放課後パラダイス
やはり、禁じられた森の空気は澄んでいて綺麗だ。禁じられた森には、割と薬草が自生しているから、摘みにいくことが多い。
いやはや、先ほどのMs.白鳥には驚いた。グリフィンドール生だと言うのに、なぜ我輩を恐れもせず嬉しそうな笑みを浮かべるのか。また、心の奥深くが暖かい気持ちになる。
そろそろ、戻るか。
森を出たところには、まだ授業中であるはずなのに生徒が一人、鷲と戯れていた。眉間のしわが深くなるのが自分でもわかる。減点してやろう。
「貴様、今は何をしている時間か分かっておるのか?」
ぱっと顔を上げた生徒は、Ms.白鳥だった。
「あら、スネイプ教授。どうしたんですか?」
拍子抜けするような笑顔を返された。
「白鳥家のご令嬢は、授業中だと言うことを分かってないのかね?」
「白鳥家のご令嬢であっても、授業に嫌悪感を感じたら教室から出ていきたくなりますよ。」
「何があったのだね?」
「そのことはそのうち先生の耳に入ることでしょう。
私の口からは、話したくありません。」
あまりにもキッパリとした口調と泣きそうな怒った表情には驚いた。
それからにっこりと微笑むと、彼女は魔法で大半の荷物を部屋へ飛ばし、鷲を飛び立たせた。
この歳で魔法を使いこなしているのは家柄からだろうか。
「先生、終業のチャイムが鳴りましたし、今から質問に行ってもよろしいですか?」
「あ、あぁ。」
彼女は腕の中にいたであろう子猫を抱くと腰を上げた。
「先生、どうかなさいました?」
「いや、行くぞ。」
どうも彼女といると調子が狂う。素の自分が出そうになる。
特に何かを話すわけではなく、地下に向かった。
仕事をこなしている研究室の前に、人影が見えた気がする。気がするだけだろう。
「先に、教室に行っていたまえ。」
「わかりました。」
採点途中のレポートをもって、教室に向かうといろいろな資料や教科書を開いて羊皮紙を開いているMs.白鳥がいた。
少しその量には驚いた。
「Ms.白鳥、我輩はレポートの採点をしつつ回答することになる。」
「はい、早速ここなんですが―」
彼女の質問はつきることなく、かつ的を射ていて教師に聞かなければわからないような専門的なものばかりだった。
夕食の時間が来ても、彼女はまだ質問し足りないようだった。
「Ms.白鳥、もうすぐ夕食なのだが。」
「えっ!?
すいません。
あの、1つお願いがあるんですけど良いですか?
誰に頼んだら良いのか分からなくて、先輩方の話を思い出して…」
「何だね?」
「…スネイプ教授に闇の魔術に対する防衛術を教えてもらいたいんです!」
急に何を言い出すかと思いきや。
「ロックハート教授の授業は授業とは言えないんです。壊滅的で…
このままだったら…」
八の字眉になっているMs.白鳥を見ていると何故かこっちが困ってしまう。
「…良いだろう。
しかし、我輩は妥協は許さん。」
「もちろんです。」
やっぱり先生に頼んでよかったと笑う彼女をみて、引き受けて良かったと思った。
課題を出して、今日は帰した。
「Ms.白鳥、明日からは隣の研究室の方に来るように。
ここでは、不便だ。」
資料が手元にない上に、やはり寒い。
「わかりました。
今日はありがとうございました、明日からもよろしくお願いしますね。」
「あぁ。」
さらりと髪を揺らして彼女は去った。
―私も夕食に行こう。
その大広間で、Ms.白鳥が怒っていた理由を耳にした。
確か自分の口からは話したくないな。
あぁ、減点するのを忘れていた。でも、代わりに暖かい気持ちになれた。
今回は見逃してやろう。
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