前を向いて
狼少女――その言葉をハルオミさんの口から聞いたときは焦ってしまっていたが少し時間が経てば落ち着きを取り戻せた。
だって結局変わらないのだから。その名で呼ばれていたことも嘘つきだという事も…彼に知られていても
あの後、私が落ち着くまで待ってくれたハルオミさんは頭を下げてお願いをしてきた
そのお願いはギルと自分と共に因縁の赤いアラガミを倒して欲しいとのことだった
最近赤いアラガミがここ極東付近で目撃されている。今がチャンスなのだ、頼むとハルオミさんはそう言い頭を下げたのだ。
何故私に言うのかよくわからないがあれだろうか…狼少女と呼ばれたくなければ付き合えと言う事だろうか…
別にそうだろうと違うだろうとどうでもいいことなのだが。だがこれは私にとっても良いチャンスなのかもしれない
もう一度近くであの赤いアラガミを見たいと、戦ってみたいと思っていたのだ
彼の誘いに乗ればあの赤いアラガミと戦えるだろう
本当ならば一人で行きたいところだがどこにアラガミがいるのとか情報そのものが私には無い為、ついて行く方が確実に出会えるだろう


いいですよ、と言えば彼は顔を輝かせありがとうともう一度頭を下げた
彼からしたらギルさんとハルオミさんの過去を聞いた自分が優しさから、そして少し卑怯にも過去の自分のあだ名を出したことで仕方がないから共に戦おうと言ってくれたのだと思っているのかもしれない
もしそう思っているのだとしたら申し訳ないが違う
私はそんなこと思ってもいませんからね




明日赤いアラガミの討伐に行くぞと言われていたのでエントランスで待っていればハルオミさんではなくギルさんが私に近づいてきた


「マシロ、話がある。これは俺の問題で、俺がやるべきことだ…これ以上関わるな」
「…約束しましたので」


そう言えば彼は苦虫を潰したような顔をする
ただ私が赤いアラガミを倒したいからです、と言いそうになってしまったが言えば面倒くさいことになるだろうと思ったので言うのをやめた
そこにタイミングよくハルオミさんが現れた。きっと出るタイミングを窺っていたに違いない。


「あー、お取込み中の所悪い!マシロちゃんは、俺が巻き込んじまったんだ」
「ハルさん!」
「ギル3人で行こう」
「いくらハルさんの言う事でも…!」


話が長くなって収拾つかないなら凄く面倒だが手当たり次第に戦場を駆け回ろうと思い回れ右したら肩をガッとギルさんに掴まれました。なん…だと…!?
これはまだ話が終わってないから行くな!という意味なのか、関わるなとか言いつつ来てほしいツンデレのデレでの意味なのかわかんねーぜ
しかも掴み方が可愛いんだ。最初はガッとされたが徐々に少しだけ力を入れてギュッギュッと服を引っ張るように掴んでくるんだ
なんなんだ!?天使なのか!?ツンデレなのか!?そりゃそんなことされたらもう一度回れ右して元に戻りますわな。戻らないわけないですわな
しかもハルさんこの光景見て必死で笑い耐えていますからね。口元プルプルしてるのバレてますから。顔キリッとさせてても口元で台無しですから…それはギルさんあなたもですからねあなたの場合その可愛い行動が全てを台無しにしてますからね!もう可愛いなこんんちくしょう!!


「なぁギル。これは、俺の問題でもあるんだぜ?それにもし俺が一人で行ったとして、お前…黙って見ているか?」
「……いえ、すんません。目の前の事しか、考えられなくて…」
「いいんだよ似た者同士だ……なぁマシロちゃん?」
「…取り合えず離してください」


こうして私達3人は赤いアラガミ討伐任務を開始することになった






愚者の空母
ここにあの日遠くで見た赤いアラガミにようやく出会うことが出来た
早速戦おうと神機を構えればギルさんにストップを掛けられた
なんでも自分たちが前に出るから援護射撃を頼む、と言ってきたのだ
折角楽しみにしていた戦いが援護射撃だけとかないですわー
しかも援護射撃せず戦況を見ていたらギルさんとハルオミさん満身創痍になっていた
ええー早くない?それだけ強いってことなのかなこのアラガミ
見てられなくなった私が前線に出ようと思ったら怪我人2人に止められてしまった


