『新たな可能性』episodeシエル1
「本日付で、極致化技術開発局所属となりました。シエル・アランソンと申します」


私が初めて此処ブラッドに配属され挨拶をした時、彼女…マシロは心底どうでもいいと興味なさそうな顔をしていた




皆笑顔で歓迎してくれているのに彼女だけは違った
そして副隊長に任命しようとした隊長の言葉を一刀両断した


彼女の奇行に興味が湧き気づけばいつも彼女を目で追っていた


私から見た彼女の第一印象は“怖い”だった
今は尊敬する同僚であり友達だ


基本的に彼女は何も話さない。話しかけられても、ハイかイイエ
彼女は私達としっかりと線引きをしていた
話かけても一歩…いや何十歩と心の距離を開けて答える
彼女にモヤモヤが積もっていった


初めての任務の時も大いに驚かされた
私は任務の時はかなり冷静でいる方だ。焦りは禁物。冷静に状況を確認し対処することが大切だ
そんな私の思いを彼女は大いに裏切る
任務地点に着くとすぐに彼女は居なくなる。気配も無く静かに。驚いて他の者に目を向けると彼らは彼らでアラガミと交戦していて忙しそうだった。
なんとか敵を倒しつつも彼女の所に行くと彼女の目の前にはアラガミの山。斬ったら投げ斬ったら投げを機械的冷静に繰り返している彼女を見たときは恐怖を抱いたものだ


大きな巨体を転がしながら突っ込んでくるコンゴウを一歩も動かず欠伸しながら蹴り飛ばし軌道の流れを変えさせ瓦礫の山に埋もれさせ撃沈させた時は人間の、いやゴッドイーターの域を超えていると思った
こんな荒業を近くで見せられて(本人にとっては至って冷静な攻撃)冷静でいられますか?否、無理です。


そんな彼女は他人に興味がないのかと思えば、任務中さり気無く沢山のフォローをしてくれるのだ。お陰で此方は戦いやすく最小限の怪我で帰還することが出来る


戦闘能力も判断力も何もかも高い彼女に憧れ尊敬するのに時間はかからなかった
そして、友達になりたいと思った
共に笑いあい、共に助け合い意思疎通する。そんな友達が、いや親友になりたいと


でも彼女はそんなこと思ってもいないのだろう
私達は彼女を見る
彼女は私達を見ていても見ていないのだ
その目は私達を拒絶している


意を決して友達になってくださいと言ったときも彼女の目は冷たいままだった
その冷たい目でいいよと言われたとき、嬉しさよりも悲しさが勝ってしまった
けどそんな悲しさも一瞬で消え怒りで染まってしまったが


それは友達になれた瞬間すぐに私の事をさん付けで呼んだことだ
私の中の何かがプツンと切れ沸々と怒りが込み上げてきた


呼んで欲しかったのだ。彼女にシエル、と呼び捨てで
怒った私を見て流石に焦ったのだろう。彼女が無表情のまま表情筋は変えずアワアワした。
顔色変えずアワアワする彼女を見て心の中でフフッと笑ってしまった


未だに私の事をシエルさんと呼ぶのでお互い無表情の攻防戦が始まることがよくある






ここ最近彼女をずっと観察していて気付いたことがある
彼女は重度の器用不器用なのだ
表情は相変わらず無表情だが醸し出してる空気で少しではあるが彼女が戸惑っていたり悩んでいたり悲しんだり喜んだり怒ったり…一緒にいることで少しだけわかるようになった


そして彼女が無意識に他人に助けを求めているとき、彼女は自分の腕輪を掴んで握りしめる
それは困っている時もだ
確か…アリサさんという方に出会ったとき、極東支部に着いたとき、サカキ支部長や藤木コウタ隊長に会った時も彼女は腕輪を握り締めていた
何かに耐えるように


私は彼女を救いたい助けたい
極東支部の人たちが彼女に何をしたのかそれはよく分からない
大切な友達を傷つけたことは許せることではない
けれど…それ以上に彼女には極東支部の皆と仲良くなって欲しい
笑ってほしい


大切な友達であるマシロの為に私は支えて力になりたい
ゆっくりでいいから私にも心を開いて欲しい
呼び捨てで呼んでほしい


その為に私は今日も彼女の傍に行き話しかける
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