歓迎会
絶対に出たくなかった歓迎会とやらに完全強制的に出席する羽目となった
私は窓際の席に座って窓の外の景色だけを堪能する
嫌だね絶対景色以外見てやるものか
つか視線痛いんだよ
いちいち見てくんなあの野郎


顔はいつも通り無表情に徹し、心の中だけで悪態をつく
いや視線は一つだけではないんですけどね
心配そうに此方を見るのはブラッドのメンバーの視線
私の傍に来て頭をナデナデして「よく来てくれた」と優しく微笑んでくれる隊長の視線
「姫が足を組んで肘ついて凛々しい顔で外見てる素敵結婚したい」となんか真顔でほざいてる変態の視線
興味津々に此方を見る漫才コンビの視線
そして――


先程から此方をちらちら見てはビクビクして一歩踏み出して声を掛けようとするけどオドオドしてシュンと子犬のように縮こまってるバカの視線が痛い


ハッキリ言います
ウザい
その一言です以上


ウザいと言ってやりたいとこだがしかし、話しかけたくないし言ったらもっとしょぼくれそうだ
変態に言ったら「ありがとうございます!御馳走様です!」と述べるだろう(一度言われたことがある)


はぁ、やるならとっととやってくれ
そして早く我が愛しのおふとぅんの元に帰らせてくれ






そしてやっと始まった歓迎会


「はいっ!皆様ご注目〜!本日は足元のお悪い中、極東支部にお越しくださいまして誠にありがとうございます!まずはブラッドの皆さん!改めて、ようこそ極東支部へ!」


司会である彼の言葉から始まりブラッド代表のジュリウスさんが挨拶をした
その間も何度かちらちらと様子を窺うように見てくるのでもうウザいったらありゃしない


そしてユノさんの挨拶があり歓迎会&私のお礼にと歌を歌うこととなった
ユノさんのソロ・コンサートが始まった


彼女の歌は心に染み渡る歌だった




未来は貴方を見捨てない
未来は簡単に見捨てるよ。気づいたら真っ暗なんだもの


勇気の欠片があれば
勇気があったって何も変わらない。そんなもので見捨てられずにすむの?違うでしょ


光の声が呼んでいる
私には光など見えない聞こえない


失くした日々の向こう側
失われたらどれだけ楽か…過去は消えない…だからこそ


夜明けの声が呼んでいる
また辛く悲しく退屈な今日という日を過ごしていかなければいけない


明日を照らすものは太陽じゃない
太陽の光が照らすのは厳しい世界と現実


心にある一筋の希望だからただ歩き出そう
希望…いつから失くしたのだろうか
いつから前を向いて歩くことをやめて下を向くようになったのか
いつから…心が死んでしまったのだっけ


ユノさんの歌を窓際で景色を見ながら一人聴いていて胸が痛くなる
本当だったら素直に何も考えず彼女の歌を聴きたかった
きっと素晴らしい歌なのだろう
私はその素敵な歌を全て卑屈に捉えてしまう


心によく響く素敵な歌
でもこの歌が苦手だ
暖かい歌は私には必要ないから
この歌を聴いていると心が揺れて泣き出してしまいそうになる
歌を歌っている途中でやめさせたかった
ずっと聴いていると殻が破れてしまいそうになったから


私一人…拍手を贈ることが出来なかった
ごめんなさいこんなクズで
素直に受け取れない受け入れられない最低な私
ごめんなさい過去の私
ごめんなさい私の人生




お礼の歌ありがとう
あなたの歌は私には眩し過ぎました
心の中で何かが静かに流れ伝う音がした
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