大切なもの
無事帰ってこれた私達は皆疲労感に包まれていた
そんな中、ジンさんは房に入れられゴリラの如く暴れているという(現在進行中)
私はというとラケル博士に連れられメディカルチェックを受けていた


「本当にあなたの身体は不思議でありません。どうしてあれだけの赤い雨に触れていたのに異常がないのでしょうか。黒蛛病の予兆もありません」
「…そうですか」


正直、私自身が聞きたいことだ
自分の身体が気持ち悪くて仕方がない
ここの世界では異常である私
やはり私が異世界の人間であるという証
どんなに皆と一緒になれても元が全然違うから一緒になることが出来ない
そもそも足掻く前に私は一人なのだ
もし、もし私が黒蛛病にかかれば…少しはこの世界のみんなと一緒だと思えるのに
私は黒蛛病にかかることすら出来ないでいる


「本格的に貴方を調べなくてはいけませんね」
「…気分が悪いので失礼します」


博士の目が怪しく光ったのを見逃さなかった
何かされる前に逃げるが勝ちだ
博士の返事も聞かずさっさと退出する


ロビーに逃げ込んだ私は早々に怖い顔したギルさんに捕まってしまった
無視して逃げようと思ったが私の手首を掴んでいる手は放してくれそうになかった
小さくため息を吐き出し、彼と向き合う


「なにか」
「マシロ…ジンの奴にも言ったが…シエルを助けに行った件…なんで、あんな無茶をした?」


別に無茶はしていない
ただ皆と合流しようと歩いていたらシユウがシエルに突っ込もうとしていたから吹っ飛ばしただけだ
無茶したというならそれこそジンさんだろう
シエルだけかと思っていたらいきなり神機兵が喋り出すんだもん
あれはビビりますよ
無人神機兵に乗るなんてジンさんも中々やるな
私も一度でいいから乗ってみたいな
なんか、こう、ガン〇ムっぽく「マシロいきまーす!」
みたいな感じで乗ってみたい


「無茶してんだよ。あんまり独断で無茶はするな…万が一あった場合残された奴は一生、お前の命を背負い続けるんだ…自分だけは大丈夫とは思わない方がいい」
「…ええわかってます」
「説教くさくてすまなかった…じゃあな」


ギルさんは最後に私の頭を一撫でして去って行った


そんなことわかってる
誰も死なないように
誰かが死ぬ前に
私が動けばいいんだ
だからこそ私は強くなった
目の前で守れなかった命がいくつもあった
全てわかっていたくせに
原作を知っている私はわかっていたのに…
怖くて
怯えて
動けなくて
ただただやられていくのを震えながら見ることしかできなかった


今は違う
独りでも生きて行けれるように
目の前の人を守れるように…


私は大丈夫
私は強い
あの日を境に強くなったのだから
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