検証実験
―sideギル―




静かに、懐かしむように話していたジンを俺はただ見つめていることしか出来なかった
ジンとマシロの出会いは楽しいものでも、明るいものでもなかった
悲惨な出会い
それでもジンにとっては大切で救いのあった出会い
一部だ…たった一部の過去だ
でも、こいつはその時からアイツの為に生きてきた
アイツの異常な強さはその時からあったのか
何故アイツは何故血塗れだったのだろうか…
何故アイツは極東から消えたのだろうか…
疑問は晴れない
曇り靄がかかったままだ


マシロは極東から何かしらの理由で消えた
今度は俺達の前からも消えるのではないかという不安がよぎる


ジンはずっとアイツの事だけを考えていた
俺だってアイツを守りたい
アイツのことを少しずつでいいから知っていきたいと思う






「てことでおしまいおしまい」


終始ジンは明るい声で話をしていた
その間俺達は神妙な何とも言えない顔で話を聞いていた
それはそうだ
想像していたものと180度違っていたのだから


「お前の話を聞いていて疑問が生まれたんだが」
「うん。何だいジュリウス」
「マシロは極東を去ったんだろう?なら何故アイツを想うお前が極東に行くように言ったんだ?」


確かに
俺も思ったことだ
マシロ一筋のお前は速攻で極東に行くことを阻止するはずだ
なのに何故


「ん?だって確認してきたからね」
「どういう意味?」
「言っている意味がよく…わかりません」
「俺、この3年間何回も極東に足運んでるのよ」
「「「は?」」」
「「え?」」
「あん時からかな…ブラッドに入ってからもちょくちょく行ってたしな〜」
「おい…どういう…」
「まぁ忍んで行ってたから向こうの人たちは俺が来てたことなんて知らないだろうけど。何度も足運んでアイツらの変化?てか見てたんだよ。そんで結構反省してるっぽいし、このまま逃げてばかりだと姫の為にもなんないからなって思ってな」


いつの間に極東に…
いやまて思い当たる節はいくつもあった


「ヘリ勝手に使って長い間消えたり、旅に出るなんて言っていた理由はそれか?」


この際、何故アイツがヘリを操縦できるのかということは置いておく
思い当たる節をジンに問う
するとジンはニンマリと笑った


「そうそう!そゆことよ!」
「何がそゆことだ!もっと早くに言えよ!」
「あん時に言ったところでお前らには何にも伝わらなかったんじゃない?」


痛いところを付いてくるジンの言葉に俺達は黙り込む


「今なら言っていいかなって思ったしな。それに姫に極東行くことを伝えなかったのは、アリサちゃんに出会った直後にあんなこと伝えたら今よりも暴走してたと思うぜ?」
「あまり変わりがない気がするんだが」
「いや〜、あん時に言ってたら今以上にヤバかったと思うよ」


アリサとか言う女に会った時、マシロは顔を真っ青にし泣き気絶してしまった
確かにあの時に言っていたら大変な事にはなっていただろう
極東を去ったのは彼女の所為なのか?
それともまだ何かあるのだろうか…


ジンはアイツに何が起こっていたのか知っている
だが肝心な事は一切言わず所々ぼかして話をしていた
あえて自分からは言わないつもりなのだろう
きっとマシロ本人の口から言わせる気なのだろう
けれどマシロは何も言わない
だからわからない


「はいはい!この話しゅーりょー!!そんで?シーちゃん行くの?」
「え?」
「何か姫に聞きたいことってーか付き合ってほしいことがあんじゃねーの?」
「あ、ありますが…何で?」
「んふふ〜。俺ちゃんには何でもお見通しなんだよ。それに今から姫が行動に移すことが容易に想像できてるから早めに行かないとちょいとヤバいしね」
「え?一体どんな行動を?」
「ん?まぁまぁほら行くよ〜」
「あっちょっと」


早々に話を切り上げて俺達を残し、シエルを連れてマシロの元に行った
この変な空気から解放されたせいかため息がこぼれてしまった
マシロは何を考えているか分からないがそれ以上にジンは何考えているかわからない
俺はマシロのこと何も知らないな…
当たり前か、俺から関わろうとしなかったのだから
俺は、アイツにどう接していけばいいのかわからない


ふと周りを見ていると、暗い顔のままのナナ、頭抱えて唸っているロミオ、何やら考え込んでいるジュリウス
もしかしたら、俺達は今皆同じことを考えているのかもしれない


もう一度ため息をこぼす
今ウダウダと考えていても仕方がない
俺達が、アイツが動かないと意味がない
今はあの2人に任せるしかないな
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