GLORIOUS DAYS | ナノ

第16Q


「絶対に、負けへんからな」
「薫に勝ちたいのは分かる!」


「(気に入らねぇ。何が負けないだ、何が勝ちたいだ。
お前らは、俺を見てねぇじゃねぇか。何で、薫ばっかり。

──ああ、腹立たしい)」



──ゾクッ

「初穂…?」

突然感じた寒気に、身体が一瞬動かなかった。威圧なんて可愛いものじゃない。誰かを殺しそうな猛烈な殺気だ。

「……どうしたん?」

そんなアタシを不思議そうに見つめる晴菜。
気付いたのは、アタシだけ…?何かの間違いだったのかな?


──ビーーッ

《タイムアウト終了です》

そんな思考を遮るかのようなタイミングで鳴るブザー。
試合に集中しなきゃ…!

後にアタシは、それを深く考えなかったことを後悔することになる。



「白(四天宝寺)スタート!」

審判の合図で試合が再開するが、先程までのハイペースな展開を急激に変化して、ゆっくりとスローインをし慎重に攻め始めた。

「(ふぅん…確実に点を決めましょうってことか?)」

氷帝学園背番号4──一日ひなたは、ディフェンスにつきながらそう思った。彼女こそ、夜神薫が唯一尊敬の念を抱く人物。通称──『始まりの姫君』。

「──ナメられたもんだね、氷帝(ウチ)も」
「え、」

小さく呟かれた言葉。しかし、それは対峙していた相手にも届いていて。

──バチンッ

「あっ!?」

白夜のミスディレクションによるダイレクトパスを、完璧にはじいてみせた一日。

「悪いんだけどさぁ、私も晴菜とは一年間プレイしてきたんだよね。残念だったね──そのパスは、もう通じないよ」
「(っ、やられた…!ひなた先輩も、『姫君』やったんに…!)」
「油断したね、晴菜。これで流れは完璧にウチのもんだ」

ミスディレクションの効果切れ──白夜の弱点が、想像よりも早く訪れた。
氷帝には、初穂だけじゃない。姫君の原点でもあるこの人がいたんだ。なんでそんな重要なことを忘れてたんだアタシは──!

「嘘やろ…(白夜から聞いてはいたが、まさかもう効力が切れているなんて…)」

白石龍之介は呆然と呟いた。


──ピーーッ

「アウトオブバウンズ!白ボール!」

はじかれたボールはそのままコートの外に出た。

「…っ、まずい!」

ガタッ、と急に立ち上がって、急いでメンバーチェンジを申し付ける。

《交替、白(四天宝寺)》

「白夜!一旦ベンチに下がれ!」
「っ、分かりました…」

晴菜は納得出来なそうな表情だったが、渋々引き下がった。

「晴菜」
「萌未…」
「落ち込むのはまだ早いわよ。攻略された訳じゃないんだから。ここからは、アタシに任せて」
「!…──おん!」

アタシの言葉で少しその表情が和らぎ、晴菜はそそくさとコートを出た。

「──確かに油断はしてたかもな。
やけど、これで諦めるほど、ウチの連中は単純やないで?」

その光景を間近で見ていたカントクが、ニヤリと笑った。



「──1本、落ち着いていこう!」





落ち込むのはまだ早いわよ

(まだチャンスは残ってるはず)
(だから、最後まで諦めないよ)

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