動き出す日常
彼らを天国に連れて行ってあげました。やだ私ったら優しい子!
それは置いといて話を中断してしまったフランさんの元に行く
彼女には申し訳ないことをしてしまった
気づいたらあいつらを殺さなきゃ、と体が勝手に動いていたんですごめんなさい
彼女の元に行くと何やら先客が…先客はジュリウスさんのようでした
2人は私に気づき、フランさんは私に向かって憐れんだ目を向けてきた
よせやい。先程起こった過去の出来事は忘れるんだ


ふと、ジュリウスさんがフランさんに放った言葉が私には理解できなかった


「まだ極東は見えないか?」
「えぇまだまだですね」


極東?
その言葉のワードに意味が分からず思わず足を止めてしまう
何故極東に?
一体何のために極東に…?


「極東支部に着くのは一体いつになるか…」


ジュリウスさんは何を言っているんだろう
このフライアが極東支部に行く?
何故よ…行く意味がないじゃない
どうしてあんなところに行かなくちゃ…
混乱している私を余所に話は進んでいく
そんな時、先程倒したはずのジンさんが上の階に上がってきた


「おー、一体何の話ー?」
「ジンさん。生きてたんですかお帰りなさい」
「ひっどいのー!フラッちゃんったら」
「極東支部にいつ着くか、という話をしていただけだ…?マシロどうした?」


さっきから何も話さない私にジュリウスさんが心配して近づいてくる
身体全身が震えてきた
明らかに具合が悪い私の頬をジュリウスさんはそっと両手で包み持ち上げる


「どうした…具合が悪いのなら…」
「ど、どして極東支部に…」


彼の言葉を遮り、頬を包んでいるその手首を強く握る
動揺して声が裏返ってしまう
だが、聞かないと、何故極東に行くのかちゃんと聞かないと


「極東に、行かないとい、いけない理由は、なんなんですか」
「…何も、知らないのか?」
「え…」


目の前の彼は困惑している
さも、私が極東に行く理由を知っているものだと思っているかのように
知らない
何も知らないよ
なんで、なんであんな怖いところに…


「あーーーーー!」


陽気なジンさんの声が響き渡る


「俺、姫に極東支部に行くこと言うのわっすれてたー」
「は?」
「え?」


私達は素っ頓狂な声を発してしまった
こいつ今なんて?
私に伝えるの忘れてたって言った?


「おい、ちゃんと伝えるように何度も言っただろう。それに、俺から伝えるんだと言っておきながらこれでは意味がないじゃないか」
「な…」
「ごーめんって」
「なんで言って下さらなかったんですか!こんな!こんなこと!」
「マシロ?」


自分の声の音量がヒートアップしている
けれど止められない
なんでこの人はこんな大切な、私にとっては一大事なことを伝えてくれなかったのだろうか!
酷い、酷過ぎる


「まぁまぁ落ち着いて姫」
「落ち着けるわけっ」
「一気に追い打ちかけたらいけないと思ってさ」
「何を言ってっ!」


追い打ち!?
今まさに追い打ちかかってますよ!
ダメだ頭がパンクして言っている意味が全く理解できない


「シーちゃんが友達宣言した後、姫また熱が出てぶっ倒れたでしょ?その後さ、ラケル博士に局長室行くよう言われてお話があったのよー」










再熱が出て、倒れたマシロを医務室に残し、他の者は局長室へと向かった
局長室にはラケル博士、レア博士、クジョウ博士、グレム局長とブラッドメンバーが集結していた


「ご足労いただき、感謝します。グレム局長」
「お忙しいところ時間を足らせてしまい、申し訳ありません」
「挨拶はいい、とっとと理由を聞かせてもらおうか。何故、最前線の極東地域にこのフライアを向かわせるのだ?」


ブラッドメンバーは話している意味が理解できていない者が多く、困惑した状況だ
人の話を聞かず、自身についての説明をブラッドにするラケルにグレムは呆れたようにため息を吐く


「極東支部において、ブラッドと神機兵の運用実績が欲しいのです」
「実績なら、このあたりのアラガミだけでも十分だろう。何もあんな、アラガミの動物園のような場所に行く必要はない」
「いやー極東に行く必要性はあるんですよねー」


ラケルと話をしていたのにいきなりジンが乱入してきたためグレムは眉間に皺を寄せた


「誰だお前は。お前に用はない!」
「ふふっ。そう怒鳴らないで上げてくださいグレム局長」
「そうそう。極東に行こうと言ったのは俺なんスから」
「何だと!?」
「俺が極東支部のことを考えていたら、なんとラケル博士も考えていたんですよ。だから俺たち二人で色々と話し合っていたんです」
「そういうことですわ」


ジンの言葉にメンバーはさらに困惑することとなった
隊長であるジュリウスでさえ今初めて聞いたのだ
何故、ジンがラケル博士と相談し合っていたのか
ジンは何を考えているのかと皆、困惑しながら思い思いに考えていた


「神機兵の安定した運用を目指すなら、もっと様々なアラガミのデータがないと、本部も認めてくれません」
「そーです。あそこはここにはいないアラガミも多数いる動物園。知らないアラガミのデータを持つことで神機兵の動きや知識もより多様になれるし、俺達だってそれは同じです。沢山のアラガミのデータを持つことによって勉強できるし、想定外の結果が起こったとしても対処も素早く行える」
「ふむ、しかしだな…」


渋るグレムにレアが追い打ちをかけるかのように話し出す


「極東支部には葦原ユノ様がいます、本部に対しても発言力のある彼女への助力なら、決して無駄な投資にはならないかと」
「確かにな…ラケル君、神機兵とブラッド、どちらも本当に損害を出さずに済むんだろうな?」
「えぇ…信頼を裏切ることはありませんわ…」
「ふーむ。よし、分かった!後で稟議書を提出しておいてくれ。レア君だけ残りたまえ、あとは下がっていいぞ」


局長室を出たブラッドはジンに問い詰める
これはどういうことだと
何故、俺達に何も言わずに独断で博士と話し合っていたのかと
だがジンは笑うだけ


「別に、ただただ俺は極東に行きたいなーって思ってたらラケル博士も行きたいなーって言ってたからお互い少し話しただけよー」
「隊長である俺に報告すべきだったのではないのか?」
「んーま、忘れてたのよー。ちょいと前に話してたから。ついね」
「はぁ、お前な…」
「ごめんってジュリウス。あ、そうだ。姫には俺から伝えておくから」
「別に俺が伝えておくぞ」
「俺から伝えたいの!」
「まぁ構わないが」
「サンキュー」
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