迷子
「ここどこかしら?」
雪ちゃんもいなくなったゃったし。
ホグワーツに来て、初っぱなからはぐれちゃったみたい。
入学式に間に合うのかしら?
まぁ、私としては式に出ない方が好都合なんだけど。
とりあえず、みんなを探さないと!
荷物は持ってないから身軽だけど、こんなところで一夜を過ごすなんて嫌だわ。
あれ?中庭かどこかに出たみたい。
っ!
暴れ柳の木がすごく 傷ついてる。私は癒力(ヒーリング)の持ち主。癒力は稀少な力で魔法ではなく自分の思いで人のケガを治すことができる。私はすごく強力な癒力を持っているらしい。
「暴れ柳さん?
大丈夫じゃないですよね?」
木がざわざわと揺れて怒りが伝わってくる。命あるものを傷つけるなんて許せない!
「私は貴方をなおしたいの。ダメかな?」
興奮していて回りを冷静に判断できないみたい。ここは、強行突破しかないでしょ。お父様、お母様ケガしないって約束したけど、これは不可抗力です…
タタッと暴れ柳に抱きつき、私の力を分け与える。暴れ柳もはじめは何が起こったのか理解できず抵抗していたが、途中から大人しくなった。きっと、私の癒力を受け入れてくれたのだろう。
思っていたより暴れ柳さんは傷ついていた。こんな酷いことをするなんて…
綺麗に治ったようで、暴れ柳さんはふるふると枝を震わせて感謝の意を表してくれている。
「こんなことするなんて許せないね。私が一喝しておくわ!
私、みんなを探さないといけないから…
暴れ柳さん、またね。」
夜風が頬を撫でる。冷たく、少しだけ疲れた私にはちょうど良い。異国の風も悪くはないかもしれない。
抵抗されたときにできた傷をサッと治してから校舎内に入り、みんなを探す。
後ろから声が聞こえる。なぜか鳥肌がたつほど気持ち悪い。
「お嬢さん?
おぉ!なんと美しい!まるで姫のようだ!」
誰よ?
こんな廊下で大きな声で話しているバカは。どうか私に声をかけませんように。できるだけ早歩きをして怪しい人から離れる。
「私の姫、貴女ですよ。」
あぁ、気をとられてないで雪ちゃんかみんなを探さないと。
「姫君」
肩をトントンと叩かれる。まるで、死刑宣告のように思えた。
仕方なくくるりと振り替えると、「やっとこちらを振り向いてくれた!
私はギルデロイ・ロックハート!
勲三等マーリン勲賞、闇の魔術に対する防衛術連盟名誉会員、そして『週刊魔女』五回連続『チャーミングスマイル賞』受賞――」
何かと思ったら、ただのオーバーリアクションをするバカね。チャーミングスマイル賞なんて誤解の間違いじゃないのかしら?
その張り付けたような笑顔が気持ちが悪い…
誰か来ないのかしら?
ずっと左肩に手を置かれているから動くにも動けない。寒気がする。
まだ1人で話しているが、さすがロックハートと言うだけあって無神経っぽいわね。だって、ロックハートって日本語に直すと『岩心』でしょ。
人が通る音がした。
顔をあげると、真っ黒な衣服に身を包んだ人がいた。月明かりによって照らされたその人は凄く機嫌が悪そうだったが、格好良かった。
「すいません。
お助け願えませんか?」
彼はこちらを一瞥すると、杖を一振りして岩心さんを吹き飛ばした。
「お助けいただきありがとうございます。Mr.、差し支えなければ、お名前を伺いたいのですが。」
「セブルス・スネイプだ。お前は誰だ。」眉間に皺をよせた姿も様になっている。すごく素敵な声。
「ありがとうございます、Mr.スネイプ。
私ですか?」
一目みたとき、私の心は久しぶりに高鳴った。いつ以来だろうか、この気持ちは。彼女は、まるで人形のような容姿をし、鈴のように美しい声で話す。
私を見ても物怖じせず、どちらかと言うと嬉しそうな微笑みを見せた。
あぁ…
年甲斐もなく恋に落ちてしまったようだ。
「私は、桃子・白鳥です。
式典への道への途中に皆さんとはぐれてしまったようで。
Mr.スネイプ、もしかして式は終わってしまったのですか?」
なんと!
