『新たな可能性』episodeシエル1
歓迎会があった3日後に私はマシロをラウンジに強制的に連れてきた
主な内容はバレットのことだ
彼女は自分の部屋でとか云々言っていたが全て無視し布団に包まれ芋虫状態の彼女を叩き出しようやく部屋以外の場所に連れ出すことに成功した


彼女は歓迎会からずっと部屋に籠っていたのだ
これ以上籠らせていたら彼女の為にもならないと自分勝手に判断し丁度よく彼女に付き合ってほしい話があったので一石二鳥である


ラウンジの窓際の席に2人隣同士で座り彼女の見る。マシロは顔は無表情であるものの居心地の悪そうにしている
長く居たくない早くしてくれと目で訴えてきている
そんな彼女の様子に少しだけ笑ってしまった。ちゃんと言葉に出せばいいのにと思った


本題に移る
先日付き合ってもらった時に違和感があったバレットのことだと言えば彼女は居づらそうな憂鬱な空気を一転し、真剣に話を聞いてくれるようだ


「リッカさんの分析結果によると、回復弾のオラクル細胞の結合が変異していたそうです」


リッカという名前に反応し少しだけ彼女の片眉がピクリと動いた
過去にリッカさんと何かあったのだろうか
だが今は過去の話を聞き出すつもりはないので置いておく
私は自分で聞き出すのではなく彼女の方から言って欲しい。それまで我慢だ
話を戻そう


「変異によって細胞同士が固着して、エディットが出来なくなり他の銃身タイプでは使えなくなった代わりに、進化した、と…」


ふむ、と彼女は頷く
従来の体力回復効果に加え状態異常回復効果が付け加えられたバレットは正直とても有り難い


「推論にすぎないという前提で、おそらくブラッド同士の“血の力”による感応波の相互作用では…と、仰ってました」


血の力と言う言葉にまたも彼女はピクピクッと眉を動かした


「ブラッドの…?ブラッド同士の…?」
「はい。“血の力”による感応現象が、神機を経由してバレットに作用し“意志の力”出進化する“ブラッドアーツ”のように…“ブラッドバレット”とも言うべき特殊なバレットに進化した…そうサカキ博士は仰ってました…その後…あの…」


真面目に話を聞いていた彼女が今度は私がサカキ博士の名前を言った途端無表情から一変して眉間に皺を寄せて般若のような顔をした
博士の名前を出すべきではなかったとすぐに後悔してしまった


「多分、シエル君の想いが強すぎるせいじゃないかな、って…からかわれたんですけど…」
「…ハッ。狐がね…」


ボソッと呟いた彼女の声は私には聞こえていない。何も聞こえていない。絶対に聞こえていない。絶対にだ


「ともかく…ブラッドバレットという優秀なバレットに進化したと言うのは大発明だね」
「…はい!嬉しいです!!」


この嬉しいには2つの意味がある
1つは大発明だねと喜んで褒めてくれたこと(顔は無表情だが)
もう1つは最近彼女の返してくれる言葉が長くなったこと。今までは単語でしか返って来なかったことが大半だった。今でも多くは語ってくれない、でも返ってくる言葉だけでも長く返してくれるのは凄く嬉しいことなのだ
成長している。このまま頑張って欲しい


「リッカさんもサカキ博士も…君のように喜んでくれました…少しでも、皆の…君のお役に立ちたかったので…嬉しいです」


そう言えば彼女は顔を背ける
余りにも可愛い反応に顔逸らさないでくださいと言ってしまった
だって可愛いんだもの。頬を少し染めて目をキョロキョロさせ顔を背ける目の前の友達が
思わず私も頬を少し染めてしまう


試験運用してみたいから一緒に来てくれないかと頼んだら一つ頷いて返事をしてくれた
直ぐに準備をしてきますと彼女に言い早足でラウンジを出る
断られるかもと不安はあったが断られ無くて安心した
付き合ってくれる彼女の為に今日はいい成果が出るといいな






今回の実験場所は鉄塔の森だ
銃に変えアラガミを一掃する。検証実験するのは私なのだから一掃するのは私の役目だ
彼女には見守ってもらうだけ。危なくなったり新たに現れたアラガミが居たら彼女に任せる
難なくアラガミを倒した後、自分の神機を見つめる
彼女もいつも間にか私の隣に来ていた


「“意志の力”によって新たな性質を生み出す、バレット…ブラッドバレット…このブラッドバレットの仕組みをより、細かく解明できれば戦術の可能性が、さらに大きく広がると思うんです」


まだまだ分からないことだらけのブラッドバレット
このバレットを私自身の手で解明したい
これをもっと知りたい


「すごく…わくわくしています!君と…ブラッドの皆と…極東支部の皆さんと力を合わせて…私、ブラッドバレットの研究を進めて…もっともっとみんなの役に立ちたいです!」


彼女も大きく頷く
彼女には色々助かっている。文句も言わず時々小さな声で頑張れと呟いてくれる
ありがとう何時も助けてくれて


「マシロこの後予定はありますか?」
「…ないです」
「!ではラウンジで一緒にお昼ご飯食べませんか?」
「…誘ってくれてありがとう。でも…お腹すいてないから…大丈夫。ごめんなさい」
「…い、いいえ!気にしないでください」


やはり駄目だったか。今日こそは行けると思ったけれど…
いつになったら一緒にご飯食べてくれるようになるのだろうか
強制的に連れて行くことは出来るが、ご飯の時は楽しく食べなくてはいけない。憂鬱そうにご飯を食べても楽しくないし此方も気分が下がるだけだ
彼女自身が進んで外に出て一緒に食べてくれないと意味がないのだ
そのためには何度も何度も呼びかけていかないといけない!私は諦めない!




極東支部に帰るとすぐに彼女は自室へと避難していった
彼女の後姿を見てため息が出た


私のやるべき仕事はまだまだ多そうですね
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