GLORIOUS DAYS | ナノ

第1Q


「勝利こそが至上、敗北こそ屈辱。
──だが、仲間に勝るものなど存在しない」

女子バスケ界最強の布陣と謳われた五人の天才。氷帝学園中等部女子バスケットボール部主将──夜神薫は全中三連覇後のインタビューで、この言葉を残した。

「私達は『キセキの世代』と同じであり、違う存在でもある」

意味深な彼女の発言に、記者の一人が「それはどういう意味であるのか」と質問をした。それに彼女は無だった表情に色をつけ、緩やかな笑みを浮かべてこう答えた。

「彼等は圧倒的過ぎる才能故に、チームプレイを放棄した。だが、私達『神代の姫君』はあくまで一方向に優れた才能しか持たない。各々の才能を生かすためにはチームワークが重要視される。
──私は、敗北にも価値はあると思っている」

台本も持たず延々と語り出される彼女の台詞に、記者も含め辺りが騒然とする。
彼女の言う【勝利】とは何か。それが、彼女達と『キセキの世代』を離別させた原因なのだろうか。

「勝つことも重要だとは思う。だが、私達はそれ以上に大事なモノは何なのかを見つけた。彼らには悪いが、私達はそれを見つけてしまった以上、『キセキの世代』の考えを否定する」

大事な『何か』──それが、仲間ということなのか。

「私達『神代の姫君』も、別々の高校へ進学することになるだろう。そこで新しい仲間と共にスタートを切る。今は仲間であるが、未来では敵となる。そうなれば、容赦はしないしされたくもない」

それが私達の誇りでもあるし、誓いでもある。
そう言った彼女の瞳には、一切の情けもなかった。

「それは『キセキの世代』も同じことだが、私達は女であり公式戦で試合をすることはまず不可能。男女差もあるが、才能の格が違いすぎる」

拳を固くして呟くように言葉を続ける彼女に、声を掛ける者など居なかった。
かつては共に頂点を目指した親友であったがために、彼らとの決別はあまりにも残酷過ぎた。

「──だからこそ、私達は私達と同じ志を持つ人に託した」

だが、彼女達は私達大人が思う以上に、強かった。

「託した、とは?」

その疑問は当然のことであり、また、必然だった。

「彼らに思い出して欲しいんだ、バスケが大好きで楽しくて仕方がなかったあの頃を。何よりも大事で、何物にも変えることのできなかった思い出と、心を」

彼女の瞳には、もう不安や悲哀など、映ってはいない。

「私達の想いと覚悟を、受け継げる人物に」

彼女の後ろに控える『姫君』達もまた、暗い表情から一変、覚悟を決めた、強い瞳をしていた。

「それは一体、どのような人物で……?」
「──『キセキの世代』幻の6人目、黒子テツヤ」

アイツなら、きっと、私達の願いを叶えてくれる。
彼女達の瞳に、曇りなど存在しない。





敗北にも価値はある

(これが、物語のハジマリ)
(──とある記者の視点より)

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