1年生編 | ナノ




初授業

今日は楽しみにしていたスネイプ教授の魔法薬学の初授業がある代わりに、無神経系男子ロックハート教授のDADAがあるの。朝からため息が出る。どうもロックハート教授の声を聞くと感情が露になってしまう。

「朝からどうしたの?スネイプ教授の授業が憂鬱なのね!」
きっとすごく嫌な顔をしていたんだろうな。

「シェリー、違うわ。」

否定の言葉に加えて、楽しみにしている意を伝えようとすると近くから爆音(?)が聞こえた。

よくよく聞いてみると、爆音ではなく怒鳴り声、つまり吠えメールだった。

急いで耳を塞いだけど既に頭が痛い。

盗み聞きが悪いことだと知っているが、聞こえてくるのは仕方がない。

監督生のウィーズリー先輩の弟であり双子のウィーズリー先輩の弟が怒られているみたい。
それと有名らしいポッター先輩も。

何!?
あの暴れ柳さんを怪我させたのは、ウィーズリー先輩とポッター先輩と言う人なのか。

あんなに怒られたら、十分でしょ。

「ポッター先輩とウィーズリー先輩怒られてたわね。」

「それ相応のことをしたんだから当然じゃないかしら。」

「桃子ってけっこう毒舌ね。」

「そうかしら?
そろそろ授業に行かない?」
はじめての魔法薬学の授業、緊張するなぁ。雪ちゃんから聞いて、楽しみにしてたの。雪ちゃんは、昼間は自室から出ちゃいけないの。

お昼間でも一段と空気が冷え込む地下教室。緊張した空気が教室を包む。
バタンと大きな音を立ててスネイプ教授が入ってくる。

「このクラスでは、魔法薬調剤の微妙な科学と厳密な芸術を学ぶ」

クラスを一瞥すると少し微笑を漏らした。その微笑は何を意味するのだろうか。

「このクラスでは、杖をふりまわすようなバカげたことはやらん。そこで、これでも魔法かと思う諸君が多いかもしれん。
フツフツと沸く大釜、ユラユラと立ち昇る湯気、人の血管をはいめぐる液体の繊細な力、心を惑わせ感覚を狂わせる魔力……
諸君がこの見事さを真に理解するとは期待しておらん。
我輩が教えるのは、名声を瓶詰めし、栄光を醸造し死にさえふたをする方法である―
ただし、我輩が教えてきたウスノロたちより諸君がまだましであればの話だが」

痺れる!
素敵な文言。
薬学の素晴らしさが伝わってくる。

「今日は、おできを治す簡単な薬を二人一組でつくってもらう。」

「桃子、一緒にしましょう。」

コクンと頷いてシェリーと作業を始める。なかなか奥が深く楽しい。まるで、料理をしているみたいで、不謹慎だけどうきうきしてくる。

シェリーは手際が良く、一緒にやっていて効率が良かった。みんながやっと材料を鍋に入れ始めた頃、完成した。

完成した薬品を見ながらレポートを書いていく。
もしかして、これ…材料を入れるタイミングだけじゃなくて、火加減を変えるだけで違う薬品が出来るんじゃないだろうか。

「そのとおりだ、Ms.白鳥。火加減を変えるだけで別の薬品ができる。」

えっ!?
なんで分かったの!?

「口に出ておったぞ。そんなに気になるなら作ってみれば良かろう。」

凄く神秘的!

「やってみます。
あ…スネイプ教授!昨日はありがとうございました。」
「教師として当たり前のことをしたまでだ。」

そう言うと、ローブを翻して隣の調合を見に行ってしまった。

「さぁ、調合しよっと。シェリーはどうする?」

「ワタシ?
私は良いわ。さっきので、疲れちゃった。桃子って変わってるわね。」

「そうかしら?」

部屋においてある縮み魔法をかけた予備の鍋を呼び寄せる。みんなは見てなかったみたい。もとの大きさに戻し、使えるようにする。
さっきの手順を読む限りでは、どくだみの根を入れ混ぜずにすばやくフレリアの花弁をいれるけど、これなら一緒にいれても良いんじゃない?
あと、ヤマアラシの針を入れる前にゆっくり冷やすけど、冷却魔法をかけたらダメなんだろうか。
とりあえず、やってみるべきよね!
気になったところは、印をつけて調合を始めた。
チャイムが鳴るとみんな我先にと教室から飛び出していく。もちろんシェリーも例外ではない。

「桃子、次はあのロックハート教授の闇の魔術に対する防衛術よ!早く行きましょう。」

「んー…。
ごめん、もうちょっとかかるから先に行ってて!必ず間に合うように行くから。」

「しょうがないわね、私廊下で待ってるわ!この部屋は性にあわないみたい。」「ごめんね、ありがとう。」

「それぐらい良いわよ。だって私たち友達だもの!」

ウインクをするとシェリーは出ていった。この教室に残っているのは、私とスネイプ教授だけになってしまった。

「先生、今お時間よろしいでしょうか?」

「あぁ。」

「ここなんですけど、どくだみの根とフレリアの花弁を混ぜてから入れるとこんな結果になったのですがどうしてでしょうか?」

「それはだな、どくだみの根には―」

スネイプ教授の回答はすごく分かりやすかった。やっぱり、スネイプ教授はいい人だわ!

