★I can't cage you in darkness★

カインがヴァンパイアとなって以来、セオドールとの攻防は続いていた。
セシルの血を啜ろうとするカインとそれを止めようとするセオドール。
兵学校の帰り道、暗がりに連れ込んでセシルに牙を立てようとするカインに、すさまじい勢いで近づき、セシルが気付く前にカインを自室へ押し込み罰を下す。

「全く油断も隙もないな」
聖水を浴びせかけられ、肌を焼かれながら、カインは笑い声を上げた。
「セオドール、お前は良く耐えていられるな。本当はセシルの血を啜りたいんだろう?」
「黙れ」
聖水の入ったポットをそのままひっくり返すと、カインは叫び声を上げた。
「全く・・・」
と呆れた声を出しながら、セオドールは自室を離れた。
カインは部屋に取り残される。
聖水で付けられた傷はふさがるのに時間がかかる。
全く陰険な奴だ、と思いながらセオドールの机に目をやった。

そこにはセオドールの予定表が置かれていた。
どうやら、セオドールは領地の視察へ出かけるようだ。
なんだかんだ言えどもセオドールは領主。
四六時中カインを見張れるわけでもあるまい。
カインはニヤリと笑った。

セオドールはリビングでコーヒーを淹れながら、今頃、カインが自分の机の日程表を覗いている頃だろうと思っていた。
カインがセシルを仲間に引き入れる日はこれで決まったも同然だった。

その日、セオドールは領地へ行くために馬車を呼び寄せ、邸を離れるふりをした。
その様子をカインは物陰から伺っている。
セオドールの乗る馬車が見えなくなると、カインはセシルのいる邸に入って行った。
馬車を乗り捨てたセオドールは自室へ静かに戻る。
隣の部屋ではセシルが寝ている。
そこへカインが足音を忍ばせもせず、大胆に入って行くのが聞こえた。
セオドールは壁に設置されている絵画に備え付けられた覗き穴へ向かった。
絵画の目の部分を取り外し、自分の目を近づける。
すると、セシルの部屋に取り付けられた絵画の目の部分から部屋の中を覗くことができた。
よほど注意深く見ない限り、見破られない。

カインの突然の来訪にセシルは驚いていたが、うれしそうにしているようだ。
寝ようとしていたセシルはカインをソファに座るよう促している。
しばしの雑談のあと、カインはセシルに口づけた。
セシルの方でも従順に受け入れている。きっとこれが初めてではないのだろう。
「・・・んっ・・・んぅ・・・」
舌が絡み合い、くちゅり、という音が響いてくる。
「はぁ・・・あれ、なんだか、僕・・・」
精気を吸われて、少し朦朧となったセシルがカインの腕の中に倒れ込んで行く。
「眠くなったのか?」
白々しくカインが言う。

セシルをベッドに運んで行くカイン。されるがままのセシル。
このまま眠ってしまおうとするセシルにカインはのしかかると、夜着を捲り上げた。
「あ、カイン・・・何をするの・・・」
セシルは抵抗を試みたが、朦朧とする頭では満足に動くこともできない。
首筋から鎖骨にかけて舐められると、セシルは甘ったるい声を上げた。
カインの舌がセシルの心臓の上に辿り着く。セシルから立ち上ってくる色香。
心臓の鼓動が手に取るように感じられる。そこから循環していく血液の芳醇な香りも。
カインはセシルの鼓動の音をうっとりと聞き入った。
そして、カインの手がセシルの胸の突起に触れる。
「・・・あ、あぁ・・・カイン、やめて・・・」
外気にさらされ、震えるそれを撫でると、徐々に色付き、形を変え始める。
「ん、やだよ、カイン・・・あ、あぁ」
初めての快楽の味に戸惑うセシルが身じろぎをする。
「本当に嫌なだけか?」
カインの低い声が耳に響く。なだめられると、セシルは頬を染めて瞳を反らした。
カインの手がセシルの下肢に纏わりつく。
そこは既に濡れそぼり、これから起こる快楽を待ち受けていた。
「気持ちいいだろう」
それを梳きながらカインが言う。くちゅくちゅという音に恥ずかしそうにセシルが俯く。
「はぁ・・・気持ちいい・・・」
大きな手に包み込まれると、セシルは正直に白状した。
それに気を良くしたカインは手の動きを速め、セシルを追い詰めた。
「あ、はっ・・・あぁ」
セシルがカインの手の中で果てる。
その絶頂感はいつまでも尾を引いた。
精液を絡めた指先が、後孔に触れてくる。
気の遠くなるような絶頂感で弛緩した体は指を受け入れた。
「や、カイン・・・そんなとこ・・・」
カインは巧みにセシルの精気を吸い取り、そして自分の精気を分け与えていた。
セシルのそこはカインの精気を感じ取り、喜ぶ様に口を開いた。
「・・・んぅ・・・あぁ、あ・・ふぅ」
異物感と快楽に耐えるように喘ぐ。
「・・・ん!・・ああ・・・」
カインの指がある一点に触れると、セシルの脚は大きく痙攣した。
カインはニヤリと微笑むとそこを責め立てた。
「いや、ああ、あぁ、カインッ・や、ダメ・・あぁ」
小刻みに擦られると、セシルは堪らず2度目を放った。
涙を浮かべながら、息を弾ませるセシル。
蕾はすっかり綻び、物足りなそうにひくついている。
そこへカインは自身を宛がう。
セシルの体は強張った。カインが入ってくる。セシルの爪先はピンと伸びていた。
「・・はぁ・・・あ・・・」
ゆっくりと侵入する。セシルの腿が震えている。
全て収めきると、セシルは切ない声を上げながら、カインに縋りついてきた。
「カイン・・・キスして・・・」
涙を浮かべた瞳で懇願される。カインは切れそうになる理性をつなぎ合わせて、セシルに口づけを落とす。そうすることでより深く繋がることとなったセシルは快楽に身をよじりながらカインの口付けに応えた。
カインが腰を動かし出す。
「・・ふぅ・・・んぅ、んん、んっ・・んはっ」
苦しそうにセシルが喘ぐ。
「はあ、あ・・・ん、んぅ・・・あん・・・」
セオドールからはカインの後姿と、揺さぶられているセシルの白い脚が目に入っている。
カインの背中にしがみつくセシルの手。そして、甘えるようにカインの腰に巻きつく脚を見て、セシルが快楽の虜になっていることを知らされた。
「んぁ、あぁ・・・ああぁ」
叫びにも似た声が響き、セシルがまた達したことが分かった。カインも腰の動きを止める。セシルの中に欲望を放ったのだろう。

