第22Q
「「いやー!ありがとうございました!」」
と、光輝く顔の四天宝寺監督・白石龍之介と主将・相田リオ。
「もう二度とやりたくないね…」
「うむ…」
逆に、何だか薄暗い表情の氷帝監督・相良龍臣と主将・一日ひなた。
「──ま、確かに油断はしてたよ。萌未に加えてまさか晴菜まで居るなんてね」
深くため息を吐きながら、反省する一日。
「ちょっと、一日!朝丘たちのお陰で勝てたみたいな言い方すんな!!」
皮肉めいたそれに、気の短い相田がキレないはずがなかった。
「だって、実際そうだろ?『姫君』を抜いた単純な戦力ではこっちの方が上だ。それは君たちも自覚しているはずだよ」
「…っ」
「今回はやられちゃったけど、次からはその奇襲作戦も通じない。精々『姫君』を上手く使うことだね」
「何ですってぇ!?」
「うるさいよ、相田さん。少しは黙ってられないの?」
「ム カ ツ ク !」
二人のやり取りには、最早苦笑するしかない。
「───…あれ、初穂は?」
ふと、白夜が呟く。面々はその言葉に反応して、辺りを見回す。
「……あの子なら、【あの場所】に居るんじゃないかな」
「あ、」
「そうかもしれませんね…」
「【あの場所】…?」
一日が答えると、白夜と朝丘は納得したように頷いた。相田たちは怪訝な表情を見せると、二人は分かりやすく視線を反らす。
「…アタシ、様子を見てきても良いですか?」
「そうだね、行ってきたら?私じゃあ『君たち』のことは理解できないからね」
「え、あんたが?」
「良いだろう、相田さん?」
「え、ええまあ…」
トントン拍子で進む会話に、挟む隙がない。頷くしかなかった。
「───待って、萌未!ウチも行く!」
「晴菜は先輩たちと居なさい。アタシだけで充分よ」
「…、分かった」
初穂との因縁を解きたかったが、朝丘のたしなめるような視線に従う他ない。白夜はそれ以上、何も言わなかった。
「(…初穂、)」
去っていく朝丘の背を見つめる白夜の瞳は、何処か寂しげだった。
「先に駅まで行っとくわよ、白夜」
「…はい」
勝ったのに、四天宝寺は暗い雰囲気に包まれていた。
───これからの課題は、山積みだ。
「───…まったく、手の掛かる奴らだよ。よく纏めることが出来たね、薫」
そんな白夜の様子に気が付いたのは、彼女たちの過去を唯一知っている、一日だけだった。
手の掛かる奴らだよ(私に手間を掛けさせないでよね)
(なんて、言っても無駄だろうけど)