音が変わる
次の日からブラッドの皆は動き出した
過去を克服する為に、逃げてばかりの彼女を向き合わせる為に


昨日は何もなかったと思わせるぐらいいつも通りの無表情に戻ったマシロの手を掴みジンはラウンジへと向かう。道中何度もジンを蹴ったがものともせず突き進んで行くので早々に諦め引きずられるようにラウンジの中へと入って行った
ラウンジの中にはカウンターの近くに立って何かを待っている会いたくない人物その一がいた
彼女はジンに気づき笑顔で挨拶しようとした、しかし引きずられている私を見た瞬間彼女の笑顔は固まった
いやしかしこれはどういうことだ?
なんで彼女がいる。確かジンさんは私にサテライト拠点の支援のお手伝いを一緒にして欲しいと頼み込んできたからまぁそれならと了承したのだ
……………了承したと同時に迷いなくラウンジに突き進んだジン。そしてラウンジの中には彼女1人……
こいつ謀ったな


確信犯であるジンのケツに蹴りをお見舞いすれば「いやん姫のスケベ変態っ!」とハートマークが付きそうなほど甲高い声で言うものだから思わず本気でケツそぎ落としてやろうかと殺意が湧いた
キャピキャピ言いながら固まる彼女の目の前の席に私を強制的に座らせ自分も隣に座る。手は放して貰えない。力強く握られ逃げることは不可能となった
大人しく座るしかないが私は彼女の方を見るつもりはない。話すつもりも毛頭ない


「あ、ぁ…あの!」
「よーし自己紹介よろしくっ!」
「え!?」
「だってあんまり話をしたことないだろ?君の事詳しく教えて」


何かを話しだそうとした彼女の言葉を遮り自己紹介してと彼女に言い出し始めた
私はサテライト拠点の支援の話なんか受けなければ良かったと後悔している
アタフタと慌てる彼女は私とジン交互に見て戸惑っていたが意を決したように聞きたくない自己紹介を始めた


「それでは改めて。アリサ・イリーニチナ・アミエーラ少尉フェンリル極東支部、独立支援部隊クレイドルの所属です」


ここで彼女の自己紹介にふと疑問が浮かび上がった
第一部隊…ではない?独立支援部隊クレイドル?


「私達クレイドルは、人々の安息の為に支部の枠組みを越えて、広域的に活動する組織です。誰もが手をこまねいて見ているしかない問題に対してまずは一歩、解決に踏み出す…そんな活動をしています」


たった三年でそんな組織が出来ているとは、ね
そしてそんな組織に彼女が入っているとは驚きが隠せない


彼女は言いづらそうに弱弱しく語りだす。視線が感じるからきっと私の方を見ているのだろう


「私…元々極東支部の第一部隊に所属していたんです…マシロと一緒に」


ピクリと反応してしまった私をジンは見逃さなかった


「マシロが居なくなった後、クレイドルの組織が設立してゴッドイーターとして戦いながら、サテライト拠点の支援と新設を行う…そんな活動をしています」


ゆっくりと親切丁寧に教えてくれる彼女に苛立ちは募る


「今日はジンさん。そしてマシロ。おりいってご相談がありまして…」
「君たちが相手にすることが出来ない感応種の討伐なら俺達ブラッドの出番だ。よろこんで手伝うよ。なー姫」
「………私は抜けます」
「!?マシロ!」
「姫?俺達にしか出来ない仕事だぜ?」
「あなた一人でも十分でしょう」
「俺一人でも限界ってのがありましてー」
「煙草吸って暇を持て余している位なのですから大丈夫でしょう」
「あん言い返せないっ」
「マシロどうか!」


席を立って二人に抜けると言えば引き止める為に彼女が私の腕を掴もうとする
その瞬間過去のある場面を思い出してしまい、伸びてきた彼女の手を叩き落とした
過去に彼女が私にしてきたことを私はしてしまった
けれど後悔はしていない。条件反射という物だろう


「マシロ………?」


目を閉じれば彼女にされてきたことが次々に浮かび上がる
同時に今まで溜まっていた苛立ちも募る
そうあの時の私ではない。今の私はあの時よりも弱くない
だから彼女もあの人たちも怖くない


ここに来て初めて彼女と目を合わせれば彼女は大げさなほどビクリと肩を震わせた
はっ、と思わず笑いが出てしまいそうになった
何故貴方が怖がる?自分がしてきたことの一つをやり返されただけで怖がるなんて
あぁなんて馬鹿馬鹿しい


「サテライト拠点の支援はしたいです」
「なら…」
「でも貴方が居るから嫌です。貴方と行動を共にしたくないし貴方と共に何かをやりたくない」
「っ!?」


はっきりと告げれば彼女は顔を青ざめる
酷な事を言っていると思う?


「昔貴方に言われた言葉をそのまま返します」


2人を置いて私はラウンジを出ていく
酷い事など言ってはいない
3年前に言われた言葉をそのまま本人に返しただけだ
あの怯えよう、きっと自分が言っていた言葉だと気付いているのだろう
あの時の様に言われっぱなしになるつもりはないし彼女に従う気も無い




だから彼女の名も呼ぶつもりもない
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