「まだあるんですけど、良いですか?」

「Ms.白鳥、君には次の授業がないのかね?」

「あッ!
忘れてました…」

「質問があるのなら、放課後に来たまえ。」

「お邪魔じゃないですか?」

「生徒の疑問に答えるのも教師の仕事だ。」

「ありがとうございます!では、また放課後に。」

すごく嬉しい!
やっぱり魔法薬学は楽しい。先生も授業も素敵。

「失礼しました。」
ゆるりと微笑むと、スネイプ教授の口角が上がったような気がした。

「桃子遅いわ!
早く行きましょう。きっと良い席は取られてるけど。」

「ごめんね。
スネイプ教授と話し込んじゃって。」

「え!?
何を話すの?」

「質問に答えてもらってた、だけ。放課後も教えてくれるの。」

「へぇ…(意外とスネイプは桃子のこと気に入ってるのかも。)」

「ついた!」

話してる間、ずっと走っていたから想像よりも早く着いた。

「良かった!
まだ教室が空いてないから、良い席はとれるわ。」

げ…
この様子だとシェリーに引っ張られて最前列に行っちゃいそう。

どう回避しようかな、なんて考えてるとシェリーに引っ張られて最前列の左端の席に来てしまった。
シェリーは、隣で舌打ちをしている。よっぽど最前列の真ん中に座りたかったみたい。シェリーの方が私よりよっぽど変わってるわ。

今は出来るだけ空気のような存在になるために教科書を壁のように積んでみた。
大きな咳払いが聞こえると勿体ぶったような話し声が聞こえた。

出来るだけ耳障りな声を耳に入れないように、存在がばれないように神経を使った。

にも関わらず、30秒後バレちゃった。

「おぉ!
僕の可愛い、天使ちゃん!こんなところにいたんですか!
恥ずかしがりやですねー。」胃の中がひっくり返りそうなぐらい不愉快。

「先生、早く授業を始めてください。」

出来るだけ冷静に聞こえるようにいったつもり。

「そうだね、私の可愛い天使ちゃんが言うんだから授業を始めよう。」

私はいつ‘貴方’の可愛い天使ちゃんになったんでしょうかね。

信じられない!
無神経にも程がある。

とりあえず、今日は小テストをするみたい。どれぐらい、闇の魔術に対する防衛術が分かってるか確認するのね!
少しは真面目なところがあるじゃない。

……。

前言撤回。

自分に関しての質問ばっかりじゃない。

信じられない!

こんなことするなら、独学でDADAを学ぶ方がよっぽど価値があるわ!

小テストも白紙で出そうかなと思ったけど、最後の設問に‘ギルデロイ・ロックハート教授に言いたいことがあればどうぞ。’と書いてあったので嫌味一色の抗議文を書いて提出した。

集めた小テストを見て、急にロックハート教授はニコニコし始めた。

「おぉ、私の可愛い天使ちゃんは勇敢だ!テストを白紙で出すなんて。最後の設問にはちゃっかり答えてくれてるけどね!私のことをこれから知りたいってことなんでしょう!なんと可愛い天使みたいな小悪魔ちゃんだ!グリフィンドールに10点!」


C'est incroyable!
信じられない!
勘違いも甚だしい。

「桃子、私の花嫁になって私のことを知っていけば良い。どうでしょう?
さぁ、こちらへ。」

シェリーに促されて立たされる。

腕を引っ張られて、みんなの前に立たされる。

男の子からは同情、女の子からは羨望と怨念、一部は良くわからない視線。

「ロックハート先生、私のことは名前で呼ばないでください。赤の他人に馴れ馴れしく呼ばれたくありません。」

「桃子、私たちは将来夫婦となるんだから良いじゃないですか!
だから、私のことは遠慮なくギルデロイと、「呼びたくありません。いつ、私が貴方のような自己中心的な考え方をする方と結婚なんかすると申しましたか?貴方のように、白鳥家の名を語りたいだけのような方となんか結婚する気はさらさらありません。私は、愛のある結婚をするつもりですから。これ以上固執するなら、いくら教師といえども白鳥家の権力を使わせていただきます!」

一息で言い切ってやったわ!

「差し支えなければ、失礼します。」

杖をふって、机の上の荷物を呼び寄せてピシャリと扉を閉め、外に出る。

これで懲りてくれたら良いんだけど。

まだ、授業中だし中庭にでも出ようかな。

ゆるゆると柔らかな陽射しのなか、誰もいないホグワーツを散歩するのは楽しかった。

暴れ柳さんに会いに行き、そのあと湖のほとりでお母様に手紙を書き、スネイプ教授に質問したいところを書き出していった。

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