「お前は前に出るな!」
「あぁこれは俺たちの問題だ!君は後ろにいてくれ!」


なら何故私を呼んだし。そう思うことは仕方ないと思う
大切な人の仇討ちで燃えるのは本人たちの勝手で好きなようにすればいいが、私のいる意味と2人の言葉に久々にこう頭の血管がプッチンプリンした
2人に言われた言葉昔とある2人に言われたことがありまして、少々思い出してしまったんですよ。そしたら怒りが込み上げてきてプッチンプリンですわ。あの時も言われた瞬間プッチンしちゃいましたけど!抑えましたけど!
プッチンしてる所に2人を投げ飛ばしたアラガミが此方に走ってきました


「マシロ!避けろ!!」
「マシロちゃん逃げろ!!」


プッチ―――ン


プッチンがビックプッチンプリンになりました


「ふざけんなっ!!」
「ギャオオオオオオオン!?」


怒りで爆発した私は目の前に来ていたアラガミの顔面を渾身のワンパンで吹き飛ばしました
アラガミはズベシャ―っと効果音が付きそうなくらい土煙を上げながら吹っ飛びました


「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」
「キュウ…」
「ちょ!?マシロちゃん!?何してんの?あり得ないよ本当に何してんだ!?カリギュラってワンパンで吹き飛ぶのか!?吹き飛ばしちゃったのか!?君可愛い顔してなんて恐ろしいことしてんだよ!カリギュラも「え!?何ソレありなの!?痛い!ワンパンはないです酷いですぅ!」って顔して挙動不審になってんぞ!ギルも起きろ!これは夢じゃないぞ!夢にすんな!」
「……ちっ」
「え"?マシロさん?」


爆発してしまった私は自分の口が悪くなっていようが舌打ちしてようがもうわかんなくなってました


「人に頼んどいて援護射撃しろ、前に出るな俺たちの問題だぁ?は?しかも避けろだ逃げろ?何バカな事言ってんですか?バカ何ですか?こちとら戦いたくてうずうずしてるんですけどね!前に出るなっていうならさっさと終わらしてもらえませんかねぇ?俺たちの問題なら何で私連れてきたんですかねぇ?しかもたかが一匹のアラガミ如きが向かってきただけで避けろぉ?逃げろぉ?はい?全く持って意味分かりませんね!避ける前に殺せばいいし逃げるなんてもっての外!倒すために来てんのに逃げてどうするんですか!?今まで悪戦苦闘して苦境にも耐えて外で生き延びてきた人間に言う言葉ですか?あんたらよりも苦労してるし何度も死にかけてるんですよ!そんな厳しい状況でもないのに何偉そうに言ってくれてるんですかね!?こっちからしたらふざけんなって話ですよ!つかてめぇこのアラガミ野郎!何可愛い声出してんだぶっ殺すぞ!!」


指の関節鳴らしながら次々に勝手に出てくる言葉を言えば2人は顔を青ざめていく
今まで我慢してきた物がちょっと出て来てしまったが知ったこっちゃない。言い始めたら止まりませんでした。止まることが出来ませんでした


「仇討ちしに来てんのにやられてどうすんですか」


言いたいこと言えば少し落ち着いてきた。冷静になれば何長々と語ってしまってんだ私のバカ野郎!溜まりに溜まった鬱憤少しはらしちまった!ごめんなさい!
表情は無に戻し先程のは夢だったのだと見せるように淡々と言ったが心の中は嵐が吹き荒れています。めっちゃ後悔してます。本当、何も見なかった聞かなかったことに出来ませんかね…泣きそう


「貴方たちの覚悟はその程度何ですか?その程度で終わってしまうものなんです?」


そのぐらいの力で仇討ちが出来るわけがない
貴方達の本気はその程度ではないでしょう
私の言葉に2人は、ハッとして神機を強く握りしめた
私はギルさんをチラッと見て神機を地面に落とし、アラガミの元へ一歩一歩と近づく
さぁ覚悟を決めろ。本気を見せて見ろ
私は何度も見てきた。何度も何も守れずただ見てることしかできなかった
人は守りたいものがあれば強くなれる
それは自分自身も入るのだ
本気でコイツを殺したいと思うのなら、もう誰かを死なせたり殺したくないのなら…強くなれ
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