友達
目を覚ますと目の前には白い天井が映っていた
ここは…医務室?
何で?
私は何をしていたんだっけ
頭をひねって答えを導き出そうとするが中々出てこない
唸る私の頬にいきなり冷たいものが当てられた


「ひっ!!」


いきなりの事でびっくりして肩を震わせ声を上げてしまった
内心どきどきで一杯だが何とか冷静を保ち、してやってくれた張本人を睨みつける


「おっはー姫」


悔しい
自分の隣に居た彼の気配を読み取れなかったことと、頭の整理をしていて彼が動き出したのに気付かなかったこと
そして私の驚いた声を聴いて凄く満足そうに笑顔を向けてきたこと


「何するんですか」
「寝起きの姫は喉乾いているんじゃないかなーて思ってね」


ほら、と渡してきたのはジュースだった
冷たくて気持ちいい
私の頬に当てたのはこれだったのか


「あ、ありがとうございます…」
「んーいいのよ。俺も喉乾いてたし、ついでだから」


そう言ってジンさんは自分の手に持っている缶コーヒーを私に見せるように少し上にあげた


「ジュースにしちゃったんだけど大丈夫?コーヒーの方がよかったかな?」
「いえ、ジュースで大丈夫です。コーヒーは、飲めないので…」
「そっか。よかった」


何だかジンさんが変だ
優しい
いやいつも優しいんだが、心なしか口調とか表情とかが優しく感じる
何だろう…安心できるような…お兄ちゃんって感じ


人の顔をじろじろ見るのは失礼なのでジュースに視線を向けていると、そういえばと先程のことを思い出した


「あの…何で私ここにいるんですか?」
「任務先で姫倒れちゃったのよ」
「え?倒れた…?」
「任務自体は終わったんだけどね。その後ちょいとね」


倒れた…?その後…
あぁ思い出してきた
確か、任務が終わった時あの子…アリサと会ったんだ
それで私怖くなって
また昔みたいに言われるんじゃないかって怯えて…そこから記憶が飛んでる
多分その後気を失ったんだ


「すみません。思い出しました」
「謝ることは何もないでしょ」
「いやでも…」


倒れた私をわざわざ運んでくれたんだ
迷惑だったろうに
私何やってんだか
ジンさんだって今は優しくしてくれているけれど、本心はめんどくさい奴とか思っているんだろうな
仕方なしに助けてくれたんだと思う
でも、助けてもらっただけありがたいか…


「言っとくけど、俺別に面倒くせーなとか迷惑だなとか思ってないからねん」
「っ!」


私が考えていたこと全て笑顔で否定された
なんで?
何でそこまで優しくしてくれるんだろう
わからないよ…


「そーいえば。姫が起きたら庭園に来てくれってシーちゃんが言ってた。あ、シーちゃんってシエルちゃんのことね」
「シエルさんが?」


何だろう
呼び出されるなんて…
もしかしてシエルさんに、足手まといとか任務に支障を来すお邪魔虫とか言われてしまうんだろうか


また悶々と考えていたら上からため息が聞こえた
そのため息にビクッと肩が震えた


「あーのね姫、考えすぎ顔に出てるよ今。いつもの無表情はどーしたの。姫が思っているようなことにはならないから安心しなよ」
「…。」


何でそんなにはっきりと断言できるんだろうか
わからないじゃない
ジンさんはそう思っていてもシエルさんは違うかもしれないのに


彼と居ると調子が狂う
優しくなんてしないでほしい
期待してしまいたくない
私の作った壁を壊そうとしないでほしい


「ほらほらシーちゃん待ってるから早く行きなさい!」


なぜオカン口調…
ベッドから無理やり立たせ背中を押されて医務室から追い出された
一応まだ私病人なんですけどね
さっきまで寝てた人なんですけどね
貰ったジュースまだ一口も飲んでないんですけどね!


私を起こして追い出すまでの時間想定20秒
速い、行動が速すぎるよジンさん
まだ心の整理ついてないのに行けって鬼ですね




「ウジウジ悩む暇があったら、何も考えずとっとと行動すればいいの」


医務室の中でジンさんがそんなことを言ってるとも知らずに、私は覚悟も決まらないままとぼとぼと庭園に向かうためエレベーターに足を向けた
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