友達
庭園の中の大きな木の傍に彼女はいた


いた!いたよ!
そりゃいるか!呼んだんだもんね!


心の中で盛大に動揺しまくっている自分がいる
ちなみに顔は無表情です
ここに来るまでに表情作り直してきたんです
頑張ったんです私
でも私も無表情だけど彼女も無表情なんです
どうしましょうか
無表情VS無表情という修羅場になった場合私はどうしたらいいんでしょうか
無表情同士の語り合いなど怖い以外の何物でもないと思っておりまするがどうなのでしょうかね
今来たばっかりですがもう帰ってよろしいでしょうかね
怖いとです
お部屋大好きお昼寝万歳


などと自分でも意味の分からないことを心の中で叫びながらちゃんと足はシエルさんの方に向かっています
シエルさんが私に気が付きました
無表情同士の試合が始まる
fighting!
んなこと言ってるけど実際全くって言っていいほど全然余裕ないです。はいすいません。


「…マシロさん。お忙しい中、および立てしてすみません。ですが、どうしてもお伝えしたいことがあるんです」
「…なんでしょうか」
「ブラッドは皆、正直私が考えていた以上の高い汎用性と戦闘能力を、兼ね備えていた部隊です。さらに驚いたのは、決して戦術理解度が高い訳でもなく、規律正しく連係しているわけでもない点です」


あれ?
私の事じゃないの?
てかあれ?
ブラッドさんざん言われてません?


「私の理解をはるかに超えて、ブラッドというチームは高度に有機的に機能している、おれはおそらく…」


おそらく…?


「マシロさん。きっとあなたが皆を繋いでいるからなんです」
「ハハハーソレハナイデス」


ないだろーーーーーーーーーーーーー!!!!
なんで私何だよーーーーーーーーーーー!!!
私何もしてないけど!何故私に来たし!そこは普通副隊長であるジンさんではなかろうか!?


「ジンさn「彼は女好きの変態なだけです」…そうですか」


ジンさん?おーーいジンさん?
貴方もちょっと頑張った方がいいんじゃないですか!
新しく来た仲間に女好きの変態なんてレッテル貼られて呼ばれてますけどいいんですか?
このままで貴方本当にいいんですかジンさん!?


「私は戸惑っています…正直、今まで蓄積してきた物を全て否定されている気分です」


私も戸惑っています…皆を繋いでいるのが私だと判断したあなたの心が分からない。この展開どうしよう、今そんな気分です


「あ、誤解しないでください!嫌な気持ちではないんです…それどころか…なんというか…ええと、どう説明すればいいのか…ううん…少々お待ちください。折り入って…お願いがあります」
「はい」
「私と友達になって下さい!」


……………ぇ?
と、友達?
え?ええ??えええ!?
友達ーーーーーーー!!!!!
は?え、ちょっと待て!
友達ってなんだっけ?
いや何言ってる私はバカか!友達ぐらいわかるわこのアンポンタン!


「…あの、どうでしょう?」


どうでしょうと言われてもど、どうでしょう…?
まずなんで私?
私貴方に優しくした覚えもないし、関わった記憶もほとんどありませんよ
この流れ…どうしたらいいんだ!


「えっ…と。あの…」
「そうですよね…すみません、昔から訓練ばかりであまり、こういうことに慣れていなくて…」


ぬ、ぬぐぐぐなんだって!?
君の様な可憐な少女が訓練ばかりしていただと!?
けしからん!
君の様なモテ子少女は、もっと自分を活かすべきである!
いいだろう私と友達になろう!
と言いたい所だがしかし!
私の本能→いいよ!君の様な可愛い友達欲しかったんです!友達になろう!いやなってくださいお願いします!!
私の理性→でも友達になって期待して裏切られたりしたらまた過去と同じになってしまう。私は友達なんかいらない。一人でいい


「嫌…ですよね。私みたいなつまらない者に友達になって欲しいだなんて…」
「…友達になろう」
「!!ありがとう…ございます…」


だああああああ言っちゃった!言っちゃったよ!
私の本能が勝手にしゃべっちゃったよ!
なんで言っちゃったかな!私一人でいいとかさんざん言ってたじゃんかよぉぉぉぉ!
しかもシエルさん頬染めないでいただきたい
君は恋する乙女か!可愛いなちきしょう!