カインは部屋の中に流れ込んでくる殺気のようなものに気が付いていた。
一体どこから?この部屋の隣はセオドールの部屋。もしや、セオドール後ろから覗いているな?
カインの顔はまたここでも意地悪そうに歪んだ。
カインはセシルを抱き起こすと、胡坐を掻いて座る自分の腰元に降ろした。
脚を大きく開かされたセシルが、その秘部を晒される。
誰も見ているはずはないと分かっていても、そこを暴きたてられることは恥ずかしかった。
「や、カインッ・・・」
抵抗しようとしたところで、再びカインが中に入ってくるのを感じる。

快楽に背を仰け反らせるセシルの白い首元がセオドールの目に入った。
セシルの蕾がカインによって開かれていく。
「あ、あぁ・・・」
突き刺さるようにして沈んで行くセシルの体。
そのまま揺さぶられると、セシルのそこが捲り上げられるように引き延ばされ、カインを受け入れさせられている様が見えた。
「いや、深い、カイン!」
カインは先ほど見つけたセシルの善い所に当たるよう、擦りあげる。
「ああ、あ、あぁ・・・はぁん、ダメ、もう」
半ば意識を飛ばしたセシルがカインに許しを乞う。
「あぁ、イイ、あは、はぁ、あ、もう、ほんとに」
行きすぎた快楽で蒼褪めながらセシルは喘ぐ。
中でカイン自身が震えていることがわかる。
「やだ、カイン、そんなに、奥っ、いや」
セシルの中が激しく痙攣し始める。最奥をゴリゴリと押し上げるカインに半狂乱になって静止を求めている。
奥にカインの奔流が解き放たれる。
「ああぁ」
放つと同時に、カインはセシルの首筋に噛みついた。
「・・あぁ・・・あ、あぁ・・・」
セシルも自身を解放しながら、カインの精気に満たされるのを感じていた。
カインが血を啜る。
体の奥にはカインの精液の熱い流れを感じる。
上からも下からも、強烈な快楽を味わわされ、セシルの顔は悦楽に歪んだ。
セオドールはセシルの酔い痴れた顔を初めて見た。
セシルの腰は快楽を享受するようにピクピクと痙攣していた。
その表情は今まで見たどのセシルよりも美しかった。
セシルはひと際大きく痙攣すると、仮死状態となり、カインへ倒れ込んで行く。
カインが己を引き抜くと、その蕾からは白濁が溢れだした。
そこまで見届けて、セオドールは覗き穴から目を離した。

カインがセシルを寝かすと、身支度を整えて、セオドールの部屋をノックしに来た。
セオドールは少し青い顔をして、カインを迎え入れた。
「随分と趣味の良いことをしているじゃないか」
酷く満ち足りた顔をしているカインはそう言った。
「やっぱりあれはわざとだったのか」
カインがセオドールに近づきながら、言う。
「お前も本当はセシルを仲間にしたかったんだろう。自分でやるのが躊躇われるから、俺の力を借りただけだ」
うなだれたように書斎の椅子に座っているセオドール。
カインはその机に乗り上げ、優雅に脚を組んだ。
「セシルが大事なのは分かる。だから俺も遠慮してやったんだ。セシルの顔を見たかったが、お前に譲ってやった」
勝ち誇ったような顔をしたカイン。
ヴァンパイアにしてからというもの、カインは品格が下がったように思えた。
このプライドの高そうなカインが、こんな下品なことを言うとは思わなかった。
無理矢理陥れられた永遠の闇の中で、唯一の復讐相手である自分に精一杯の反抗をしているのだろう。
「その通りだ。お前の言うとおりだよ、カイン」
机から顔を上げたセオドールは驚いた。
カインが泣いていたからだ。

これでセシルと共に永遠を歩んでいけることとなった。
カインはセオドールと同じ位深く、セシルを愛していた。
だからこそ、無意味の永遠の中を彷徨い続ける運命をセシルに科してしまった自分を悔やんだのだった。
しかし、他に道があろうか。
セシルが死ぬところを見届けなければならないことこそ、それに勝る不幸だった。

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