嫉妬と憧れの過去
見たってどうしようもないのに、見る必要すらないのに…私は気づけば彼女を目で追っていた。そして最弱の彼女が第一部隊に居ることが出来る理由がようやく理解できた。
頭の回転の速さと指示の良さだ。
確かに彼女は弱い。けれど瞬時に策を練り指示を出す、全てを見渡す視野の広さ。
私達よりも優れた頭脳を持ち合わせていた。
何度努力しようと彼女を超えることは出来ないだろう。
私達が円滑に行動できたのも、聞くのもくだらないと思っていた指示のお陰
私達がすぐに敵に気づくことが出来たのも、視野の広さと態と発せられた叫び声のお陰
私達が怪我なく帰還できていたのも、彼女が自ら囮になって攻撃を受けていてくれたお陰


彼女は最弱なんかじゃない。弱くなんてない無様でも哀れでもない。
強くて誰よりも優れた人だった
彼女の全てが見えたとき彼女に惹かれ、憧れた
彼女の様になりたいと、彼女の持つ力が欲しいと…
彼女に対する思いが一変した。






素直になりたい
謝りたい
支えたい
褒めて欲しい
認めて欲しい
笑いあいたい
けど、傲慢で最低な私は思っていることと全く違うことを口に出してしまう。
そして何度も傷つけ後悔してしまう


彼女が自分自身を囮にして傷つくのが怖かった。
自分を大切にしてほしかった。
そのことを伝えたかっただけなのに私は…


「私より弱いくせに!私のことわからないくせにわかったような口聞かないでください!」
あなたは私なんかよりも強い!もっと色んなことを教えて欲しい!あなたの頬を叩きたかったわけじゃない!!


「迷惑なんですっ!」
迷惑なんかじゃない!


「私の前に出ないで!」
もうこれ以上怪我しないで!


違う違う違う!私はこんなこと言いたいんじゃない!どうしてあんなこと言ってしまうの!?どうしてもっと素直になれないの!?
傷つけたいんじゃない
悲しませたいんじゃない
泣かせたいんじゃない


当たり前じゃないか…酷い事しか言わないのに傷つける言葉しか言えないのに、何が認めて欲しいだ褒めて欲しいだ
最低な自分に嫌気がさす






素直になれないまま私は完璧な指示を出す彼女に理不尽な嫉妬を抱き始めてしまう。
自分の持っていないものを持つ彼女が羨ましい
無い物ねだりなのは分かっている、けれど羨ましいのだ


違う。本当は嫉妬して欲しかった
才はないが力のある私に嫉妬して欲しかった
怒って欲しかった
いつもの困った顔じゃなくて嫉妬して怒って欲しかったのだ
私ばかりが彼女を追い掛けてしまうから、彼女にも追い掛けて欲しかった
言い返して喧嘩したかった
負けないから、とライバル宣言して欲しかった


ワガママで理不尽な私は理不尽な思いを彼女にぶつけてしまう






そんな私は、彼女が変わっていったことなど気が付かなかった
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