「憧れていたんです…仲間とか…信頼とか…命令じゃない…皆を思いやる関係性を…」


それはまぁ私も憧れではありますけども
どうしよう!どうしよう!今さら取り消せないよね!今現在取り消せれる雰囲気じゃないよね!


「あ…もう一つ…不躾なお願いがあるんですけど…」


まだなんかあるんスか…


「貴方を呼ぶとき…呼び捨てしてもいいで、すか?」
「…ん?」
「あ、すみません…いきなり呼び捨てするのは…いくら何でも、早すぎますよね…」


もうやめて!私のライフはゼロよ!
なんだよこの可愛い生き物は!
なんなんだよ!何でもじもじしながらこっち見てくるの!可愛すぎだろ!
友達取り消しますが言えません可愛すぎて
本当に私ってどうしたいのか!
私自身私の事が分からなくなってきたよもう…


「やっぱり…ダメですよね…」
「…いいよ」
「!ありがとう…君が…私にとっての、初めての…友達です…。本当に…ありがとう…」


また言ってしまった
私のバカ野郎
シエルさんから尻尾が見える
取れるんじゃないかってぐらい尻尾ブンブン振ってるように見える
でもやっぱり伝えないと
勢いで言ってしまったが、私の気持ちちゃんと伝えないと失礼だし


「少しだけ、皆と仲良くなる…自信がついた気がします」
「…シエルさんすみません。貴方に対して大変失礼になりますが、今の件取り消しをさせてください。私は誰かと仲良くなるつもりはないんです。出来ればもう私の事はほっといて…」


私の身勝手で理不尽な思いを伝えていたら、シエルさんは口角を上げて笑顔で私を見つめていた
あれ?っと思っていたらズイッと顔を近づけてきたため、とっさの判断で一歩後退してしまった
心なしか笑顔がブラックのような気がする


「せっかく友達になれたのにマシロはまだ私の事“さん”付けするんですか?それに貴方が友達を取り消そうとしても私は取り消しませんよ。取り消すわけないじゃないですか。何バカな事言ってるんですか?バカなんですか?」
「あれ…?」


あれ…?
さっきまで頬染めてもじもじしてた可憐な少女はどこいった
ブラックですね。その笑顔凄くブラックですね。
シエルさん、君ってそんな性格だったの?違うよね!?君そんな性格じゃないよね!?


「私…本当にあなたと友達になりたかったんですから!強くて、凛としてて!何事においても冷静に判断する姿とか、的確に倒していく姿とか…とってもかっこよくて!皆の信頼を得ているあなたに憧れて!あなたと友達になって一緒に頑張りたいなって」
「…なんで…」
「あなたの事…もっと…知りたいと思ったんです」


何でそんなこと言うのよ
皆して…
皆してなんで私の壁を、殻を壊そうとするのよ…
訳わかんないよ
友達なんて…いらないもん
いつか辛い思いするようになるんだったら、端からそんなもの作らなければ楽だし
傷つかなくてすむし…


「私の、身勝手でワガママなお願いなんです。私は貴方と友達になりたい」


はっきりと言葉にする彼女が強くて、羨ましくて…
涙が出そうになった
過去に受けた苦しみは中々消えてくれるものではない
でも、でも…少しだけ信じてもいいのだろうか
彼女の事信じてもいいのかな
わかんなくて、どうしたらいいんだろうって、ぐちゃぐちゃして…混乱してる頭の上に暖かな手が置かれた


「だから言ったっしょ。ウジウジ悩む暇があったら、何も考えんなってな」


貴方もよ…なんでここまでしてくれるの?
考えんなって…考えちゃうよバカ




嘘かもしれない
また信じて裏切られてしまうかもしれない
期待してしまわない方がよかったのかもしれない
また過去の出来事を同じように繰り返してしまうかもしれない
でも、
彼のこの手の温もりは…本物であると信じたい


心の壁に少しだけひびが入った音がした


私は、信じてもいいのでしょうか
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