大切なもの
―sideロミオ―




「じーーーーーー」
「じぃーーーーー」


俺とナナはロビーのソファ―に座ってマシロを穴が開くほど見ている
何で見ているかというとここ最近、マシロの無表情が少し変化するようになったからだ
多分本人は気づいていないだろう
ほんの少しの些細な変化だ


「やっぱり、ちょっと柔らかくなった気がするなー」
「だよなー。このまま笑顔になってくれたらなー」
「ねー」


あいつは笑顔が似合っている
俺やっぱりそう思うんだよ
堅苦しい敬語もなくして、笑顔で笑いあって欲しい
そんでさ、


「ロミオ。今日も頑張ろうね」


なーーーんて言われたいなー
あぁダメだダメだ!
想像しただけでにやけてしまう


「あっシエルだ!」
「すっげぇ、一直線にマシロの元に行った…」
「マシロに懐いている!」


「お、おはようございます!マシロ!」
「ぉはようございます…」


さすがのマシロも驚いたみたいだ(表情はほとんど変わっていないけど)
エレベーターから降りてきたシエルが脇目も振らず自分の所に来て真っ赤な顔して挨拶して来たら
そりゃびっくりするよなー
でもなんでシエルの顔真っ赤なんだ?


「シ、シエルがマシロを呼び捨てに!」
「一気に仲良くなってんな」
「う、羨ましい!」


「シエルさん」


「あぁ!マシロがシエルを"さん"付けで呼んだからものすごく怒ってる!」
「怒るシエル初めて見た!」


シエルとマシロ、お互い無表情で激しい攻防戦が始まった
これは中々に終わらないだろう


俺達は攻防戦を横目に2人からちょっと離れた所にいるジンをジト目で見つめた
ジンを、というかジンとその周りに群がっている女の子達をジト目で見つめたと言った方が正しいだろう


「相変わらずですねー」
「相変わらずだなー」
「なんで副隊長ってモテるんだろー」
「そりゃやっぱり」


イケメンだからだよなー


「黙ってたらカッコいいのになー」
「黙ってなくてもカッコいいけどなー」


「ねぇジン。今日は私と遊ぼうよ」
「ダメよ。今日はアタシとよ」
「んー。勝手にしろ」


男の俺でもかっこいいと思うほどのルックス。身長も高いし顔もいい。
そう普通にしてたらかっこいいんだ


「ジン。キスして?」
「してほしいなら自分からしてこい」
「んもう意地悪っ」
「面倒くせぇ。するならさっさとしろ」
「んー。ジン大好き♪」


「なんかさー」
「なんかなー」
「「凄くムカつく」」


通常時のジンはいつも女を侍らす…いや勝手に女の子たちが寄ってきてハーレム状態になっている
別にジンは何かをしているわけではない
ジンは動かず、女の子たちが勝手にジンを好き放題している
来るもの拒まず、去る者追わず(本人は一切動かない)
それがジンのモットーらしい


別にジンが羨ましいとか思ってない
思っていない
本当に思っていないけど、ちょっと思っています
モテる男が羨ましいです


「なんでマシロの前だとカッコよくないんだろう」
「変態に変わるもんな」


そう。マシロの前だとカッコいいが変態へと変わるのだ
モテ男の欠片すらない、ただの変態男になる
むしろこっちの方(変態)が本当のジンなのだと最近判明した
最初は自分に靡かない、むしろ毛嫌いしているマシロが新鮮で、中々落ちない彼女を落とそうとしているんだと思っていたが、どうやら違ったようで
本気で彼女に好かれようと奮闘しているらしい。だがしかし…だがしかしだ


「マシロにもカッコいい所見せればいいのに」
「変態の所しか見せてないからな」


どんなに女の子達が寄ってたかっていても見向きもせず、マシロを見つければ女の子達を押し退け一目散に駆け寄っては吹っ飛ばされている
ここ最近、何とかして彼女のパンツを見ようと必死に画策しているその姿はとてもモテ男とはいいがたい大変滑稽な男と成り果てている


「私やっぱりジンはバカだと思うんだよねー」
「だな。バカだな」


そんな言いたい放題言われている張本人であるジンは、未だ彼女の存在に気づいていない
彼女の存在に気づいて駆け寄るがマシロではなくシエルに吹っ飛ばされるのは後5分後のお話
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