GLORIOUS DAYS | ナノ

第21Q


瞳を閉じて、深呼吸をする。

「───行ってきます!」

過去に、別れを告げようか。


《白11番、交替です》

「───やっと見えたようね、晴菜!」

菊丸さんと替わってコートに入ると、ウチの元へ直ぐ様寄ってくるチームメイト。萌未の瞳は、ウチを信じきっている。
───手放したくない。

この心地好さを、この幸せを、なくしたくない。だから、絶対に勝ってみせる。


「心配かけてゴメン。ウチはもう、大丈夫」
「心配なんかしてないわ。アタシも…ごめんなさい」

萌未は申し訳なさそうに謝る。彼女は手をぎゅっと握り締めて、悔しさを隠せていない。

「ウチも予想できんかった…。『神代の姫君』は、ウチの想像以上のスピードで進化しとる」
「………」
「でも、それはアンタも同じやで、萌未」
「え…」
「初穂が何言うたんかは知らんけど…萌未が『姫君』であることに変わりはあらへん」

やから、立ち直って。ウチは、この言葉を薫に言われて、自覚した。天才ではないけど、影である限り、ウチは『姫君』なんやって。

「晴菜…───そうね、そうだわ」

萌未はスゥ…ッと息を吐き、目を開く。

「行くわよ、晴菜!アタシたちの新しい技、見せてやりましょう!」
「おん!」

あれから9ヶ月。ウチらやって、練習してへんかったわけやない。その成果、見せたるわ!

「(二人≠フ新技だと?んなことが、有り得るのかよ。しかも、晴菜と萌未で?)
───っ、まさか…!おい、ボール止めろ!!」

氷帝からのスローイン。先程に続いて初穂にボールが回ろうとするが、ある考えが頭を過り、ボールを止めようとする。
だが、時既に遅く。

「もらった!」

───バチンッ

白夜がそのパスをカットし、その勢いのままゴールへ向かう。

「…っ、負けて、たまっかよ!!」

───ギュ、ギュッ。
初穂は瞬き一つもままならない間に白夜の前に回り込んだ。

「ウソやろ!?」

四天宝寺のメンバーはその身体能力の高さに驚くが、白夜は───笑っていた。

「予想しとったで…初穂やったら、追い付いて来るってな!」

白夜は挑発気味に、初穂は冷ややかに、双方は睨み合う。

「やからこそ───萌未!!後はアンタの出番や!!」


───ビュオッ

それは、かつて『姫君』しか取れないとされた、白夜が幻の6人目≠ニ云われることになった根源。



加増するエディションパス】




「な、んだと…!?
(それは、『俺ら』しか取れねぇはずだ!今の萌未が取れるわけ───)」

白夜がシュートを打つと思っていたのか、初穂は目を見開き、咄嗟に動く。
チリッ。初穂の指が、ボールに触れた。

「!?
(完全に意をついたと思うたのに…どないな反射神経しとんねん…!)」

ボールは軌道を外し、空中に留まる。

「(アカン…!これやと、萌未まで届かん!!)」

負ける───そう思った時。

「勝手に諦めないでよ、晴菜!
(アンタの、先輩たちの想いは、アタシが繋げる!)」

───バシィッ

「萌未っ!」

パスと同時に跳んでいた萌未が、腕を極限まで伸ばし、ボールを掴んだ。
萌未の体は、既に傾き始めている。

「っ、相田さんっ!!」

ブンッと大きく腕を振りかぶり、その人へ向かってボールを投げる。フォームや力加減も何もない。

「(届いて…!)」

初穂に勝ちたい、ただ、その想いだけが、そこにはあった。

「アンタたちの覚悟、受け入れたわ!」

バシッ。相田はスリーポイントラインより後方で、確かにボールと、二人の想いを受け継いだ。そして、ボールを放つ。


───ビーーッ

そこで聞こえた、試合終了の合図。


ゴッ、ゴッ。
誰もが、ボールを見つめていた。


───パスッ

リングに数回当たり、網を通り抜けた。


《試合終了ーーー!!》

「勝っ、た…?」

思わず、溢れた。

「ええ!勝ったわよ!!」

相田さんは、確かに頷いた。

「…っ、よっしゃああああああああああっ!!」

人目も気にせず、大声を出して狂喜する。



───一人目、向日初穂。撃破!





アンタの出番や!!

(試合終了!)
(そして、『姫君』は入れ替わる)

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