年。戦の仕方も何も知らないただの子供だった私が四苦八苦しながら皆の力を借りて、力を合わせてここまで築き上げてきた。
ポンコツで能無しだった私がようやく一人前と呼ばれるまでに至った。
そして、いつも傍で支えてくれて相談に乗ってくれる。いつもいつも助けてくれる一人の付喪神に私は恋をしました。
いつから恋をしたのか、なんて覚えていない。気づいたら彼に惹かれていた。
初期刀の清光君と初めて鍛刀した時に来てくれた彼はあの日からずっと私の傍にいてくれる。落ち着きがなく慌ただしいダメダメの私にいつも微笑んで手を差し伸べてくれる面倒見のいい人。優しいしかっこいいし、料理上手で綺麗な金色の目の持ち主。


私は燭台切光忠に恋をした。
叶う事のない恋をしてしまったのです。










「主はさ、いつになったら告白するの?」
「へぁ……?」


書類整理をしていた私の元へお風呂上がりの乱ちゃんがドライヤーを持ってやって来て髪を乾かしてくれと頭をぐいぐいと押し付けてきた。
そのかわいい仕草に整理をしていた手を止め、仕方がないなぁと言いながら彼の髪を手渡されたドライヤーで乾かしていた。乾かしている間、楽しそうな鼻歌を歌っていた彼が急に私の方を振り向いてニヤついた顔で上の言葉を言ったのである。
突然突拍子もないことを言われたものだからその言葉を私の頭は理解することが出来ず、思わず変な声が出てドライヤーを落としてしまった。
固まった私の為に乱ちゃんはゆっくりと一文字一文字区切ってもう一度同じ言葉を繰り返してくれたお陰でようやく理解することが出来た。


「こ、告白なんてしないよ…」
「えー!!何それつまんない!」
「えぇ!?」


赤くなってしまった頬を隠すように下を向いて告白しないと伝えると乱ちゃんはフグのように頬を膨らませポカポカと私の肩を叩いてきた。
つまんないとは…なんてことを言う子だ。主泣きそう。
そして乱ちゃんその顔最高に可愛いよ。主鼻血出ちゃいそう。


何故彼が告白だのと言ってきたのは私の恋する相手を知っているのと私の相談相手、でもあるからだ。
誰にもバレることなく隠し続けて心の内に秘めていた恋心を目ざとい彼に気づかれてしまった。
その後はもう大変だったのだ。
行く度行く度待ち構えていた彼に問い詰められ追い詰められ…
逃げれば捕まえられ、何も答えずにいれば大嫌いになるよと可愛らしい壁ドンで脅され…
傍から見たらカツアゲしてる人とされてる人って感じに映っていたに違いない。
毎日一時間おきに鶴丸さんもビックリの出現率に疲れた私は降参ポーズで乱ちゃんから逃げることを諦めた。観念して秘めた恋心を打ち明ければほら見ろそうだろうといったドヤ顔。主あの時の乱ちゃんの顔絶対忘れてやらないんだから。
私の恋心を知っているのは乱ちゃんだけだ。乱ちゃんはよく彼との近状を聞いてくるし、私ももう開き直って彼に伝えている。
でもまさかこのタイミングで言われるとは思ってもみなかった。書類仕事で疲れて構える暇もなく無防備の状態で聞いてしまったが故に、体が固まって軽く頭がショートし掛けたが…


「あーもうじれったい!いい加減告白しなよ!進まないよ!進めないよ!?覚悟を決めろ!男でしょ!」
「う…、乱ちゃんに何に言われてもこ、告白なんてしない!女だもん!」
「主の頑固者!臆病者!意気地無し!」
「ふんだっ!」


乱ちゃんに頑固だ臆病だ何を言われても私は告白するつもりはない。乱ちゃんが真剣に私の事を思って言ってくれてるのは痛いほど分かっている。
私は言わないんじゃない、言えないのだ
彼が…光忠さんが私の事を一人の女として見てくれていないことが分かっているから。私の事を主としてしか見てくれていないことを知っているから。
以前一生分の力を全て使って光忠さんに聞いたことがある。どんな女性が好きか、と。
顔全体が異常に熱かったからきっと茹蛸のような顔をしてたと思う。
私の一生分の力をフルで使った質問に光忠さんは間を開けずに「どんな女性でも僕は誰かを好きになることなんて絶対にないから」と爽やかな笑顔で言い切ったのだ。
その言葉を聞いたとき全身から血の気が引いたのを今でも覚えている。笑顔でそうなんだ、と言えた自分を褒め称えたい。よく倒れなかったな自分。
それなのに告白なんて出来るわけがない、玉砕するのは目に見えているのだから。
いや…玉砕はしないか。
彼は優しいから、きっと私の事を悲しませたくないからと告白しても応と答えてくれるだろう。
好きじゃないけど、主だから。主の為に、と。
相思相愛でもないのに恋仲になってどうなる?愛も何も無い冷めきった付き合いはどうだ?そんなの悲しくて苦しくて虚しいだけだ
だったらまだ切り捨てられる方がマシだ。それも十分辛いが
そんな思いをしたくないから私は告白なんて出来ない。言うつもりはない。


「燭台切さんは主の事好きだと思うよ。主としてじゃなくて女として」
「………乱ちゃんは優しいね。ありがと」
「ほ、本当だよ!僕にはそう見えるんだから!」
「うん」
「だからさ」
「それでも私はしないよ。隠し続けるって決めてるもの」
「主……」
「どうして乱ちゃんが悲しそうな顔するのよ」


優しい乱ちゃん。半乾きの頭を撫でればより泣きそうな顔をした。私を気遣うためにこんなこと言ってくれるなんて本当良くできた子だ。
直接ではないにしろ振られたあの時を思いだし思わず涙が出そうになるのを見られたくなくて必死に耐え、乱ちゃんに顔を見られたくなくて強制的に彼の体を後ろ向きにし再びドライヤーをつけて髪を乾かしていく。
耐えていた涙が堪えきれずポタポタと止めどなく彼の髪に落ちる。涙の所為で乾かしても乾かしてもキリがない。
泣いている事なんてきっと気づかれている。けど何も言わず黙ってされるがままになって泣かしてくれている乱ちゃんは本当にいい子だ。
あぁ恋なんてしなければよかった。
彼を好きになるんじゃなかった。
人間の小娘如きが神様に恋なんてするもんじゃなかったのだ。










好きだよ光忠さん。
貴方の全てが好きです。
でも貴方に伝えるつもりはないわ
貴方を困らせることもしないし言わない
だからせめて
心の中で貴方を好きで居続けることを許して欲しい
貴方に報われない恋した私を許して
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