あの白鳥家の令嬢と言うのか…
杖をふって、Ms.白鳥を探していた先生方に見つかったと伝言を伝える。
「式はまだだ。
入学生が1人足りないために式が遅れておる。」
「申し訳ございません。途中で、いろいろあって少し時間を取ってしまったのです。」
「君だけのせいだけではない。校長がまだ席に着いていないのだ。」
「まぁ、おじいさまが?何かあったのですか?」
お…おじいさま!?
クォーターなのか?
一瞬だけ焦ったように目を見開いたMr.スネイプは可愛かった。
「アルバスとは血の繋がりはありませんよ。でも、彼のことは本当の祖父と同じように大切に思っています。」
「そうか。」
私たちは気絶しているロックハートを見捨てその場を去った。
それからは必死にMr.スネイプに着いていくのが精一杯だった。足の長さの違いを思い知らされた。
頑張って着いていった先には、厳格そうな女性の先生がいらっしゃった。
「まぁ、Ms.白鳥心配したんですよ!無事で良かったです。では、そろそろ式が始まりますから、準備はよろしいですか?」
「はい。」
すごく回りの子に注目されている気がする。うん、気がするだけだよね。
Mr.スネイプにお礼を言おうと振り向くと既に去った後だった。お母様にお手紙を書かないと!
あと、雪ちゃんはどこかしら…
「ねぇ。
貴女は、東洋から来たの?」
話しかけられた!
そっか、日刊予言者新聞に余計なことを書くなってお父様が言ったんだった!
「はじめまして、極東の島国、日本からやって来ました。
桃子・白鳥と申します。桃子と呼んでください。よろしくね。」
「はじめまして、私はミシェル・ハリソン。シェリーって呼んでちょうだい。」
「さぁ、お静かになさい。式が始まりますよ!」
白鳥の名を語ってシェリーは驚かなかった。マグル出身かな?いや…雰囲気からして魔法界で育っている。
彼女とは良い友達になれそう!
案内されて入った大広間にはたくさんの人。
組分けの儀式については、雪ちゃんに教えてもらった。でも、緊張する。
「桃子、寮が違っても友達でいてくれる?」
小声で話しかけてくるシェリー。
「もちろんよ、シェリー。」
組分けの儀式がどんどん進んでいく。
「ハリソン・ミシェル!」
緊張した面持ちで、シェリーは行った。
「グリフィンドール!」
シェリーは私に微笑みを向けてグリフィンドールの席についた。私も、シェリーと一緒が良いけどうるさいのは嫌だな。まぁ、全てを帽子に委ねよう。
イニシャルが過ぎても、名前が呼ばれない…
不安に思い、おじいさまの方を見るとウインクしてきた。それなら、きっと大丈夫だろう。
私以外のみんなの組分けが終了した。
みんなが私の方をみてこそこそと話している。不愉快極まりない。
日本人特有の困ったときに見せる微笑みをマクゴナガル教授に見せる。
なぜか、マクゴナガル教授は少し嬉しそうに微笑み咳払いをした。あぁ…
泰次おじいさまが外国人には困ったときに見せる微笑みが理解できないらしいとおっしゃっていたな。
マクゴナガル教授の咳払いによってざわつきが幾分か静かになった。
「白鳥・桃子!」
静かになった大広間がざわつきを取り戻した。
これだから、白鳥家の姓を語るのは嫌なのよ。
白鳥家の娘と言うだけで待遇をがらりと変えてくる人が多い。
命あるものは全てにおいて等しく、同じように大切にされなければいけない。人によって守りたい人の優先順位ができるのは仕方ないにしても。
綺麗事だって言うかもしれないけど、これは白鳥家の家訓でもあり、私の信念でもある。Mr.ロックハートは論外ね。
ざわついていた広間がやっと落ち着きを取り戻した頃、マクゴナガル教授に椅子に座るように促された。
帽子を被ると好奇心に満ちたたくさんの瞳が見えなくなりすこし安心する。回りの人からみるとたぶん口しか見えないんだろうな。
{はじめまして、白鳥家のご令嬢。}
「はじめまして、帽子さん。」
{さて、どうしようか。君は―}
帽子は1人で話始めた。
寮が決まるまで帽子さんの独り言を聞き流していた。
{よし、決めた。
すこぶる難しい少女を決めた自分に拍手じゃ!
