嫉妬と憧れの過去
私は旧型よりも優れた新型に適応した自分に誇りがありプライドがあった。
自分より優れた者はいない。自分の様に戦える者はいない。
絶対の自信
私にはそれがあった。






ロシア支部から極東へと移動になり、第一部隊のメンツに挨拶をすることになったが殆ど旧型ばかり。私の様に優れた者はいなさそうだった。
しつこく話しかけてくる男も考え方が馬鹿すぎて相手をするもの面倒だった。もちろん仲良くするつもりなんてない。ただ少し…
私の顔を見て一瞬驚愕しすぐに笑顔を張り付けた彼女が気になってしまった。
何故私の顔を見て驚いたのか…
知り合いでも顔見知りでもない、見知らぬ彼女は私の何に驚いたのだろうか。
その時はその程度の疑問で終わった。






サカキ博士の講習授業の時、アラガミとの共生という話が出た。もちろん私の答えはNoだ。アラガミとなんて共生出来るわけがない。共生する前に食い殺されてしまうのがオチだろう。
だが私達との考え方が違う人が一人いた。常に笑顔を湛えた彼女だ。
彼女は「時間はかかるだろうけど、出来るんじゃないかな…。本能だけでなく、知恵を持ったアラガミが出てくるかもしれない」なんて言い出したのだ。その答えに満足したのは博士ただ1人だった。
私は、彼女は頭がおかしいんじゃないかと思った。そんなおめでたい頭でよく第一部隊に入れるものだ。
私の中で彼女はバカな人だと位置づけた






新型同士での任務で私の中での彼女の位置づけが変わった。
極東支部にいればよく聞く噂が本当だったとは…
彼女は何もできない足手まといだった。
もう一人の新型は悔しいが神機の扱いが上手くて十分な実力を持っていた。だがもう一人の新型の彼女は、新型である私が恥ずかしいと思うほどになにも出来なくて目障りで邪魔で…無様で。
アラガミと対峙すれば怯え泣き出す。攻撃を当てる間もなく吹き飛ばされ怪我を負う。
視界に入れることすら嫌になるほどの最弱っぷり。
もう一人の新型が全てと言っていいほどフォローし、慰める
ごめんねと言うならそれなりに努力というものをすればいいのに、誇りもプライドも無い彼女に無性に苛立ちがふつふつと沸いてくる。
何故こんな最弱の、真っ先に死んでもおかしくない彼女を第一部隊に入れているのだろうか。
私は彼女を軽蔑していた。






私のせいでリンドウさんが取り残される事件が起きたときも…私の所為だと分かっている。
でも、彼女に自分のあんな姿なんて見られたくなかった。
そう…あの時も…
私とユウが新型同士の感応現象でお互いの気持ちが流れ合って、気が付けば私はユウに忘れていた過去を打ち明けていた。彼女が居ることを知らずに。
「あの…」という声が泣き崩れていた私の耳に入った瞬間、勢いよく声のする方を振り向けば壁際に彼女が困惑した顔で立っていた。
彼女に気が付かなかった、弱っている自分を見られた、過去を聞かれた。
冷や汗が背中に伝うのが生々しく感じられた。
彼女に弱い部分なんて見せたくなかったのに、こんな自分を見られたことが嫌で嫌で!
だから


「アリサ…あのね…」


彼女に何かを言われるのが怖くて、私の肩へと伸ばしてきた手を思いっきり叩き落とした。


「っ!?」
「気安く私に触らないでください!」
「アリサっ!あの…私」
「っ…私の過去を知って何がしたいんです。バカにしたいんですか侮辱したいんですか?」


彼女は何を言うつもりだったのだろうか。バカにしていた私を今度はバカにしようと思っているのか、侮辱して情けない私を指さし笑いたいのか


「違うっ」
「私より弱いくせに…最弱のくせに…」
「…」
「私と同じ新型だと信じたくないんです!あなたみたいな!あなたみたいな弱い人が私と一緒だなんて許せない!!」


許せなかった信じたくなかった同じ新型であるという括りに入れられたくなかった。
勢いよく心の中で思い続けていたことを吐き出せば胸の内がすっきりとして後悔した。
酷い事を言ってしまった、けれど言い切った癖に今さら謝るなんて私のプライドが許せなかった。小さな小さなバカみたいなプライドがそれを許せなかったのだ。
彼女は泣きそうな顔して笑い、病室から去って行った。
残ったのは心の中に落ちてきた鈍い痛みだけだった。






復帰した後、一人で反省し少しずつ皆を見ていこうと思ったのだ。すると見えていなかったものが見え始めた。いや本当は見えていた、私が…私自身が見ようとしていなかっただけで。
ただそれでも彼女とのギクシャクした関係は続いていた。見たってどうしようもないだろうと高を括り心のどこかで今だ彼女の事を馬鹿にしていた。
ほら、あれから何日も経っても相変わらず彼女は弱くて惨めだ。


そう…惨めなはずだった
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