一種の賭けに近いが、グリフィンドール!}
一瞬、爆発が起こったのかと思ったぐらいに大きな歓声がグリフィンドールの席から起こった。それと同時に他の寮からは落胆の声が聞こえた。私が寮にはいったことで何か得することがあるのだろうか?
確かに、基本教養や語学、ある程度の魔法は習ったけどどこの家庭と何も変わらないんじゃないだろうか。
「Ms.白鳥、貴女がグリフィンドールの寮生になったことを嬉しく思います。」
マクゴナガル教授は嬉しそうに帽子さんと椅子を片付けた。
良くわからないけど、グリフィンドールの席に向かうと凄く歓迎された。
「「やぁ、可愛い姫!僕たちはフレッド&ジョージさ!良かったら、一緒に座らないかい?」」
曖昧な返事をして、適当に乗りきった。どこから姫という発想が出てくるのか知りたいものだわ。
やっとシェリーのもとにたどり着いたときには精神的に疲れていた。
「シェリー…
やっと席につけたわ。」
「お疲れさま。
貴女が可愛いことが原因よ。」
楽しそうに笑うシェリー。
「可愛くなんかないわ!シェリーの方がよっぽど可愛いわ。」
「無自覚って恐ろしいわ…」
シェリーの呟きは桃子の耳には入らなかった。
そのあと、まわりの1年生と仲良くなれた。みんなに、白鳥家ということは忘れて桃子という1人の人して見てほしいというと凄く喜んでくれた。
そのあと、監督生のウィーズリー先輩とグレンジャー先輩から授業風景を教えてもらった。
スネイプ教授の不満も言われたが、さっきのMr.スネイプを見る限り悪い人には全く思えない。
式も楽しく終わり、みんなに別れを告げる。
すごく不思議な顔をされたがダンブルドア校長先生に用事があると言ったらもっと不思議な顔をされた。
シェリーだけは笑顔で見送ってくれた。
ニコニコと教員席に座っているおじいさまのところに行くと、分かっていたかのように立ち上がり校長室に向かった。
校長室に着くまで、他愛もない話をした。
「さて、桃子よ。どうしたのじゃ?」
「大したことではないのですが、暴れ柳さんを治しました。
誰がそんなことをしたのでしょうか?」
「おぉ、ありがとう。後でスプラウト先生に言わなければならないのう。」
「おじいさま、はぐらかさないでください。私からその方に一言申し上げたいのです。」
「桃子よ、その気持ちはわかるがその者たちは十分な処分を受けた。
だから、桃子は落ち着くのじゃ。」
「そうですか。
これは、お父様からの手紙です。たぶんおじいさま方やおばあさま、お母様もなにか書いていると思います。」
「ありがとう。
さぁ、今日は疲れたであろう。雪子と部屋までお帰り。」
「雪ちゃん!?
どこにいるの!?」
「部屋を出たところで待っておるよ。
桃子の部屋は一人部屋にしたからの。
じゃ、ゆっくりおやすみ。」
「おやすみなさい。」
そのあと、数時間ぶりに雪ちゃんに会え自室に戻り、お母様に今日の出来事をかいた手紙を送った。(杏ちゃんがつついて、催促してきた。)
[ 5/17 ]
[*prev] [next#]
TOP